商品の情報
他人の顔 (新潮文庫)

他人の顔 (新潮文庫)

この商品が欲しい!
この商品は Amazon.co.jp で購入することができます。このボタンをクリックすると、商品が Amazon.co.jp のカートに入ります。

他人の顔 (新潮文庫)の商品レビュー

5.0 素顔で勝負!――「他人の顔」、「人間失格」に、「宿屋めぐり」
 町田康さんの長篇小説に「宿屋めぐり」がある。その作中で、主人公の鋤名彦名が、奇術師として、変顔術を披露する場面がある。この場面を読み、私は、本作「他人の顔」を思い出した。鋤名彦名は、旅の行く先々で、いざこざを起こし、しまいには指名手配されてしまう。そんなわけで、彼の顔は全国の人々が知るところとなる。そんな危機的状況下に、なぜか、彼は変顔術を身につけてしまう。
 自分の素姓が露顕しないようにするためには、顔を変えてしまうのが、もっとも、効果的だ。偽名を用いるのも一つの手だが、似顔絵と照らし合わされたら最後、他人には化けおおせない。しかし待て、じゃあ、顔さえ変われば、人間は変わるのだろうか? うむ、そうか、顔が変われば、人間、中身も変われるのかもしれない。しかし待て、じゃあ、その変った人間は、いったい、何者なのだろうか。元の自分ではない、化けた他人でもない、とすれば、他人の顔をした、他人ではない、また別の誰か、ということだろうか。じゃあ、その別の誰かと、化けた他人とは、いったい、どうやって、区別したらよいのだろうか。傍目には、二人は同一人物ではないか。
 寺山修司は、どこかで、月光仮面、あれは、汚い、正義をなすつもりならば、自分はどこの誰であると名乗り、仮面を剥ぎ、素顔を明かすべきだ、みたいなことを言っていた。「他人の顔」の主人公は、――そして、これは、私自身にも当てはまることなのだが――寺山の言のように、〈他人の顔〉なんかに期待をかけず、たとえ、それがケロイド痕の残る醜いものであっても、自分の素顔をさらけだすべきだったと私は思う。
 太宰治「人間失格」の主人公、大庭葉蔵は、自画像を描く。彼は、その陰惨さにうちめされながらも、醜い自分に嫌悪を抱きながらも、これが自分の姿なのだ、と自分を受け容れている。しかし、その醜い部分はひた隠しに隠し続け、しまいには、「人間失格」者の烙印を押されてしまう。
 結論、人は素顔を隠してはいけない。
4.0 人間の象徴としての顔
作者の代表作の一つ。顔のキズが原因の一つとなって、妻の真情を疑う夫が仮面を作って"他人として"妻の襲撃計画を立て、妻の真意を確かめようとする話。

発表当時は作品の構成に大分批判が集まったようだ。襲撃実行前の、仮面製作等の準備の描写が全体の5/6程を占め、実際の夫と妻の対決が一瞬で終ってしまう。だが、私はこれは作者の計算通りだと思う。夫が執拗な程に仮面作成に没頭する姿、あるいは計画を綿密に練る姿に怨念のようなものを感じ、読者を物語に引き込む。そして、仮面が象徴する"顔"が人間にとって何を意味するかを読者にも考えさせる。そして、最後に待っているドンデン返しの皮肉。

