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十一月の扉 (新潮文庫)

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十一月の扉 (新潮文庫)の商品レビュー

5.0 大きな贈り物を受け取って、胸にともった小さな光
物語は、父親の仕事の都合で転勤することになった主人公の中学生の爽子が、行くのを引き伸ばすことを決めて家族と離れ、双眼鏡で見つけた素敵な白い家…十一月荘に下宿をするところから始まります。下宿といっても、十一月荘はなんだかハイカラなシェアハウスといった趣で中学生でこんな生活ができるなんて、思わずいいないいなと思ってしまうような環境です。彼女は、十一月荘に住むさまざまな年代、さまざまな生き方をしてきている女性たちとの穏やかでやさしい距離のある生活の中で、美しいドードー鳥のノートに秘密の物語を打ち明けながら、ちょっぴりけむたいお母さんとの関係や自分自身とのお付き合いを始めていくのですが…。



 十一月の扉は、わたしが読んだ前二作と比べると、さわやかな日常の現実世界にある過渡期を描いた作品で、他の作品のような怒涛のドラマティックさというのははひかえめですが、最後まで読むと気持ちが暖かくなって、止まっていたことから一歩踏み出せそうになるような…そんな本でした。
 わたしが好きな場面は、爽子が現実で起こるいやなことを物語の中に組み込んではあれこれと考えていくことと、家主である女性が十一月荘をある夢のために建て、けれども変化を受け止めていくところ、それから爽子のお母さんが爽子の知らないところで「何もしない人」から羽ばたいていくのを爽子が身勝手だと怒るところと続き、…です。行くのを引き伸ばした爽子が十一月荘で新しい環境を手にするのと同時に、先に行った家族が獲得していく生活からの疎外感を感じる場面とその続きも好きです。もう…好きなところばかりで困ってしまいます。また、文庫の解説(注:別の方が書いている)も物語の続きのようで楽しみながら読みました。どこからが物語でどこからがそうじゃないのかがあいまいであることの素敵さ、とでもいったらよいのでしょうか。こういう遊びはわたしは大好き。もちろん作者が異なるので、はじめには読まないほうがよいと思いますが。高楼さんの本の中では十一月の扉は唯一の文庫なので、はじめのいっぽにおすすめです。
4.0 あぁー表紙が…
他の方のレビューにもありましたが、表紙の変更はちょっと残念です。
タイトルと表紙の家が、何とも気になるもんですから。 いい雰囲気よ、そのままで!と言いたいです。
5.0 愛しい日常
清々しくて、きらきらした青春小説です。
素直で凛とした爽子が素敵。
大事件が起きるわけでもない日常を淡々とつづり、その中で成長していくという
物語です。梨木香歩さんの「からくりからくさ」と似てるかな。
そういうのがお好きな方は、ぜひ。

実は昔、一度手に取ったのですが、面白くなさそうで、やめました。(笑)
でも今読んでみたら、面白いこと。
読み手にとっての旬って、あるのですね。
2.0 オチのない理想郷の物語
中盤まではアレックスガーランド作「ビーチ」を連想させる展開である。
だが読み終えてみればオチはない。
この作品は少女が延々と理想郷に浸る話である。
現実的な問題を取り扱う題材には、必ず理想と現実の両面があるものだ。
しかし舞台となる十一月荘にはそうした心理描写は皆無である。
どちらかといえば啓蒙に近い。終盤は(作者の)理想郷が断言口調でつづられている。

「十一月荘が私を変える。私の行動が人々を変えた。他人とは違う生き方をするべき」

真っ当に生きる人間は人生の転機を逃している・・・。
これが少女のセリフではなく、物語の筋書きとして語れている。
どう捉えるかは読者次第。私はこれが高度なブラックユーモアであると思えた。
物語に同意してしまう人間を嘲笑うかのようなブラックユーモアである。
4.0 表紙と挿絵
毎年、十一月になると必ず読み返します。

ただ…この文庫版の表紙にはショックを受けてしまいました。
出来ることなら、オリジナル(単行本版)と同じく、
十一月荘の絵の描かれた表紙のままにして欲しかった。
この文庫版の最後に収録されている斎藤惇夫さんの‘耿介からの手紙’の中で、
表紙の絵(←単行本版の)について触れている箇所があるので、尚更そう感じました。

また、単行本版ではあったはずの挿絵も無くなっていて残念。


再販の際には、
表紙+挿絵を単行本版と同じにして頂きたいな…。





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