命の環
レヴューにわざわざこんな事を書くものでは無いかも知れないが、
この作品を読むまで柳美里という作家はどちらかというと好きではなかった。
重苦しい内容が淡々と語られる感じが、ごく平均的な環境で育ってきた
まだまだ人間としてケツの青い私が読むには矢張り重過ぎる。
しかし何かとメディアで取り上げられる機会の多かったこの作品を
何故か最近になってやっと読んでみる気になった。読み終わってびっくりする程感動している自分に気が付いた。
私自身は無宗教であるし、輪廻やら転生といったことを
考える機会というのは全く無かったが、新しい命の誕生と
死にゆくものの魂は矢張り繋がっていると思う。
繋がっていて欲しいと願った。
また東さんという男性に強く心を打たれた。
素敵なんて言葉では表現できない程素敵なひとだ。
この作品の中で彼の存在が無ければ感動は1割程度になってしまう
と言っても過言では無いはずである。
彼の生き様は多くの読者が衝撃(感動なんて表現じゃぬるい!)
を与えたに違いない。
柳美里という作家の好き嫌いに関わらず読んでみて損はしないと確信
できる作品です。
ひたむきさ。
以前のエッセーでは「子供を産まないことが母への復讐」という
文章を書かれていたのですが、そんな彼女が産むことを望むように
なる軌跡には深く感じるものがありました。正直すぎることは人を傷つけるだけではなく自分をも生きにくくして
しまうものだけれど、それでも正直にしか生きられない美里さんの
ひたむきさを賞賛したいと思います。
文章もデビュー時に比べて、円熟味が出たような。
ずっとテーマにしている「家族」についての考え方も変わっていくの
でしょうね。
これからの美里さんが書いていくものも楽しみです。