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雪沼とその周辺 (新潮文庫 ほ 16-2)

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雪沼とその周辺 (新潮文庫 ほ 16-2)の商品レビュー

4.0 みんな一生懸命生きている!
ここに出てくる登場人物はどちらかというと、人生では「負組み」と評されるかもしれない。

「閉店するボーリング場の最後の数時間」「なぞの言葉を残してなくなった料理家とその弟子」「老いを実感し始めた技術屋」「子供をなくした母親」「見知らぬ土地でレコード屋をひらいた男」「食堂のおやじ」「親友を失った男」そんな決して人生の表舞台には出てこない人たちである。
そんな人の地道ながらたくましくそして真剣に生きている姿にはげまされる。
決して大きな感動を呼ぶ小説ではない。しかし心のなかになんだか暖かいなにかを残してくれる、そんな素敵な小編集である。
5.0 人それぞれに
この本に巡り会ったとき、私はちょっとしたトラブルを抱えていました。
悩みや心配事があるときは、心に余裕がなくなり、つい狭い視野で物事を考えてしまう。
私もそのときは、まるで世界で自分だけが不幸であるように、世の中から一線を画された
気分でいた。

この本は、雪沼とその周辺に暮らす人たちの日常を垣間見せることで、幸せ尽くめの人
なんていない。みんなだってそれぞれにたくさんのものを抱えて、それでも誠実に生きて
いるとメッセージが込められている。

本を読みながら私は、今ではすっかり有名になったある芸人2人組の、デビュー間もない
時分の漫才が、あまりにつまらないので驚いたことを思い出していた。それは人真似と
しか思えないくらいごくありふれて、加えて、他人をけなすことでなく、愛情を示す
ことで笑いをとる今の彼らの芸風を、全く見出せない残念なものだった。彼らのことを、
天性の博愛主義者のように思っていた私は、あの漫才が長く売れない芸人生活のなかから、
苦心の末生まれたものだという事実にある意味ショックを受けたのだったが、それでも
やはり、職業柄、他人から嫌な思いをさせられることだって多々あっただろう日々の先に、
「人が好きだ」という芸風に辿りついたのは、彼らの人となりによって成された技なのだと
考えると、「みんな頑張ってる」という感慨が呼び起こされずにはいられず、自身も
いじけてはいられないと思ったのだった。

雪沼とその周辺の住民は、そんなことを思わせてくれる。
幸せなんて、自分が幸せだと思うだけで、いくらでもあふれてきて、人生は具体的に
起こる事象とは関係なしに、考え方ひとつでどうにでも変えられるのだ。
隣の芝が青く見えたとき、この本を手にとってみられてはいかがだろうか。
5.0 「雪沼」に共に住みたい
「雪沼」という小さな街に住む人たちの、それぞれの一時を捉えた珠玉の連作短編集です。
全体を通して振り返れば、そこには「雪沼」の静寂と安寧があります。でも、それぞれの短編の中では、その主人公にとって、火花の散るような大きな一瞬です。
「雪沼」という雰囲気の中で、それぞれの主人公たちは誠実に生きています。そこにある何ともいえない優しさの中に抱かれたような生活に、読者を捕らえてゆきます。それは、主人公に共感するというのとは違います。「雪沼」に没入するのです。
こんな素晴らしい土地があれば、実際に住んで見たいと思います。
いつか精神的に辛くなったら、改めて読んで見たいと思います。
5.0 初めての感触
どこが面白いのか分からない、だけど面白い。そんな微妙な感覚が楽しめるようになった自分は少し成長出来たと言う事でしょうか。
こんなにメッセージ性を押さえていて、暑苦しさが全くない筆致なのに、何故か“哀”しく流れ込んでくる趣。リアリティが有りすぎて怖いくらい。なのに舞台は架空の土地。
“雪沼とはどこにあるのだろう?”
無いと分かっているのに考えてしまう、また無いからこそ逆にこの中に描かれた住民性が疑いなく綺麗に映る。

そして主人公に『さん』を付けている事。読み方によっては、出てくることのない主人公の主観によって描かれているような不思議な読み方が出来る。そうすると“『主役』のいない物語”という風味になり、益々タイトルのニュアンスが引き立つ。うまく言えませんが…。(恐らくこれは私の勘違いな読み方で著者の思惑には全く含まれていないと思います……)
こんなに淡々としているのに退屈しなかったのは何故だろう?…本当に不思議な本です。
4.0 心地よい刺激に満ちた作品集
この二百頁に満たない小品集は、
≪雪沼≫という土地での生活を描いたものです。
この哀感ある地名は存在しませんが、
土地に暮らす人々の生活の一片を垣間見ると、
巻末の池澤夏樹の解説にあるように、
雪沼で生活しているかのように思えるのが、
淡白ながらするりと作品に引き込む文章の魅力なのです。

さりげない生活の中にさりげない奇跡を織り込んでいる分、
そこに派手さはなく、退屈ととられるかもしれません。

ですが、
最後の一投にかけるスリル、
失われたものへ向ける悲しみ、
ささやかな誇りへの英雄譚、
大切なものが壊れる瞬間、
など、小粒でもピリリとした刺激に満ちた秀作ばかりです。

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