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塩狩峠 (新潮文庫)

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塩狩峠 (新潮文庫)の商品レビュー

5.0 忘れることの出来ない一冊に!
私はキリスト教の信者ではありませんが、この本には心を揺すぶられました。
ましてや、この物語が実際にいた人物の行為や心情を書かれていることについて、驚きを感じざるを得ませんでした。
もちろん、小説ですから作者のフィクションや意図が、当然のことながら入っているでしょう。
それを差し引いても、十分に読者に考えさせ、感動を与えてくれるでしょう。

物語は、明治42年2月28日に、塩狩峠で起きた鉄道事故で、主人公が「犠牲」を払って乗客を救うに至るまでの、生い立ちやその成長の過程における心の動きを綴っています。

脱線転覆しそうな列車を止めるために線路に身を投げ出すと言う、「命」を賭しての「犠牲」の精神はどうして培われたのか?
それを知ることは、読む者が「生きる」と言うことを改めて考えさせられることです。更には、「愛」とは何なのかについて考えさせられることです。

作りものでない迫力が、主人公の「生きる」ことに対する真摯な態度と共に、ひしひしと胸に迫ります。

忘れられない一冊になりました。
4.0 塩狩峠に行ってみたくなりました
 この小説を読んで、久しぶりに小説は面白いものだと感じました。

 東京で繰り広げられる過ちと迷いと、北海道で繰り広げられる信仰深さと美しさが対照的で素敵だと思いました。

 軽薄短小な近頃におすすめの一冊です。
5.0 是非お勧めします
もう20年も前に何気なく買って読んだ本ですが,とても大きな影響を受けました。
あえて何も書きません。すばらしい本です。
5.0 信仰と出会い真摯に実践した青年の生涯
本作は、明治時代にあって旧弊の中で生まれ育った少年が、
かけがいのない出会いや別れ、青年期の葛藤を通じて信仰と出会い、
大人になってからキリスト教徒として生きることを決意し、
そして信仰と実践を繰り返す果てに世俗的な幸せを超越して行動する…、
その人生の軌跡を、実在した人物(あとがき参照)をモデルに描いたものです。

本作は元々キリスト教徒向けの雑誌に連載されていたものであり、
永野信夫青年の生涯は、イエス・キリストの生涯と重ねて描写されているように思います。
事実、作者によれば本作のテーマは「犠牲」、
それもイエス・キリストが全人類の罪を背負って十字架刑を甘受するという、
キリスト教の根本的な部分にかかわるものです。

しかし、そのようなキリスト教色が強いにもかかわらず、
本書が多くの方に受け入れられるのは、
たとえキリスト教が媒介するにせよ、
永野青年が真摯に内省して成長していく姿に感銘を受けるからでしょう。
そして、本書のクライマックスは唐突に訪れますが、
すでに永野青年の成長と内省の過程で、当然に予期されていたものです。

まだまだふらついた人生を送る自分も、
いつか彼のような澄んだ境地に至りたいものだと思えました。
そのためには、まだまだ出会いや自省の時間が大量に必要でしょうが…。
5.0 「正しい人間など一人もいない」という意味
 あとがきの解説において、本書のモデルとなった長野氏の人柄について語る知人の手紙が引用されています。その手紙の
最後で「(前略)長野氏がかつて人を非難し批評したことを私は知りません」とあります。本当にこんな人がいるのでしょうか。
本当だったらとてつもないことだと思いました。正しく生きろ、と言われるよりもこちらのほうが100倍難しく思えます(すぐに人
を否定したくなる俗物の私には絶対無理です)。

 しかし主人公信夫にも確かにそうした長野氏に通じた態度があります。もちろん心の中では他人との関係において悩み、恨
みやねたみや自己嫌悪等のジレンマを抱えています。彼は正しくありたいと思い何が正しいのかを常に考え抜いて行動してい
るに過ぎません。思考停止した絶対的正しさを拠り所にして突き進んでいるわけではありません。だから結果的に信夫の口か
らは他人を安易に否定する言葉が出てこないのだと思います。逆に言えば他人を批判するのはその人が「自分は正しい」のだ
と思っていればこそで、一歩間違えば単なる傲慢に繋がりかねません。
 なぜ傲慢かと言えば本書に出てくる言葉、「義人なし、一人だになし」だからということに尽きると思います。

 「正しい人間などこの世にいない」という前提があるからこそ(答えがないからこそ)何が正しいのかと悩み考え努力し続けるこ
とをやめず、そしてその困難さを知っているからこそ、ついつい自分の欲や弱さに負けてしまう人の気持ちも理解でき、許す気持
ちも持てるのだと思います。だからこそ信夫の行いは「結果」に過ぎず、行い自体が尊いとは思っても「正しい」「そうあるべきだ」
などとは私は全く思いません。我が身かわいさと恐怖から、信夫のように人のために命を投げ出せなかった「結果」を自分で責め
恥じた人がいたとしても、その前提となる「正しくありたい(のに出来なかった)」という気持ちの存在もまた尊いものに思われます。
絶対視された「正しさ」を自分のモノサシとして「正しく生きる」だけなら何も難しくはありません。
 本書は、絶対的正しさなどないと自覚してこその「正しくありたい」と願い生きることの困難さゆえの尊さを示してくれています。

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