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ニッポニアニッポン (新潮文庫)

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ニッポニアニッポン (新潮文庫)の商品レビュー

2.0 同テーマの先行作品にははるかに劣る
この本単体、として考えれば決して悪い作品じゃない。力のある著者だろうとも思う。
もし、似たような先行作品がなかったら鴇に名前が似てるから、自分を稀有な存在と誇るひッキーのストーカー主人公が鴇奪還し殺そうとするって設定はあっぱれだったと思う。でも、すでに先行作品に(著者自身意識しているように)金閣の美に魅入られて、焼失せしめんとする三島由紀夫金閣寺という作品がこの作品の数十倍の筆力をもって、注意深く力ある流麗な筆致と心理描写で読み継がれている中で、今さらこんなことを書く意味がどこにあるのか解せない。
仮に、同じモチーフで、ひきこもりとか現代的モチーフを用いていることが評価に値するという意見があるとしたら、村上龍の「共生虫」のほうがはるかに上手。こうしたすぐれた先行作を意識したにしてはあまりに無防備で、筆力に書くと思います。
3.0 タクシードライバーみたいです
主人公の壊れていきかたが、スコセッシの『タクシードライバー』に似ていると思った。
ロバート・デ・ニーロほどの魅力は、主人公にはないけれど。
少年の内面の描き方はステレオタイプで新鮮味がない。
トキと天皇制と絡めて描くのも、安易過ぎる。
もう少しひねって欲しかった。
最後のシーンに向かっていく描写にはエネルギーを感じられたし、
一気に読めた。そこは評価したい。
 
やたら難解な漢字がでてくるのは読みにくいし(パソコンで書くと簡単に変換してくれるからって、やりすぎな感じだ)、
作者の知的コンプレックスが見えてくる様で、
見苦しかった。




4.0 誇大妄想の男の話
片思いの相手への猛烈な恋慕の情を押さえきれず、ストーキングを繰り返したあげく家に侵入
し日記を盗み見て、それらすべてのことを「彼女を守るため」の自分の使命ということにすり替えた
り、たまさか苗字に「鴇(トキ)」という字が含まれていたために、佐渡で国によって生育さ
れている鴇と、自分が宿命的なつながりがあると思いこみ、「解放」あるいは「密殺」を企て
ようとする超ド級の勘違い野郎の小説。

社会から疎外された孤独な男が国家を揺るがす大事件を企てるという小説には他に、作家自身
が言っているとおり三島由紀夫『金閣寺』があるが、僕はそれよりもマーティン・スコセッシ
の映画『タクシードライバー』を思い出した。あの作品でも、孤独な主人公に二人の女性が関
わってくる(クライマックスで主人公が助ける少女は実はジョディー・フォスター)。しかし、
それらと同様のモチーフにおいても、この作品では滑稽でかつもの悲しく書かれている。

異常な切迫感にせき立てられながら計画の実行へとつき進んでいく主人公「春生」の描写は面
白いのだが、それ以上にそこまでに思い詰めていたその計画への熱意が、些細なことで揺らい
でいくことのもの悲しさが、さらに笑える。
春生はトキのユウユウに子どもが生まれたというニュースを知り、それまでシンパシーを感じ
ていた彼に怒りを覚える。童貞の自分とは違い、毎日ユウユウはメスと交尾に励んでいたから
である。動物にそこで嫉妬するな(笑)

『ニッポニアニッポン問題の最終解決』という大それたネーミングの計画は、徐々に化けの皮
がはがれ、結局実は、初恋の相手に変態扱いされた「人生に大逆転劇を起こす」という、あま
りにも陳腐な願いを叶えることが目的だったのである。
そのほかにも、社会に対して(勝手に)抱く疎外感や、過剰な自己顕示欲にまみれた彼の性格
は、今風に言えば要するに「中二病」なのである。

計画実行の顛末にしかり、こういう「最後のところで折れてしまうのね」という弱い男の性み
たいなものは、個人的には嫌いではない。
5.0 代表作と言える
デビュー作の『アメリカの夜』と本作でもって阿部和重は記憶されるのではないか。その言及対象や構図や時代性を抜きにしても、過渡期の少年の思想史として美しいと思う。
4.0 国家の抱える問題をあぶりだし。韜晦の技術。
この作品の発刊により、阿部和重が韜晦の技師であることは明らかになった。
概要・17歳の少年は、自分の名に「鴇」がある故に、トキへのシンパシーを感じている。
トキの解放または殺害を試みるために、ネットでサーチを行い、大量の情報を入手する。
そして、佐渡にあるトキ保護センターへ向かう、といった極めて単純なストーリーだ。

しかし、阿部和重の作品には小説としての面白みの他に、解読の面白みがある。
解説者が記述しているように、二人のヒロイン・本木桜と瀬川文緒の名前の由来は
カードキャプターさくらの木之本桜であるとか、おじゃ魔女ドレミの瀬川おんぷに由来するものだとか。
個人的な見解を述べると、阿部和重の面白みは「小説を読むだけ」には絶対ない。
隠された魅力を探し出すところにあるのだ。

また、解説者が「読みやすく、何度も読み返せる」といった文を書いているが、
僕はインディヴィジュアル・プロジェクションよりもハードな文体だと感じた。
この作品は文学を探求したいものしか、楽しめないのではなかろうか。
ただ単純に、小説で感動したい! なんて人には絶対にむかない。
阿部和重は常に読者を騙しているので、隠された魅力を突き止めていくところに、本当の意味があるのだ。
この作品は特にそういったものだ。
ただ単純に読むだけではなく、色々と視点を変更しながら、論理的に考えていくことに本当の魅力がある。
阿部和重の巧みな技術を解読することにより、絶頂の快楽が与えられる壮大な作品だ。
阿部和重は韜晦の技師である。

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