人間の表面的な象徴と言える"顔"の考察と共に、男と女の間に存在する心の闇を映し出した秀作。
4.0 この男にとって「顔」とは何だったのか・・・
事故で顔に傷を負ってしまった男が、やがて顔のないことが妻とのちょっとしたつまずきの原因ではないかと疑い始める。そして、男は妄想の森に入り込んでいく。なまじ専門知識と「材料」が近くにあっただけに、その走った道は破滅の深淵へと通じていた。
理系小説といわれるだけあって、仮面の制作過程はリアルである。全編心理描写であるが、とりわけ試しに街に出てみるうち、仮面が自我を発揮し始めるあたりは秀逸である。
どんでん返しが用意されている。ここで妄想の末路とはいえ、男の馬鹿さ加減が痛罵される。化けの皮が剥がされ、叩きのめされる。痛快さを覚えるのは私だけか・・・。ただ、男のとった行動は・・・。
考えてみると、男は会社では全く普通に勤め上げていた。つまり、男は「包帯男」としての「顔」を既に持っていたのだ。
4.0
人間にとって顔とは何か?見えない心の化身なのだろうか?     顔を失うことで心も失い、それらの喪失感を妻の愛で補充しようとする男を通じ、我々に生理的崩壊を訴えかける「他人の顔」。 

自分以外の顔に依拠することで重層的な「自分」を造り上げ、心にまで仮面を被せることで、すべてが仮になってしまった男の心情を内側から抉り出す描写によって、結局は、男の「顔」を知っている我々の目には「仮の顔」の裏を読みとくので、裏が表に見える滑稽な悲劇になってしまう。常に裏と表が錯綜する本編を自分の目で確かめてはいかがでしょうか。

4.0 内省から妄想、そして破綻へ
 仮面を作り上げるに至る工程とその試行錯誤の描写は非常に細かく、リアルに感じられる。試行錯誤で仮面が完成し、一人二役を演じきれるようになるように努力するあたりでは、ぐっと主人公にのめり込んでしまう。その分、最後のどんでん返しは衝撃的だ。

 顔を失うことで自我を失ない、妄想的になったとはいえ、妻の手紙を読んだ後の行動は完全に破綻していると言える。
 「顔」という一つのアイデンティティの崩壊により、優秀な人間が内省を重ねていくに従って、妄想にとらわれて破綻していく様は、日本的なエリート層のもろさを表しているようでもある。

本の最新売り上げランキング - トップ10

1位 生声CD付き [対訳] オバマ演説集
おすすめ度: 価格: ¥ 1,050  通常24時間以内に発送
2位 「儲かる!会社」に一瞬で変わる 1日10分、年収3倍 見田村流超マーケティング
おすすめ度: 価格: ¥ 1,575  通常24時間以内に発送
3位 起きていることはすべて正しい―運を戦略的につかむ勝間式4つの技術
おすすめ度: 価格: ¥ 1,575  通常24時間以内に発送
4位 pixivで学ぶイラストテクニック集
おすすめ度:   
5位 彩雲国物語  黒蝶は檻にとらわれる (角川ビーンズ文庫)
おすすめ度: 価格: ¥ 540  通常24時間以内に発送
6位 スピード・ブランディング―普通の人がブランドを確立し、成功を加速させる
おすすめ度: 価格: ¥ 1,500  通常24時間以内に発送
7位 MUTUALITY:CLAMP works in CODE GEASS
おすすめ度: 価格: ¥ 1,995  通常3~5週間以内に発送
8位 細野真宏の数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身に付く本!
おすすめ度: 価格: ¥ 1,260  通常24時間以内に発送
9位 レッスルエンジェルス サバイバー2 ザ・コンプリートガイド
おすすめ度: 価格: ¥ 2,415  通常3~5日以内に発送
10位 アイデアのちから
おすすめ度: 価格: ¥ 1,680  通常3~5週間以内に発送
こちらもおすすめです
密会 (新潮文庫)
おすすめ度: 5.0
価格: ¥ 460
通常24時間以内に発送
燃えつきた地図 (新潮文庫)
おすすめ度: 4.0
価格: ¥ 620
通常24時間以内に発送
飢餓同盟 (新潮文庫)
おすすめ度: 4.5
価格: ¥ 460
通常24時間以内に発送
人間そっくり (新潮文庫)
おすすめ度: 4.5
価格: ¥ 380
通常24時間以内に発送
箱男 (新潮文庫)
おすすめ度: 4.5
価格: ¥ 460
通常24時間以内に発送