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家守綺譚 (新潮文庫)

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家守綺譚 (新潮文庫)の商品レビュー

5.0 葡萄の味は甘美だったのだろうか
美しく儚く、そして懐かしい話がこの本の中では息づいています。
ヤモリ、烏瓜、ダァリアの君。

今まで人間になった夢を見ていたのだよ。

こんなにも綺麗で身に沁みる話を私は他に知らない。
5.0 念願の文庫化
未だにこの本を最初に手に取った時の衝撃が忘れられない人間の一人です。
家を守り続ける中で接する、不思議でどこか酷く懐かしい世界にどうしようもなく惹かれてしまいます。

5.0 『西の魔女』が苦手だった人にも薦めたい
私は『西の魔女』は世界観に抵抗があり最後まで読めませんでした。
ですがこちらは全く反対で、これからもずっと手放さない一冊になると思います。

夢十夜のような、唐突でありながらゆったりと読める奇妙な
短編集であると同時に、一冊で1つの話になっています。

舞台背景が明治初期なんでしょうか、少し昔の日本なのですが
明らかな時代描写や時代象徴的な固有名詞、文体を用いておらず
時代に疎い私でも置いてけぼりにならずありがたいです。
「だいたいこんなかんじ」程度で大丈夫です。

昔の日本、売れない書生、その友人高堂、等々
多くの女性は好きになる世界だと思います。
書生の日常にちょっかいを出す四季折々の植物
あやかしのなんともいえぬ微笑ましい雰囲気が印象的ですが、
一部では切り取ったような鋭い闇の描写があり
この作者は色んなタイプのお話が書ける人なのでは、と思いました。

読んだ後、自分の何気ない生活の中に小さな情緒や季節を探してしまいます。
こういった日本を感じさせるやわらかいお話がもっと読みたくなりました。
5.0 誰もがこころにもっている世界、なつかしい、いつか、どこかの記憶
 小さな頃に読んだメーテルリンクの『青い鳥』の最初の章で、亡くなった家族に再会できる話があったことを、なんとはなしに思い出しながら読んだ。

 この作者が描写すると、どんなに摩訶不思議な現象でも、なんら違和感なく自然に読めてしまう。不思議な植物や小さな動物、狸、鬼、幽霊、河童、人魚やその他もろもろ…想像や寓話の世界ではお馴染みであったり、これまでに考えたこともなかった輩が…ここぞとばかりに跋扈・跳梁しはじめ、押しあいへしあいしながら大饗宴…と思いきや、それぞれは、それぞれの分を弁え、自然の一部として、けっして他者を傷つけず、健気につましく暮らしている―つまり、各自が、自分の役柄に徹している一種の棲み分け=調和的世界。

 百年前といわず、自分が子供であった時分には、まだ、ここに書かれているようなことは、実家のすぐ近くの裏山や、林や田圃や川や池などに、ふつうにリアルに感じていた親しい世界だった。たしかに、自分も子供の頃なら、小さな町の人間役として、とくに不自然さもなくここに登場する輩の一人でいられたかもしれない。しかし、多くの人がそうであるように、私もいつのまにか、彼らとはべつの世界に生きることを余儀なくされ、なんだかよくわからないうちに、こころは子供のまま、みかけだけは大人になってしまっていた。それでも、失っていたものに気づかされることは、とても得がたい体験である。

 ごく個人的にいえば、私は犬のゴロー君が大好きで、ゴロー君が、昔実家に住んでいた柴犬で雑種のT君に重ねあわされ、彼の大活躍に、ずいぶんたのもしい気もちがしたし、T君となつかしい再会を果たした気分にさえなることができた。もしかすると、この物語のもうひとつのテーマは、‘再会’であるのかもしれない。

 この小さな身辺雑記風物語の中には、じつにいろいろなものが鏤められている。おそらくは幼少時、こころの中の抽斗に、ふと置き忘れてしまった‘銀の匙’のようなもの、誰もがいつか、どこかで過ごしたはずのなつかしい思い出。それは、あふれるような自然の中で、植物、動物、死者や精霊たちと対話しながら、自分自身とも対話していた世界であり、本当は現代人のすべてが、綿貫氏が暮らしたように、一度は幼少時を送るべきだった世界。作者はたぶん、当時もてるものすべてを注ぎ込み、私たちが一度は経験し、忘れかけたあとにふたたび思い出されるべきものとして、この綺譚のような貧しく豊かな生活を描いてくれている。読者は、気づかないうちに、綿貫氏の目でものを見、四季を感じ、自然の匂い、時代のたたずまいを味わっている。そして、私たちはそれぞれに、身のまわりに起こる摩訶不思議な出来事に綿貫氏とともに頭を悩ませつつ、じつは綿貫氏の立場で記し、自分自身の知らないなにかを思い出している。


 本書は、文庫本の絵柄も雅やかな風情があるが、単行本の装幀は、また古風なゆかしさがあってたいへん味わい深い(ただし、文庫では綿貫征四郎氏の随筆「やぶがらしの記」が読める)。親しい家族への贈り物にしたい気分にもなるし、また、読んでいる間は、死んでしまった人(動物)たちに、なんとなくもう一度会えるような気分にもなれる一冊。
5.0 心に染みる一冊
今からそう昔でもない、といって今ほど電灯などが普及していなかった時代。あまり売れてはいないが、もの書きの綿貫征四郎は、亡くなった友人の親に頼まれ、家の守りをするために庭つき池つき電燈つきの二階家へ移り住む。そこで出会う、掛け軸からボートに乗って現れる友人の幽霊、河童、人魚など様々な怪異。これらに驚くでもなく怖がるでもなく、日常に普通に起こることのように付き合っていく綿貫征四郎。

短編というよりはショートショートといった分量の二十八編が納められた物語集。

一編一編はとても短いのですが、そこから立ち上ってくる雰囲気、情感、懐かしさ、繊細な優しさといったら!著者の美しい文章の力にただただ圧倒されてしまいます。

何度も何度も繰り返し読み返したくなるような心に染み入る一冊です。

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