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壁 (新潮文庫)

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壁 (新潮文庫)の商品レビュー

5.0 不条理作家の不可思議作品
安部公房は、不条理なことを、不可思議な表現をする作家だと思った。
壁は人の外部にあるのではなく、内部にあるのかもしれない。
4.0 人間の存在に対する根源的な意味を問い掛けた意欲作
芥川賞受賞作で作者の出世作。人間の実存性の危うさと人間を他から仕切るものの代表を「壁」に象徴させて描いた作品。「S.カルマ氏の犯罪」、「バベルの塔の狸」、「赤い繭」の三部から構成される。

「S.カルマ氏の犯罪」では、主人公はある朝起きて見たら、名前を失くしていたと言う設定。カフカ「変身」を思わせる出だしである。こうした設定にした場合、カフカのように日常の一コマとして淡々と綴るか、戯画化するしかないが、作者は後者を選んだ。名前を失った事で自らの存在が揺らぐ主人公の狼狽ぶり。この他、有機物(人間)と名刺や洋服等の無機物との闘争。主人公(視たものを胸に吸い取る)を裁く法廷での法学者、数学者、哲学者のナンセンスな論争。風刺だらけである。そして、主人公の胸の廣野には「壁」が生え、次第に成長していく...。「壁」は主人公自身であり、外界との隔絶感の象徴に思える。そして、その廣野の心象風景は廃墟化した都市とも砂漠とも読み手に映る。「バベルの塔の狸」では主人公は身体を失う。つまり、透明人間になる。身体によって生じる影を奪ったのは"とらぬ狸"である。主人公は"とらぬ狸"の指示のままバベルの塔の「壁」を付き抜け、塔内に入る...。この「壁」は現世と黄泉の国の境に思える。両作の主人公とも気が弱い。重要な物を失ったためか、それとも弱いから外界と隔絶してしまうのか。「赤い繭」は更に四つの小品からなる。上作と同様、身体を失くし、繭になってしまう男。世界中の人間が液状になる新ノアの方舟談。そして、作者を有名にした「魔法のチョーク」。ここでは、「壁」は主人公の心の投影である。そして、カニバリズム談。

初期の作品と言う事で生硬い印象もあるが、高度に抽象化された構成の中で人間の存在に対する根源的な意味を問い掛けた意欲作。
5.0 「世界の果ては私自身だ」という物語
安部公房さんの(壁)「第一部 S・カルマ氏の犯罪」を読んで、おれも一日考えてみました。

「地球」とか「宇宙」という名前があり、全部ひっくるめて「世界」という名前がありますが、
その内側には、これまたあらゆる名前のついたものが存在し、その実体、または概念が
存在しているということは、誰でもおおよそ認識できると思います。

ですが宇宙の境界(壁)の外側、向こう側には、どんな「世界」がある?のでしょうか。

これまで人間が認識したことのない世界、いわばまだ「名前の無い世界」。
ちゃんとした名前がまだ「無い」ということは、かつて誰も経験したことの「無い」世界、
もっと大袈裟に言うと、まったく概念に「無い」世界で、すなわち誰一人知ることができない世界です。
人間は名前(固有名詞)の「無い」世界で生きたためしがないのであって、「無い」とは喪失した、喪失している、ということ、つまりこの小説の主人公も、ある朝、名前が突然無くなって、自己喪失というか、
そんなめにあうわけです。

自分に名前が無くなったおかげで、砂漠になってしまった主人公の胸について、
哲学者やら法学者やら数学者が出てきて
破天荒な裁判(議論)が繰り広げられます。まさに人類の教師達の退屈しのぎが始まるのです(^^)
いくらみんなが思考を重ねても、人間の認識には限界があって、
主人公も犯罪者のように扱われて戸惑うばかりです。

「自己喪失」=「自己認識でき無い」=「無い」=「無」につながるのであれば、
我こそ認識できる範囲の行き止まり(限界)であって、世界の内側の境界、または世界の(壁)そのもの
という存在と化し「世界の果てとは、私(人間)自身ぢゃないのか」と、
意外な結論に導かれていくのでした、、、

とてもおもしろかった。でも自分なりの解釈が間違ってたらごめんなさい(^^)
3.0 わけわからん
芥川賞受賞作。短編が6つ収録されています。けど、これ難解なのね。自分は読んでもわけわからんかった。万年筆がしゃべるし(笑)
「S.カルマ氏の犯罪」は、朝起きると自分の名前が思い出せない。カフカの『変身』を思い出した。カルマ氏が病院に行って、自分の名前が思い出せず、次々と違う単語を言うくだりは爆笑。他にも言葉遊びをしているようなところがある。ちょっとしたギャグですな。これは。結末は、ジョジョ四部を思い出した。
「魔法のチョーク」は、チョークで書いたものが現実に現れる話。なんかウィングマンを思い出すな。ウィングマン読みたくなった。
5.0 安部公房の入門書です。
『壁ーS.カルマ氏の犯罪』は安部文学の入門書であり、芥川賞受賞作です。作品のテーマは「アイデンティティの意味とその喪失(モラトリアム)」で「名刺」とは「社会的な自己」(---としての自己)、「名刺を見ている僕」が「本来的・本質的な自己」です。これが理解できないと、その後の安部作品を理解するのは不可能です。詳しく知りたい方には「モラトリアム人間論の時代」(小此木啓吾)を推薦します。「日本の古本屋」というホームページにて古書として購入可能だと思います。
安部作品全体に共通ですが、レビューを見ると、誤読されている方が目立ちますが、比喩の意味を良く考えて読むか、参考文献を読んで研究する事をお勧めします。そうすれば、必ずや感動ものです。

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