喜劇
ノンフィクションユーモアが冴えていた。新婚夫婦らが壁をたたき合うまではエレガンシーでちょっとぴりキュンとするエピソードを想像するが、現実はそんなに甘くなく、勘違い夫婦に邪魔され、新婚なのに、どこもかしこも哀れみたっぷり。
中からみたら悲劇だが、はたからみたらなんだか喜劇。
それでも悲観することなく力強いエッセイを書く先生が魅力的です。
短編郷愁エッセイではかすかに鼻孔をくすぐる澄んだ空気を感じ、未来への若者へのメッセージ等喜怒哀楽、人間の醍醐味がぎっしりつまった飽きない、とまらないたまらない作品です。
文庫本一冊分の “戦利品”
著者の控えめなユーモアが心地よく、もう一冊もう一冊と思いながら何冊目かにたどり着いた一冊。
数学者の卵や数学のことのみを扱ったエッセイではない。むしろ著者の新婚旅行でのエピソードなど一般のものが秀逸だ。
全体を一貫しているのは著者の戦う姿勢だ。と言っても悲壮感はなく、「武士は食わねど高楊枝」 的なおかしさがつきまとう。たとえば新婚旅行先で、その戦う姿勢の戦利品として手に入れたシャンペンの大瓶を、誰に笑われようと断じて持って返る。それは紛れもなく戦う姿勢の象徴だからだ。そのほのぼのとした後味は、 「絡めてきた女房の腕」 がすべてを物語っている。
他の戦利品も気になるなら、是非手にとってページをめくってみてはいかがか。文庫本一冊分の “戦利品” がここに詰まっている。