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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)

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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)の商品レビュー

3.0 食べ物、音楽が・・・
村上春樹初期4部作、他4冊ほど読んでそれなりに面白かったので今回この世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
を読んで見たのだが、
食べ物、音楽の曲名がこまごまと書かれていてうざったく感じた。
食べ物、音楽に関しては村上氏の小説の手法ではあるが他の作品では、
あまり感じなかったが今回は特にうざったく感じた。食べ物、音楽でなければその時の感覚を表現できないのだろうか?
その食べ物、曲を知らない人には何も意味をなさないのではないか?
村上氏は読者が皆自分と同じように食べ物、曲を知っていると思って
いるのだろうか?
この小説を読んでいて村上氏にちょっと失望した。


5.0 〈私〉の目覚める時
前々からこの作品の続編が噂されている。著者のファンである私もにわかに期待している。にわかに期待し続けてもう10年になるだろうか。後の長編ダンス・ダンス・ダンスで主人公である僕が、ある朝目覚めた首都高沿いの住居の一室で僕の居る場所の確認を再認識する場面があるが、その後に続く村上春樹作品に伏線として登場する〈私〉或いは〈僕〉の影のような存続性を垣間見せるところがあるように感じられる。 作品としてはふたつのパラレルワールドが同時進行する現実とも異世界ともどこかで繋がっていても決して不思議でないふたつの異なる世界で展開される。〔世界の終わり〕では、受動的な世界に居る〈僕〉は、分身である〈影〉を他界に送り出した後で〈彼女〉と共に新たな生活を選択する。〔ハードボイルドワンダーランド〕の世界では能動的な現世の中で半永久的な眠りに付く〈私〉は、目覚めることがあるとすれば果して本当は何時誰にどのように目覚められるのだろうか。ストーリーテリング溢れる、いろいろと想像力を掻き立てられる作品だと思う。 ふたつの世界の主人公である〈僕〉と〈私〉は巡り会うこと或いはひとつになることが出来るのか。果たしてそうなることが本当によいことなのか。 世界はもう終わっているのに。
5.0 小説的計算の塊
村上春樹氏の小説、巧みに計算されていて、実に奥の深いメッセージが隠されている。いや、というよりも読み手側に、そういった段階ごとに読めるメッセージを重層化して、フレキシブルな読み方を許容しているのか。
個人の意識にフォーカスがあるのかと思いきや、戦後日本そのものを何かに体現させているかのようにも読める、技巧的な設計。
間違いなく現在の日本で代表的作家といってまったく過言でない。
本作品は、村上氏が相当時間をかけて臨んだ意欲作で、流れとしては、ねじまき鳥、カフカ、に連なる一連の作品になると思う。ねじまき鳥、は村上氏の技巧、設計、表現、などすべての点で、最高の次元にあるものだと思うが、この本作品は、そこにいたる流れを理解するうえで、大事なヒントをいくつも与えてくれる。
逆にねじまき鳥、ができすぎて、これからは、自分との競争に打ち勝って、よりすぐれた作品を書かないといけないのかと思うと、大きく書く内容自体を切り替えていくのだろうか、どうするのか、と心配すらしてしまう。

村上さんー本当にいったいどこまで考えて、小説的仕組みを作っているんですか?
5.0 自分という重い世界
一種のアンチユートピア小説だと思う。ただ普通のアンチユートピア小説の特徴であるコンピューターに支配された超管理社会は、計算士と記号士の角逐する現実世界だけである。この作品はもっと複雑で、主人公の心の底にもうひとつのアンチユートピアが存在しているのだ。この世界は涅槃寂静的でありながらも反エントロピー的な終末世界。そしてこの世界もコンピューターで混乱させられてしまう。
また普通のアンチユートピア物と異なり、主人公は自由と主体性を求めて闘ったり脱出しようとはしない。現実世界で闘わず、精神世界でも愛する女性の心を取り戻すべく森に住むことを選ぶ。これが唯一可能な闘い方なのだ。そして自分が自分であり続けるにはこの道しかないのだ。
「影」はどこか「鼠」や「キズキ」を想わせる。ピンクの服を着た太った娘は「双子」や「キキ」を、老大佐は「ジェイ」を連想させる。それぞれ主人公の「影」であり、異界と現世を取り持つ霊媒的な女性であり、諦観した大人である。図書館の影を失った女性は後の作品「ノルウェイの森」の「直子」のような印象がある。主人公は、自己の世界の重荷を公正に引き受け、恋人の失われた心を取り戻すべく森に住む道を選んだのだと思う。
世界を否定せず、他者を在りのままに受け入れ、自分という重荷を背負うことを決意してこそ、自分が自分であり続けることもできる、というのが「メッセージ」ではなかろうか。
5.0 ムラカミワールド・全開。
『壁』に囲まれた、『街』で『夢読み』の仕事をすることになった『僕』の『世界の終り』という小説と、『組織(システム)』で『計算士』として『暗号』を作るスペシャリストの仕事をしている『私』の『ハードボイルド・ワンダーランド』という小説が平行して語られる。
正直、これだけではなんのことかわからない。まったくの絵空事といえばそんな気もするし、現実にありえることだと言い切ってしまえばそんな気もする。どちらかというと『世界の終り』が空想で、『ハードボイルド・ワンダーランド』が現実、という印象を最初は与えてくれる。まったく交わりのわからない、平行した二つの物語。それは話がすすまないとわからないものだし、また話がすすんでもわからないものでもある。作中で明かされる秘密は、納得のいくリアルなものであると同時に理解不能なファンタジーですらある。つまりジャンル分けが非常に困難なのだ。ムラカミハルキという作家は常に東京を舞台にしていても全然東京でないような世界に変えてしまうのが得意だ。そんな、現実の舞台すらも架空に置き換えてしまえるような作家が架空の舞台について描く。秀逸である。

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