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裁判官が日本を滅ぼす (新潮文庫)

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裁判官が日本を滅ぼす (新潮文庫)の商品レビュー

2.0 「目くそ鼻くそを笑う」的な独善的な本
 公判の進め方や判決の是非について論じたり批判したりするのは構わないと思うのですが、裁判官の人格を否定するのはどうなんだろうと思いました。いくらなんでも書きすぎなんじゃないかと・・。筆者の門田さんは、本書で取り上げた裁判官に対して面と向かって話をしたことがあるのでしょうか? インターホンで話をしたようなことは書いてありますが、たったこれだけの"接触"と裁判の記録、関係者の証言だけで人間性を測ることができるものなのでしょうか? 他人事ながら、名誉毀損で訴えられるのではと心配になります。
 本書の中で、筆者は、裁判官を手厳しく批判しています。たとえば、
  ・エリート意識が強い。
  ・世間を知らない。浮世離れしている。
  ・人の心がわからない。
  ・事実認定するだけの能力がない。
  ・出世主義。
という具合に。
 しかし、これらの罵詈雑言は、マスコミ・ジャーナリストの皆さんご自身にそのまま当てはまりそうなことを、筆者の門田さんは気づいているのでしょうか。失礼ながら「目くそ鼻くそを笑う」ということわざが脳裏に浮かんできました。
 門田さんは、ジャーナリストのことを、巨悪と戦うヒーロー(正義の味方)であるかのように書いていますが、そのように思っている日本人がどれほどいるか考えたことがあるのでしょうか。また、裁判官がジャーナリストの「表現の自由」を奪っていると強い調子で書かれていますが、マスコミの無責任な"表現の自由"によって、どれだけ多くの人が迷惑を被り、傷ついて、泣き寝入りしているかをご存知なのでしょうか。「表現の自由」という錦の御旗を掲げれば、国民が支持してくれると思っているのでしょうか。もしそうだとしたら、上に挙げた「世間を知らない。浮世離れしている」という項目にぴったりあてはまります。
 本書の中に何らかの意味を見出すとしたら、人間は他人からチェックを受けないと腐ってしまうものだという教訓です。現状では、残念ながら、裁判官をチェックする仕組みが十分でなく、また、マスコミをチェックする仕組みも十分ではないのかもしれません。その点において、本書は、裁判官をきびしくチェックしており、その点に関して大きな意味があると思います(半分本気で、半分皮肉で書いています)。
4.0 必ずしも偏見ではない
他の方のレビューの中に、著者の挙げる裁判の例がワイドショー的、ステロタイプ的偏見だという批判があるが、はたしてそうだろうか。国に対して不利な判決をすると出世の道が閉ざされると想定される裁判では、裁判官たちは十中八九、逃げてしまうというのが情けない現実である。事実を調べて見られよ。また、本書で、裁判官は銀行に対しても弱いというのを知った。退官後、大手銀行の顧問弁護士になるのが裁判官の花道であるから、自ら花道を閉ざすことはしないのだと。天下り先の確保。裁判官もただの出世主義に毒された官僚にすぎないわけだ。裁判員制度が必要とされるのも、もっともなことだと思う。
1.0 マスコミへの危機感
1. 方法論について

ほとんど全ての論述について、著者の方法論には重大な欠陥があります。それは、イエロージャーナリズム特有の事実誤認と論理飛躍です。この欠陥は、本書の冒頭部分にすでにあらわれています。

『ギリシャ神話に出てくる正義と法の女神「ユスティティア」をご存じだろうか。』
『どの国でも、「ユスティティア」像には目隠しが施されているのに、最高裁のそれには、なぜか目隠しがないのである。』
『日本の裁判官を、その像は痛烈に皮肉ったものにほかならないことに気づいていただけるのではないか、と思う。』

まず、「ギリシャ神話」にユスティティアという神はいません。この女神は、正しくは、「ローマ神話」でユスティティア、「ギリシャ神話」ではテーミスといわれるものです。また、目隠しのないユスティティア像ないしテーミス像は、世界各地にあります。例えば、著者の出身大学たる中央大学にすら、目隠しのないテーミス像が存在します。さらには、そもそも目隠しがないテーミス像が最高裁にしかなかったとして、それがなぜ「痛烈に皮肉ったもの」になるのか全く理解不能です。そもそもこの像を設置しているのは最高裁自身なのですから、著者の論理が破綻しているか、日本語が誤っているがのどちらかであることは明らかでしょう。

