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白痴 (上巻) (新潮文庫)の商品レビュー これぞ小説!
「無条件に美しい人を描こうとした大作」だとか「ムイシュキン公爵、ロゴージン、ナスターシャ・フィリポヴナ、アグラーヤの悲恋の物語」だとか。もっともらしい「テーマ」や「あらすじ」といわれる安直な矮小化を笑い飛ばす傑作です。 ロシアと言ふ風車−−ムイシュキンにとってロシアとは何であったのか?
この小説は、ぺテルブルグに向かふ鉄道の場面から始まる。トルストイの『アンナ・カレーニナ』においても、アンナとヴロンスキーが出会ったのは駅であったが、この小説も、登場人物たちは、鉄道を介して出会ふ。これは、当時のロシアとヨーロッパにおいて、鉄道が社会を大きく変えて居た事を映して居る。現代の社会で、携帯電話が人間関係を大きく変えた様に、この時代には、鉄道が、男女の関係を含めた人間関係を大きく変えつつあったのである。その鉄道によって、西欧が、ロシア人にとって、近い物に成った事が、この小説の背景として、決定的に重要な事だと、私は思ふ。ムイシュキンは、ロシア人でありながら、スイスで成長した。彼は、ロシアに夢を抱いて帰国するが、それは、頂度、ドン・キホーテが騎士道に夢想を抱いて旅に出たのに似て居て、ロシアは、ムイシュキンにとっての風車であったと言ふ事も出来る。そのロシアに夢を抱いて帰国したムイシュキンが、ロシアで、その夢を裏切られると言ふのが、この物語の核心である事にもっと注目する必要が有ると、私は思ふ。 難しく読む必要はない
ほとんどの評論家はドストエフスキーを難解な教養主義的な作家であると言うが、私はそうは思わない。ドストエフスキー作品の面白さは登場人物のもの凄さなのである。この作品も、ムィシキン、ナスターシヤ、ロゴージンという3人の魅力的な人間が登場する。「同情する人」ムィシキン、「けがれた女と自分を呪う」ナスターシヤ、「暗い激しい執念をもった」ロゴージン、この人物達の存在感の大きさはすごい。小説の主題ばかりを考えても本当のおもしろさは解らない。人間の不可解さ、存在の不条理を登場人物を通していかにして描くかであると思う。「白痴」を宗教的に読む必要は全くない。他の作品同様、たっぷりとドストエフスキー的人間たちに会えるだけで十分である。 魂の純粋さへの追求
ドストエフスキーの代表作の一つ。主人公ムイシュキン公爵は全くの無垢な人物。彼が周囲の人間の思惑によって精神的に冒され、一度は復活するが、最後には結局この世から逃避せざるを得ない姿を通じて、人間世界の様々な醜さ、欲望、自己保身などを描いたもの。ムイシュキン公爵はそれらを映し出す鏡なのである。 ドラマティックな内的悲劇
肉欲の嵐を描きながら、読後、言い知れぬ気品に心うたれるというようなことを、訳者が後書きに書いていた。そのとおりだと思う。かの埴谷雄高がドストエフスキーのなかで、一番好きな作品に挙げていた。 本の最新売り上げランキング - トップ10
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