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外交敗戦―130億ドルは砂に消えた (新潮文庫)

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外交敗戦―130億ドルは砂に消えた (新潮文庫)の商品レビュー

4.0 専門家の目を通してだからこそ見える全体像
湾岸戦争の頃と言うのは、私が報道・政治討論番組を最も見ていた時期である。言わば、リアルタイムでことの経緯を追っていたはずなのだが、結局何も見えていなかったのだと、本書を読んだ後で強く感じた次第である。例えば、連日繰り広げられた国会論戦で、外務大臣が答弁にきゅうきゅうとしているシーンもショーとして見ていただけで、その裏の事情までに思いを至らすことは出来なかったのである。

湾岸戦争に限らず、10年後、20年後に専門家の目を通して当時を振り返ってみるのは、とても有意義なことだと思う。
5.0 ジャーナリズムの真骨頂
湾岸戦争を舞台にした日米同盟の混迷の本質を、丹念な取材に基づく圧倒的な
情報量と、読み手を惹き込む卓越した筆力で見事に描き切っている。
まさに、ジャーナリズムの真骨頂といえる作品でしょう。
湾岸戦争から20年近く経った現在でも、必読の1冊といえるでしょう。
4.0 “敗戦”に思わず涙する本
タイトルの意味するところが、読み進むうちに重くのしかかってくる、そんな迫力でした。

国土を侵食され、人命を奪われる、そんな悲惨な“敗戦”場面は、画面に映るイメージとしては、
実は見慣れたものかもしれません。
我々が、戦争反対をを唱えるのは、そうした表層的な印象からで、
実際の“敗戦”を知っている者は今の日本には、もうほとんどいないでしょう。

この本では、そんな“今の”日本が、国家としての尊厳,あるいは威信,自立の気概といったものが、
微塵にくだけていく“敗戦”が描かれてています。
湾岸戦争で日本が負った傷がどれほどのものか、本書を読むことで、初めて触れたような気がします。

綿密な取材に基づくものの、関係者から見れば“事実”とは異なるところもあるのかもしれません。
しかし、一貫した“敗戦”に向き合うという手嶋氏の姿勢が、この本の“凄み”となってでていると思います。

エンタテイメント以上のインパクトの大きい、お勧めの本です。
3.0 手嶋氏の国籍はアメリカなのか ?
元NHKワシントン支局長の著者が、湾岸戦争を通して日本の危機管理能力及び外交センスの欠如を豊富な取材を基にして克明に描いたもの。著者の経歴と人脈が活きている。

湾岸戦争開始直前のホワイトハウスの描写から始まり、アメリカ、日本、サウジアラビア等の関係者の様子が「まるで見てきたかのように」描かれる。その迫真性は確かなもので、一般人には知り得ない事項も盛り込まれているので興味深い。「湾岸戦争とは何だったのか」をもう一度冷静に振る返るのにも役立つ。しかし結局、著者の主張はイラクの人質となったある日本人の「現在のような日和見的なご都合主義外交はインディペンダントな国の外交とはいえず、...」と言う"遺言"中の言葉に尽きるのではないか。私もこの考え方自身は賛成なのだが、果たして湾岸戦争においてアメリカに"いち早く自主的に"追随する事が自立国家の外交方針として適切だったのか相当に疑問である。アメリカナイズされた著者の頭の中には「金を出す=「汗を掻く」事ではない」という図式が出来上がってしまっている。勿論、日本が巨額の負担金を拠出する裏では多くの日本人が「汗を流して」いるのだ。「外交敗戦」とは本来この事実を世界に認めさせる事が出来なかった事を指すべきだろう。この観点を欠いているので、物語が単に時間軸に沿った事象の羅列にしか見えないのである。拠出金の多寡と貢献度の関連性を云々しても本質を外れるだけである。官僚の体質批判も聞き飽きている。

ただし、クウェートが日本を映す鏡である事は肝に銘じる必要があろう。軍事力を持たない金満国家が有事の際、如何に脆いか本書は雄弁に語っている。この教訓は活かすべきである。
2.0 何故に☆2つなのか・・・
 開戦前のスコウクロフト将軍(国家安全保障担当大統領補佐官)と瀬島龍三との会談や橋本龍太郎大蔵大臣(当時)の分担金額の交渉の場面の記述に関しては、唯一と評価できる箇所です。

 筆者は『この戦争をくぐりぬけた日本という国の生きざま』を描いたと自画自賛していますが、情報源が一元的であまりにも偏りすぎている印象を受けました。とにかく外交官を持ち上げすぎ。開戦時イランで大活躍したインテリジェンスも手前味噌の手柄話のオンパレードでもういい加減にしてくれ!と心中叫びながら読み進めていきました。

 3章以降、外務省の立場からのみの語られており、失態は当時事務次官の栗山尚一にすべて負わされスケープゴートにされています。その他の外交官は何の責めも受けずヒーロー視されている点からも、筆者の目線が本書全体の価値を損ねているように感じました。栗山次官もどうかとは思いましたがそこまで悪者にするかぁといった感があり、かといって栗山次官の取材を十分にしているとは思われず(少なくともインタビューはしていない)、全般にわたって外務省の一部の意思が感じられました。

 大蔵省(当時)との確執も外務省側に思いっきり偏っています。外務省の言い分を一方的に支持して、大蔵省を第二次大戦時の軍部に見立てて二元外交を批判する点はそこまで言うか!ほとんど外務省の広報本です。

 ノンフィクションを読むに当たっては、筆者が直接取材をし、なおかつその事実関係を精査した上で価値観を付加した結果として受け入れます。それだからこそ同じ対象を取材したノンフィクションでも優劣が歴然と出てしまいます。本作に振り返ると、外交官の証言は丸呑みで匿名の「外務省国際情報局の幹部」の推測まで事実に紛れて飛び出すくだりは、タブロイド夕刊紙を思わせる点で瑕疵の多いノンフィクションと言わざるを得ません。残念。

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