2. 問題意識について

そもそも著者の問題意識それ自体にも大きな疑問があります。著者は法学部出身とのことですが、司法試験に通った「エリート」に妬みでもあるのかと思わざるを得ません。本書の問題意識は大きく分けて以下の2つです。

1. 裁判所は正義や真実を追求する場所ではなくなっている
2. 裁判官には常識がないので、正しい事実認定ができない

まず、著者は根拠もなく次のように繰り返します。『裁判とは、「正義」や「真実」を追求する場だと多くの人が思うはずだ。だが実はそうじゃないんだ。』
と。しかし、一体どれほどの国民が、裁判について、こんなにも素朴な観念を持ち続けているでしょうか。法廷が、あくまで「訴訟法的な真実」を発見する場だということは、他ならぬ著者自身が大学で何度となく教わっているはずです。人間は神ではありませんから、どんな裁判官も絶対的な「正義」「真実」を発見することなどできはしないのです。法に反して、あるいは証拠もなく、「正義」や「真実」だからと勝訴させるのなら、むしろそのような裁判こそ危険きわまりないといえるでしょう。

また、著者は次のことも繰り返します。『こんなにひどい判決を出すのは事実認定がおかしいからだ。裁判官には常識がないんだ。』と。しかし、事実認定が誤っているとする根拠や、内在的批判は殆ど示されていません。裁判には勝者もいれば敗者もいます。裁判に負けたからといって裁判官を批判するのは、単に試合に負けた選手がレフェリー批判をしているようなもので、全く説得力がありません。しかも、本書で取り上げられているのは極めて限られた例に過ぎません。こういう問題意識が正当だというなら、マスコミの様々な不祥事をもって「ジャーナリストには全く常識がない」ということもまた正当と言えるのではないでしょうか。

最終的に、著者はマスコミの名誉毀損について賠償額が高額化していることに話を持っていって、危機感を煽ろうとしているようです。本書の最大の目的は、実はここにあるのかもしれません。しかし、本書を読んでいると、こういう無茶苦茶な「自称ジャーナリズム」の攻撃対象となった側に同情的になってしまう。著者の意図とは逆に、本書はマスコミへの危機感をもたらす良書なのかもしれません。
5.0 裁判官も人の子でしかない。
もうかなり以前、負けるはずのない裁判で苦々しい思いを味わった経験があります。裁判官も公務員の職種のひとつ。神ではない、一人の人間。その判断もいくら膨大な情報量の学問を勉強しようがその人物の人間性が全て肯定されるものとは限りません。本書に記載されている事件内容を読むと本当に憤りを感じる。たとえ多大な量の勉強をした人間でも高学歴の人間でも必ずしも常識があるかどうかということとはなにも裁判官に限ったことではありません。しかし、たとえ一人でも人の命が関わった事件に誤った判決、常識では考えられない判決は決して許されないのです。最近では時効を廃止すべきとか報復権を認めよというような意見も聞かれますがこれも司法に対する不信感の表れの一面でしょう。現状の裁判制度では被害者がいくら適切な判決が下されたとしてもそれでもなお真に癒されることはないのです。被害者にとって時はそれを風化させることはありません。
5.0 司法エリートの特殊な人間性
ある人に勧められて、この本を読んだ。その人は、この本が「司法のタブーを破った画期的なものだ」と言っていた。読んでみて、なるほど、と思った。この本は、裁判官のみならず司法試験に通ったエリートたち全てを俎上に上げていた。この本は、裁判官にも、弁護士にも、ある意味、検察官にも耳の痛い内容になっている。そして、筆者は、裁判官とは、日本人の美徳である「恥」さえ知らない人間たちであるとまで結論づけている。日本の司法エリートが持つ特殊な人間性を余すところなく描き、そして告発した本。司法の世界で、お互いを「先生」「先生」と呼び合っている人間たちには、この本の内容は許せないだろうな、と思った。だが、私たち一般国民は、この勇気ある書に拍手を送る。

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