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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)

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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)の商品レビュー

4.0 聖書のように崇め引きずるべきじゃない。
確かに心地好さはある。しかしそれだけだ。この本は口の巧いジゴロだ。ティーンならころっと騙されてしまうだろう。

それはまた子どもが自我を確立し一個の人間へと成長するための通過儀礼のようなものだ。だからこそ心地好い。

そしてだからこそくだらない。実際には通過儀礼などというただひとつの特定の何かに左右されて人間は成長するわけではない。積み重なった日々こそが成長の糧だ。故に通過儀礼はまやかしであり幻だ。
それに気付いたとき子どもは成長する。人間になる。

故にこの物語から脱却できたとき読者は少し大人になる。けして心地好さに溺れいつまでも依存し続けるべきじゃない。

自らを制御できない幼き人類への法として在った聖書が、新しい近代の法のもとに消えていくべきであるのと同じく、幼い子どもが人間になるために捨てさられるべき物語だ。
読者に捨てられたとき完結する。必要とされなくなったとき完成する。
愛すべき通過儀礼としてのロールをもった一冊。
5.0 考えて
最初に読み終わったときに思ったことは意味不明でした。
でも、それからこの本はどういった意味があるのだろうと考えて自分なりの解釈をみつけることで最高に良い作品になりました。
この作品は多分百人がよんだら百通りの解釈がでるとおもいます。読んでつまらないと思っても良く考えてみましょう。
そしてまわりの人でこの本を読んだことのある人と話し合ってみることをおすすめします。
5.0 「閉塞感 を伴った 開放感」 若しくは「アンダーグラウンドの12年前の村上の夢」
 反論もいくらでもあろうが 僕は本作が 現時点での村上の長編小説での最高傑作だと思う。その意味では本書を書きあげてから20年以上 村上は本書を超える作品を出せていないということだ。

 まず第一に圧倒的な物語がある。近未来的な「現在」を舞台とした筋と、「世界の終り」の国で語られる物語を同時並行して進めていく腕力が素晴らしい。その二つの世界を巧みに文体を変えながら リアリティーを持たせて書いていくことは紛れもなく今までの日本にもなかったような「豪腕」である。
 そうして その二つの物語が 最後に交差する瞬間は 一種の謎解き以上の美しさがあり それまで 手探りで読まされてきた読者に 「大きな閉塞感を伴った解放感」を与える。

 「大きな閉塞感を伴った開放感」とは 幾分トリッキーな表現かもしれない。但し この作品の底に流れる「閉塞感」が 本作の第二の持ち味だ。

 村上は その早い段階から「閉塞感」をテーマにした作品を書いてきたと思う。初めは 洒落た都会小説の底に「閉塞感」を忍び込ませて隠し味とする向きが強かったが 本作に来て 村上は 正面から「閉塞感」を書いたと僕は思う。「世界の終り」はまさしく「閉塞された」世界であり そこで どう僕は生きるのか というテーマを正面から掲げたのが本作であるからだ。

 本作の最後は 明るさを持っている。それが本作の読後感のすがすがしさにもなっている。但し 時代は そうはならなかったのかもしれない。
 この12年後 村上は「アンダーグラウンド」を書かなくてはならなくなった。
4.0 村上春樹の妄想力に感嘆した海外幻想SFの訳本のような作品
灰羽連盟のグリの国のモデルといわれる「世界の終わり」に興味を持ち、読みました。回りくどい比喩や、妙にさめたキザな主人公、ジャズやロック、映画、小説の固有名詞を多用し、知識をひけらかすよう言い回しは鼻につくとはいえ、日本が舞台とは思えないような妄想力にとんだ物語に、知らず知らずのうちに引き込まれました。もし自分の死があと24時間しかないとしたら、この主人公のようにきざに死んでいけたらと思います。
5.0 マトリョーシカみたいな
私が考えていることの一つに人間の意識と無意識の関係がある。私たちは無意識の存在に普段そう気付くことはない。たまに夢を見るときにわかるくらいだ。しかし明らかに無意識が「在る」としたらそれは意識と共に動いているのではないか。この作品を読んだとき、私は二つの物語は主人公の意識と無意識を表わしていると感じた。だからこの本は独立した二つの作品として平行に進行しながら、と同時にひとりの人間の心の動きを示した構成でもあると私には思えた。イメージでいうと前者が左右に、後者は上下に進行している。そして合わせて一つ。まるでマトリョーシカのような物語だ!そんな風に思わせてくれるこの本がとても気に入っている。

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