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津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮文庫)

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津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮文庫)の商品レビュー

4.0 都井睦雄
津山三十人殺しの犯人の名である。たったの一夜の内に、しかも数時間で部落の村人三十人を
惨殺するという、ちょっと想像できる範囲を逸した凄まじい犯行(だが世の中は広いもので、
韓国でウ・ポムゴンが起こした57人殺しなどという更に恐ろしいモノもあるが、、)。
日本史、いや世界史にも残るこの残虐非道な殺戮に迫る背筋が凍るようなルポです。

僕もそうだが、大抵の人はこの事件を知るきっかけとして横溝正史の「八つ墓村」を読んだ
人が多いんじゃないだろうか?あるいは映画版の方でも物凄くインパクトに残るシーンだけに
一度観たら忘れられないだろう。。他にも松本清張や岩井志麻子をはじめとして数多くの
作家やルポライターがこの事件について迫っている。
筑波昭著の本作は取材した事柄や捜査資料などを淡々と書き連ねているので、物語を期待して
いる人は多少物足りなさを感じると思う。ただ事件の概要を知らない人は淡々と進む筆致に
余計恐さを感じるでしょう。

第一部と第二部にわかれており、第一部は惨劇、事後、論評にわかれていて、まさに事件その
もののについての視点で描かれて、第二部は犯人の都井睦雄(といむつお)の生い立ちから
犯行時の22歳までをほぼ一年ごとに分けて描いてます。微弱ながら犯行が行われた部落の写真
や都井の自宅の写真、都井自身の顔写真に凶行時の格好を再現した写真なども載ってます。
あとは殺害現場の家の見取り図などもいちいち載ってますが、まあこれは舞台が田舎なだけに
どれも同じ絵みたいなもんですね。

それにしても最後何十頁かは、あまりの衝撃に読むコチラの感覚も麻痺してきますね。
彼の生い立ちを読んでいけば確かに偏執狂になる要素は多々あるが、それでもたぶん普通
の人間なら計画を立ていざ実行してみるものの2-3人も殺せば力が抜けてしまうじゃないかと
思う。だが、彼は最後の最後まで筋を通すがごとくに何の躊躇もみせず貪欲なまでに自らの
意志に従った・・・・・・。心の準備をしてからどうぞ。
4.0 秋葉原事件
将来を嘱望された地方の秀才が転落して社会の冷たさを逆恨みし自己顕示欲を爆発させ、理不尽な大量殺人に走るという構図は、秋葉原の通り魔事件や池袋の通り魔の容疑者(いずれも20代前半)に意外なほど似ている(ちなみに大阪・池田の児童殺傷はかなり異質だ)。当時は戦時体制の暗い世相の中、容疑者の男は、肺病やら夜這いでの愛憎やら狭い村の共同体意識・世間体やらに追い詰められ、結局は村の隣人たちに凶刃・凶弾の矛先が向かった。それに比べ、後者の最近の事件は、都市やインターネット社会での孤独やワーキングプアの問題が影を落とし、結局大都市の通行人を狙うという風に、構図や精神構造は似ていても時代とともに犯罪の形が変わっているところもまた興味深い。一見キワモノ的になりかねない題材だが、抑えた筆致で通し、資料が潤沢で綿密な取材力に脱帽。
5.0 日本犯罪史上最悪
岡山の30人殺しの犯罪を追った本です。横溝正史の八つ墓村のモデルにもなった事件です。結核の罹患、優秀なのに、進学の断念、軍国主義の足音、夜這いなどの村の習俗、阿部定事件など、当時の世相、風俗などのついて、記録や証言にもとづいて、細かく検証しています。事件について、知るためにはとても良い本だと思います。しかし、現象の記述にとどめているので、いま一つ、動機について、すっきり迫れていないところがあります。著者は、予断なく、読書に事実を示したかったようですが、著者として、推論だけでも欲しいところです。いづれにしても、この日本犯罪史上空前の事件について、その前後の事情について、詳しく予断なく書かれている本だと思います。犯罪学に興味のある人は必読だと思います。猟銃の所持の許可の問題など、当時と今とあまり変わっていないのがわかります。
5.0 憂鬱、村の皆が作った犯罪者。
昭和11年には、有名な事件の阿倍定事件が世をにぎわせ、軍国主義へと向かいつつある世相に笑いをもたらしたのだそうだ。
この本は、阿倍定事件に触発された、この事件の主人公の生い立ちや供述を緻密にたどったルポルタージュであると言える。
主犯者は、両親が他界した事を切欠に、姉とともに祖母の住む寒村に移り住む。
生来、体が弱く登校日数も少ないにもかかわらず成績優秀で、肺病を病む前は周囲の女性の人気もあった。
閉鎖的で、陰湿で、排他的な因習漂う寒村での唯一の楽しみと言えば、祭りと婚姻の有無にかかわらず行われる淫行しかなかったのだろう。
現に、私も習い事の先生から「農家じゃ女は村の男のものじゃけよ、男からアレを求められたら断ったらおえん。(マジっすか?怖いっ!)若い男は後家に物を持って行って、アレを教えてもらうのが習わしなんで。綺麗な後家やこ、村の男皆にやられよんで陰で馬鹿にしよったんで。」と言われた。
この県は、現代でも痴情に長けた当時の名残を残した様な人が多い。
又、閉鎖的な地域に住む人間は、実は自分たちの土地や人間関係が嫌いな場合が多い。それ故、どうしても結束力に欠けるので、結束を持たせる為には、絶対的強制力のある団体に属して特権を享受するか、自分たちの中で弱い立場の誰かを攻撃して、そこで団結を図る行動をとりがちだ。
排他的になるのも、よそ者が入り、自分たちの価値観や元々脆弱な団結力を崩されるのを極端に嫌うからではないかと思われる。

主犯者も肺病を病み、生活も貧窮となるにつれ、村の中での弱い立場の攻撃される対象となっていき、村の集団に入れず、そこから様々な不満や、強烈な性的衝動がからみ、
頼れる姉の嫁入り、村の共有物である筈の女達からも拒まれ、見捨てられ症候群の様になる。
陰湿で排他的な寒村で受ける陰湿な嘲笑や差別は相当なものであったと想像できる。
主犯者が、学校の先生の勧め通りに街中の中学校に進学していたら、この様な事にはならず、一廉の人物にはなっていただろう。
自殺する際の遺書の文章力には驚くばかりである。
この事件は、一人の人間が犯罪者になる過程に、様々な不運や偶然が重なる事や、人間の係る環境の影響の強さが分かる。
起こるべくして起こった事件だと思う。
4.0 悲しい。ただ悲しい。
どこにでもいる小市民である自分が
今もなおひっそりと存在しつづける“その場所”の悲しい歴史を
簡単に知ってしまったことが切ない。
この作品を読む行為は単なる読書ではなく、
悲しみの配当を受けることのような気がする。
途中に差し込まれている都井本人の顔写真を見たときには
体じゅうが硬直した。あなたも必ず硬直する。
読んでよかったのか、よくなかったのか、自分でも判らない。
悲しい。ただ悲しい作品である。

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