書想 『草枕』
これぞ我が積読書の最高峰!17歳の時に我家の本棚に来て23年、熟成に熟成を重ねて、昨年ついに読了に至った名作。
エエ年こいたオジサンの書評が夏目漱石とは、お前は小学生か?と訝る諸君!漱石などというものはエエ年こいてこそ、読んでみてわかるものなのだ!
なぜなら書いた本人自身が40代で作家デビューしたエエ年こいたオジサンだったのだ。しかも、ただのオジサンではなく、東大英文科第一期生で初の国費留学生だった、挫折・屈折・健康不安の感じながら、10数年学者として教壇に立ったのちに作家デビューオジサンなのだ。
その漱石がデビュー2作目として放った芸術論とも言うべき作品がこの『草枕』。
【本の内容】
枠組みは小説の体裁をとり、架空の人物が配役されており、その人々が、紀行文ともエッセイともしれぬ語り口の中、これといった大きな筋立てなくストーリーを展開していく。
で主役として存在する絵描きが山奥の湯治場で日々起こる些細な出来事をネタに芸術論やら創作家としての心がけやら心構えやらを披露していく。
しかも、漱石お得意の文明批判的な愚痴と東洋文明で確立された伝統的な芸術論が、華麗なる混ぜっ返しとして随所に登場し、所謂ストーリー展開やらを寸断して行く。
読者は中心人物の画家に感情移入しながら、すこしづつ芸術論の深みを垣間見ていく、最後の場面で、あっ小説という枠組みで語ってたんだったねという事に気づかされる。【感想】
エッセイ風でありながら極めて手が混んだ小説体の芸術論なのだ。
私の能力では、10代から数回挑戦してすべて途中で投げ出した、いわく因縁付きの、全く歯が立たないトラウマ本だった。それを四十にしてやっと「ああ良いなぁ」って感じで読破できたときには感慨無量だった。なんと晩生な私...
ハッキリ言って、こんな高尚なものを小中学生が読むこと(目で追うこと)は出来ても、頭で肌身に理解するなんてことできるはずが無いと私は確信する。
これは基本的には漱石文学全体に共通して言えることではないかと思うが、特に『草枕』という異色の作品については、間違いなく言える。
だから「この夏読もう!新潮文庫100冊」などの書棚に『草枕』が並んでいるのを見ると、私のような凡人だといいオヤジになってから、普通の人たちは大学生になってから、早熟な秀才で読書家(三島由紀夫みたいなタイプ)の人でも高校生で読むのがやっとこさの本、そういう帯び文を付けたほうがいいんじゃないといつも思う。
間違っても小中学生が「夏休み宿題として感想文を書こうか」なんてレベルでは無い。
