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逆説の日本史 (3) (小学館文庫)

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逆説の日本史 (3) (小学館文庫)の商品レビュー

5.0 前言撤回
評者は以前,『逆説の日本史』は学会批判がいちいちくどく,本論から外れる部分が多いので評価できないと書いたが,改めて文庫版を読み直してみるとこの評価は撤回せざるを得ない.それほど,本書での井沢氏の考察は斬新でありながら説得力があり,良質の推理小説を読んでいるような読後感を感じることが出来る.

P.55 に称徳天皇を当時の人は呂太后になぞらえたとあるのは,明らかに誤りであるが(呂不韋が「ろうあい」を与えたのは呂太后ではなく華陽夫人),しかし,そのような些細な間違いを差し引いても,称徳天皇−道鏡のスキャンダルが藤原氏によって捏造されたものだという考察,さらに称徳天皇が道鏡に皇位を譲ろうとしたのは,当時の先進国中国の易姓革命に習ったものだという説など,実に興味深い指摘だ.

この時代の天皇家にまつわる史実は,知らずにはあまりにももったいない面白さに満ち溢れている.その一端を鮮やかに描出した井沢氏の手腕は,いささか鼻につく記述が多いとしても,認めざるを得ない.古代日本に興味を持っているすべての人にお勧めできる書である.
5.0 相変わらずの安定した言説とおもしろさ。

 毎度毎度、面白い読み物をありがとう、井沢さん!

 相変わらず筆致は読み易さを最優先にした平様簡易なものだ。良い。気取った論文ばかりを読む毎日に飽き飽きしている者にとっては、一服の清涼剤とさえなるであろう。


 さて、内容は本書の目次を参照していただくとして、自分が気になった井沢氏の論説を下記に箇条書きの形で記す。

・称徳天皇陛下と弓削道鏡(そして、恵美押勝)の間に肉体関係は無かった
・称徳天皇陛下の「皇帝への変容(「中華思想」)」への願望と憧れ
・称徳天皇陛下と秦の始皇帝の皇后:呂太后との近似性とそれに伴った「道鏡愛人説」の否定
・新羅の真聖女王が集大成させた「三代目」と、朝鮮半島に於ける男尊女卑
・「荘園」とは「別『荘』の庭『園』」である
・皇室制度は「サナダムシ」の存在を許し、皇帝は許さない
・称徳天皇陛下と弓削道鏡は、京や奈良に蔓延っていた民を苦しめる「私有財産制」に歯止めを掛けようとしていた
・「平安京遷都」は天武朝と天智朝の王朝交代を表している
・イスラエルとパレスチナなど宗教が拘わった紛争に於いては、実利よりもイデオロギーが必ず先行する
・比叡山「延暦」寺と東叡山「寛永」寺の寺号の意味
・黄永融氏の、古代日本の宮都の造りと風水思想に関する論文
・陰陽道には本来、鎮魂の思想は無いこと
・「仏滅」は本来、「物滅」であり、仏教とは関係が無い
・平安期以降、死刑が事実上無くなる
・「軍国主義者=非国民」と云う逆転のレッテル
・諱と字を使い分ける、その行為の隠された意味
・キリスト教国やその他多くの国家に幅広く見られる「ポピュラー・ネーム」が日本では殆ど見られないこと
・キリスト教国では「宗教と科学は反駁しない」関係が成立する


 金銭的余裕が無い学生としては文庫化が待ち遠しいこのシリーズ、自分も続けてレビューを書いていくので、井沢さん、続きの著作をどんどんよろしくお願いします!

5.0 日本史を理解する為に必要な新たな考え方
1、2巻で、
・和の信仰
・怨霊信仰
が日本を貫く大事な思想である事を喝破した著者が、本書では新たな視点を提示しています。
それが、「言霊信仰」で、「言った事が現実になる」と言う考え方です。

著者はこの言霊(コトアゲ)については複数の著書を著しており、そちらの方が内容は詳しいのですが、これが単独で機能する考え方ではなく、和と怨霊とセットになって機能するところが日本史のユニークなところであり、面白いところです。

この3点が現代に生きる我々にも影響を及ぼしている事、それくらい重要な事なのに、他の歴史学者がほとんど認めていない点も、日本という国を象徴している気がします。
4.0 皇帝になろうとした男
「逆説シリーズ」第三段。称徳女帝と道鏡の話から始まるが、前半の目玉は藤原仲麻呂の皇帝即位計画説であろう。海外の歴史家も驚く天才政治家父子の藤原鎌足・不比等が築き上げた「藤原システム」。本論が正しければ、仲麻呂は祖先伝来の「藤原システム」を破ろうとした大胆(軽薄?)な男だった訳だ。こうしたユニークな説が飛び出す所が本シリーズの魅力であろう。

一方、吉備真備・道鏡・称徳女帝の実像と藤原氏との暗闘は常識の範囲で新鮮味がない。また、道鏡に関する御神託を何故「伊勢神宮」ではなく「宇佐八幡」に求めたのか説明がない点に不満が残る(卑弥呼と宇佐八幡の関係は別書で触れているが)。

平安京と風水の関係は既存の説であり、後は"怨霊"を中心に捉えるか否かという問題であろう。単に中国の"最新科学"をマネしただけとも解釈できる。

最後の言霊論は著者の得意分野で、ややヒートアップの感があるが、観念が現実を支配できると妄信している現代の一部の人々に対する批判としては首骨できる。万葉集の中の柿本人麻呂論は、梅原猛氏の「水底の歌」を直接読んだ方が楽しめる。

歴史上のイベントをユニークな視点で考察し、現代への警鐘と結び付ける刺激溢れる書。
4.0 面白くって悔しいから、★ひとつ減!
 井沢作品まだ2冊目の身で言うのは少々気が引けるのだが、それこそ「逆説」的にも、このシリーズで高校までの日本史を楽しく復習できる。だって「通説」をバッタバッタと薙ぎ倒していく過程で、どうしたって「通説」が再確認され、しかも扱うテーマはココゾという名場面ばかり。特段の歴史好きでなくても、「ああ、あの話ね」とオボロな記憶は甦るだろう。しかもそれが次々ひっくり返るのだから、快感。
 私が「あ!」と思ったのは「聖徳太子以後の『徳』の字のついた天皇をすべて検討し、むしろ不幸な生涯を送った天皇こそ『徳』の字が(鎮魂のため)贈られたのだ、だから聖徳太子も不幸なひとだったのだ、と考えるのが私の方法」(p425)という件り。関連してロゼッタストーンの話も出てくるんですが、これって構造主義的な記号論でしょ? 唯物史観の「当てはめ」(p422)に汲々としてきた日本史学に対して、著者の方法論が優位に立っているのは確か。イザワ本は他人の業績のツギハギだっていう批判もあるようだが、諸資料を編集しつつ自分の「歴史認識の方法」の切れ味をデモンストレートすることに主眼があると受け取れば、ま、そんなものか。
 この巻で特に印象深かったのは、称徳の話。彼女が武則天を意識していた状況証拠や、生前から「宝字称徳孝謙皇帝」の号を名乗っていたことなどをテコに「中国かぶれ」の可能性を示唆し、宇佐八幡神託事件に「禅譲」の思想を見る議論は面白い。そこには「天皇制」vs「皇帝制」の思想闘争があったワケですね。また当時の仏教界の状況から考えて、道鏡が触女人戒を犯していたら周囲が黙っていたはずがないという主張も、ナルホドナーと思わされた。

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