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笹まくら (新潮文庫)

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笹まくら (新潮文庫)の商品レビュー

5.0 市民と臣民(=兵隊)、内的倫理と世間、日本の支配の配電盤の不変性
数年前のイラク人質事件の三人とこの主人公の境遇は似ている。もっとも事件については表面的な事実しか知らないのだが、怒り狂っていた大多数の日本人も同じだろう。この十年間あれほど憎まれた人達もいない、そして私には彼等への憎悪が不可解だった。この主人公への周囲の軽蔑にも同質の不可解さを感じた。
憎まれたのは、彼等の行為が古代日本で不均衡に重罪とされた田を壊す罪と同質だからだ。日本社会の暗黙の掟を破ったからなのだ。日本人の人生は今も昔も権力者の為に立派な建造物とおコメを皆で作ることだけであり、掟はその際決して文句を言ったり石を運ぶ列を乱したり物を考えたりしないこと。列を乱すこと自体が重大なのであり主観や倫理はどうでもよい。責任などという観念とは勿論無関係。たんに生存と安全が脅かされるから掟破りとされるのだ。この相互我慢義務型奴隷倫理と相互監視義務が掟の正体。常に「兵隊であること。」が日本人の義務なのだ。「世間」を乱すこと自体が掟破りなのであり、一生消えぬ反日的不可触民の烙印が押される。権力者に対する問答無用の平身低頭義務の欠落した規範感覚と人格の持ち主と看做され、体制や主流思想、戦争評価が変わっても一生許されない。この点、主人公と人質三人は似ている。主人公は臣民の列に入れてもらおうと必死だ。で、彼女の元へは行けない。ところが心の底では、自分が一生許されぬこと、そして戦後も心の中の恋人だけに庇護され続けてきたことを知っている。だから彼女の訃報に接した瞬間から、見当識を欠く自己喪失者になってしまう。救済は日本人(兵隊)になることを諦める以外にはない。再び逃亡奴隷になることを決意し漸く精神の均衡を得ることができたのだと思う。
5.0 文句ない傑作です
米原万里さんの絶賛評を読んで買いましたが、予想を大きく超える大傑作でした。
ごくごく平凡な大学職員である主人公。。。。
しかし、過去と現在が同時にフラッシュバックする独特の文体が、
主人公の脳裏を再現するかのような非常な緊迫感を生み出しています。
あの暗い時代の息が詰まるような苦しさ、、、
戦争とか徴兵の重みを、戦争の悲惨さを伝える類書とは違う、
まさに、自分の身の上に迫る内面の恐怖として、ひしひしと感じることができました。
そして、安寧かに見えた主人公の現在の生活にもラストで予想外の亀裂が。。。
これだけの深みある内容に加え、ミステリのような醍醐味まであります。
これだけの傑作なのに、米原さんが紹介してくれるまで聞いたことがありませんでした。
おすすめです。
3.0 力作もケレンが見えて・・・
物語としては面白い。テーマも構えが大きく、内容も浅くなく、五木寛之の最高レベルの作品を軽く凌駕する。
しかし、『ユリシーズ』風の文体の頻出には正直、古臭さを感じた。『ユリシーズ』は決して古くならない。しかし、この作品の「意識の流れ」ぽく挿入される文章にはエロス(モリーナのように)も、死も感じない。しかし、この作品も良く持ったほうだと思える。
米原万里が絶賛していたから、ホントに久しぶりに再読したが、力作は疑わぬものの、そこまでの感は否めなかった。
4.0 傑作だけど、好きではない
読みながら、腑に落ちない点がずっとあります。それが作者の力量のせいなのか、そういう設定なのか、悩ましく思いながら読み進み、最後にははっきりします。主人公には、重要な過去があり、その過去が現在と交叉しながら物語は進むのですが、主人公に影を落としているのはその重要な過去であるかのように思えるし、主人公もそう思っているのですが、その過去とは少しずれたことに大きな落とし穴があることが最後に分かります。

傑作です。ですが、好きになれないので、星4つです。
4.0 悪夢
 まず、第二次大戦中に、徴兵拒否が、この日本で現実にあったらしい事を初めてしり驚いた。そして、その徴兵忌避をした男性の平凡な日常が、20年もたって、徴兵忌避という過去の事実からじりじりと壊れていく、という話である。
 なにか一つの事から逃げた時、どこまでもその事に追いかけられる、それには、正面から立ち向かわないといけないというメッセージなのだろうか。たとえ、その事が絶対悪である戦争であっても、逃げた事は、その代償をはらい続けないといけないのだろうか?立ち向かわなかったものは、一生、笹枕なのだろうか?
 文体の面白さを味わいつつ、メッセージをよみとりぞーっとした。

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