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彼岸過迄 (新潮文庫)

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彼岸過迄 (新潮文庫)の商品レビュー

4.0 余人には分からぬ男女模様
いわゆる「後期三部作」の初作。漱石が大病で療養してからの復帰作(新聞連載)で、題名は正月から書き始めて「彼岸まで」書こうかと言う所から取ったもの。「彼岸まで」無事に書き続けたいと言う願望も込められていたと思う。復帰作と言う事で、読者に面白いものを提供したいと言う漱石の断り書きがある。

一応の主人公は敬太郎と言う大学出の青年。友人の須永の叔父の世話でようやく職を得ている。しかし、敬太郎は狂言回し的役割で、実際の中心人物は須永とその従妹の千代子。そして、須永のもう一人の叔父の松本。敬太郎が須永と松本から話を聞く形で物語は構成される。「前期三部作」で考察の対象となった男女の恋愛問題は須永と千代子に投影されている。須永は「それから」の代助と同じ高等遊民。松本や母の勧めで千代子との結婚を迫られているが、煮え切らない。「女を取るか義理を取るか」で、結局女を取った代助に比べ、本作では須永は最後まで態度を決めない。決断をそして女を恐れているのだ。一方の千代子はきっぷの良い女に描かれ、優柔不断な須永を「卑怯者」呼ばわりする程。ここでは、当時の頭でっかちな高等遊民を批判している感があるが、「女が分からなくて恐れている」のは漱石自身の心境の反映でもあろう。

ここで、敬太郎はこうした男女模様を更に外側から見ているだけで、須永の予備軍とも取れる。敬太郎を登場させる必然性は無いので、男女模様は余人には分からぬと言う漱石の皮肉であろうか。いずれにせよ、男女の機微、疑心暗鬼などは次作「行人」に繋がるもので、「後期三部作」のスタートとして堪能出来る作品。
3.0 ううううーん。
課題として読んだ「彼岸過迄」。
正直読んでる最中は、作者が何が言いたいのかまったくと言って良い程分からなかった。
敬太郎から始まり、須永で終わる、淡々とした物語の中にいったいなんの意味があるのか…

読み終わった後、よくよく考えてみれば男女間の話や精神の話、又様々な問題提供がなされていることに気付いた。
まだ年がいっていない私には少し背伸びしすぎた内容だったのか。
そうしたら、もし数年後読むとしたら、もっとこの物語の神髄まで読み解くことができるかもしれない。
そう思って今は置いておこうと思う。
5.0 精神の推理小説
この小説は、いくつかの章からなるある意味短編集ともとれるつくりとなっています。
主人公(?)の敬太郎ロマンチックな冒険にいつも憧れを持っている若者、好奇心旺盛な彼はたびたび人の事情に首をつっこんでいきます。彼の洞察力、観察力や心の動きが鋭敏に描かれていて、先の展開が気になるように仕向ける手腕は大変見事でした。
彼の関わる人々の話で物語は進んでいき、最終的に一番の肝とも思われる後半の須永と千代子の恋話へ行き着きます。これがこの本の実際のテーマといっていいでしょう。
学問がありすぎ、頭のほとんどが理で詰まっている須永は幼馴染の千代子を愛しつつも、女の未知に恐怖を感じ、そして彼女の言動すべてに神経を鋭敏に働かせ、その立ち振る舞いが自分を見下しているかのような妄想にとらわれます。
しかし千代子のほうでも、彼を愛しつつ、学問の無い自分を相手が腹の中で馬鹿にしているものと思っていたのです。
少々語弊があるかもしれませんが、お互いあまりに男性的で、一方があまりに女性的だったためそういうすれ違いが起こったのではないでしょうか。
前期の三部作などに比べ、精神の描写が徹底していて、複雑なパズルを読み解いているような気分になります。何度か読み返してみればまた新しい発見があるでしょう。。
漱石の世界の奥深さを改めて実感させられる作品でした。
5.0 相変わらず・・・
 朝日新聞に掲載した漱石の小説はどれでもそうだか、前半は、かなりダラダラと進行する。誰が主人公だかわからない状態で、敬太郎の探偵ごっこの末、「高等遊民」の甥・須永市蔵と「高等淫売」千代子の関係が暴かれる。それ以降がめっちゃ面白い。幼いころからの、許婚同士、トントン拍子に話は進む、といいたいところだが、話は全く進まない。市蔵が、小間使いの隠し子であることがわかってから、同じ小間使いの「作」の素直な態度に惹かれる。市蔵の嫉妬の対象となる"男"も出てくるし千代子の妹、百代子(ももよこ)も登場、とにかく、漱石の小説にしては、やたらと登場人物が多い。劇中劇のような話の進行で、一体、前半の主人公敬太郎は、どうしたの、っていうところで、プツリと話は終わる。やはり、いつものように朝日の編集者の一言、「はよ、終わらさんかい!」で、この小説も終わってしまった・・・・。この小説の唯一の収穫は、漱石の造語である「高等遊民」「高等淫売」という言葉を21世紀にまで引きずってきたことぐらいか。やれやれ
4.0 後期三部作の序章
「行人」「こころ」へと続く3部作の序章。
タイトルは漱石が本作を彼岸過ぎまでに 書く予定だったから付けられた適当なもの(笑)

この物語の中核を担う人物である須永は、内向的で理屈屋で、自意識過剰な偏屈者。
彼はその性格ゆえに、自分のやりたいこともできず、絶えず不幸を背負っているよう。
あまりにぐずぐずしているせいで、 ヒロインの千代子にも「卑怯」と言われてしまう始末…。
人間あまりに思索にふけるといいことない、ということがひしひしと伝わってくる作品。
漱石の自己批判がこめられているようです。
話のあと、須永と千代子がどうなっていくのか気になります。

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