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ローマ人の物語〈19〉悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫)

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ローマ人の物語〈19〉悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫)の商品レビュー

5.0 歴史家皇帝クラウディウスの悲喜劇
カリグラの暴挙に呆れ暗殺した近衛軍によって次期皇帝に担がれたのは、市民の人気未だ衰えない亡きゲルマニクスの弟、クラウディウス。本人ですらも予期しなかった皇帝への就任、しかも、政治の世界に身を置かずに50歳まで歴史家として暮らしてきた経緯を考えれば、本書で描かれるクラウディウスの治世はなかなかにして順調で決して悪政というほどのものではありません。
しかしながら、クラウディウスにはある一面で致命的な欠陥がありました。それは家族(特に妻)や市民から畏敬の念をもってもらえないこと、しかも、皇帝になるまでにそのような経験がないだけにそのこと(皇帝という立場には畏敬をもってもらうことが重要であったこと)に無頓着だったことでした。結局、そのことが彼の人生に悲しくも滑稽な最期をもたらしてしまいます。
それにしても、広大なローマ帝国を治める事実上の「皇帝」に求められる能力・人間性のレベルは余りにも高く、この時期の皇帝たちが(確かに悪政であったり、人間的に問題があったにしても)後世からの評価が低いのはやむをえないような気がして、クラウディウスに少し同情してしまいました。
5.0 「敬意」を払われることの重要さ
若き皇帝カリグラの死により、突然に皇帝へと押し上げられたクラウディウスだが、歴史家だった知識を生かし地味にも着実に成果をあげていく。
しかし、身体的にも恵まれず溌剌さも無かったクラウディウスは50歳になるまで他人から畏敬の念を持って接せられる重要性を理解できなかった。当たり前であるがその種の感覚は幼少のころから敬意を持って両親や友人に接せられていないと養えない感覚である。軽蔑に慣れた皇帝を誰も尊敬しないのは頷ける。
現在でも、自分の夫をコバカにしていながらそれを見せて育てた息子が嫁に馬鹿にされるのは当たり前なのだ。特に男の子は厳しくも敬意を払いながら育てるのがいかに大切か、夫を立てることがいかに大切かを痛烈に感じる一冊。クラウディウスとアグリッピーナが反面教師となって教えてくれる。
4.0 クラウディウスは悪名高き皇帝じゃない。
カエサル編とアウグストゥス編が終わってからすいすい進むローマ人の物語。
こういうのが読みたかった。一人についてあまりに長いと飽きるから。

この巻の主人公は4代皇帝クラウディウス。見た目もパットしない50歳のおじさんがカリグラ暗殺でいきなり皇帝に担ぎ出されてしまった。
歴史の勉強をよくしていたクラウディウスはなかなかうまく治世を行っていくのだが・・・

5.0 真骨頂
 やりたいことをやると言ってもやりすぎだったカリグラが暗殺され、皇帝に担ぎ上げられたクラウディウス。背も低くどもる癖のあった第一人者は、それでも実に真面目に帝国を支えることになる。

 決して自分一人ですべてをやろうとしなかった彼は、個人的な使用人たちを秘書官グループとして活用する。当然、元老院としては面白くない。その上、やりたい放題な皇妃が加わる。ついには自分の奥さんに殺されるハメになる。

 帝位の正当性を血に求めるならば、皇帝の重要な仕事の一つは子作りという事になる。中国では後宮を作り、そのいわば皇帝の家庭内の使用人が宦官で、官僚グループたる豪族や外戚との権力争いに終始した事を思い出す。ここまでローマにはそれがほとんど見られなかったのが興味深い。もっとも皇帝が子作りに精を出せばメッサリーナのような女性が多く出る訳で……この先はちょっと控えておこうか。

 それにしても、「人間とは心底では欺されたいと望んでいる」という行には、多くの「ヤラレタ」と思わされたい男たちは手を打って喜んだのではないか。これぞ真骨頂とご多分に漏れず喜んだのだが、うれしいのだから仕方がない。素直に大喜びしておくとしよう。

5.0 知識と経験
「悪名高き皇帝たち」の3冊目に登場するクラウディウスは、私たちに「知識が豊富なことに越したことはないけれど、過信してはいけないし、経験から得られるモノも大切なのだ」ということを教えてくれると思います。カリグラの治世の衝撃的でいて呆気ない終焉によって、名門出身者ではあるが、一教養人として生涯を真っ当しようとしていた50歳の地味なおじさんが、緊急リリーフとして帝国の表舞台の中央に立つことになります。それがクラウディウス。本の虫であった彼は社会経験がほぼ皆無にも関わらず、これまで蓄積してきたローマ帝国の歴史という知識をフルに動員して皇帝業に従事します。ある部分までは知識だけで賄えた。だが実践という経験を積まないことには超えられない一線が立ちはだかる。彼が名帝になれなかった所以です。人生において「頭でっかち」ではいけないのだ。静の知識と動の経験の柔軟なバランス感覚が求められるのです。

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