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原作付ではない谷口ジローの作品。 原作付ではない彼の作品は「動物物」と人の心の襞を描いた「人間物」に分けられるが、本作は「人間物」にあたる。 ある日、バイクに乗った高校生卓也と会社員の男久保田の運転するワゴン車が衝突事故を起こした。卓也は一命を取り止めるが、久保田は息を引き取る。そして、卓也は意識を取り戻したが人格は久保田と入替わっており少年自身の記憶はなくなっていた。つまり、体は卓也で心は久保田である。 物語はここから始まる。 久保田は残した妻子の家を訪れる。どうしても伝えたいことがあるのだ。しかし、妻は事故の当事者である卓也の姿をした男の言うことに耳を傾けようともしない。 そして、時間とともに卓也は記憶を取り戻し始め、卓也の中には自分と久保田の二人の人格が存在することになった。しかし、久保田は、卓也が記憶を全て取り戻した時に自分の人格は消失してしまうことを知ってあせり始める。 事故の本当の原因は何か。久保田は何を伝えたいのか。久保田とかかわることによって少年はどう変わるのか。 二人の人物が入れ替わるというのは小説等にもよくある設定であり、目新しいものではない。 しかし、この作品は、何故入れ替わったのかという必然性、登場人物の心の動きや揺れが全て描かれている。 そして、谷口ジローの描く絵でなければ成功しなかったであろう作品である。登場人物は多くを語らない、目で語り表情で語る。背景も何かを語っている。 原作付きではない彼の作品は地味だがどれも味がある。本作も地味ではあるが彼らしい作品で佳作である。