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悪霊 (上巻) (新潮文庫)

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悪霊 (上巻) (新潮文庫)の商品レビュー

5.0 読みづらいけど、深い
読み物としてなら人気作家の現代小説の方が、読み易いし、物語も面白いと思うが、本書の読後感には非常に深い物を感じる。個人的には、スタブローギン、シャートフ、キリーロフの言葉の中にも、ドストエフスキーの深淵を感じた。特にスタブローギンはこの上ない非道の様に語られることが多いが、誰しも彼のような側面を持つのではないかという皮肉めいたメッセージを込めているのではないか。ドストエフスキーはかなり以前に『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』『地下室の手記』、最近『死の家の記録』を読んだが、最も読んで良かったと思えた。数年後にまた読み返したいと思う。
2.0 まだ下巻は読んでいない。
下巻をまだ読んでいない、すなわち、今後の展開をまったく知らないという状態でこのレビューを書いています。
・・・・・・・・・・・難しい!
上巻は下巻のための基礎工事という位置付けなのか、正直、読みにくいです。さまざまな、そしてどうにも奇天烈な登場人物たちのエピソードから人格・立場・関係を把握するのに骨が折れます。会話中に突然、Aは気絶したり、Bは何の脈絡もなくCを殴りつけたり・・といった具合で、「なんだなんだ??」という箇所が何カ所かあります。「罪と罰」以上に難解であり、1回読んだだけでは理解しがたい本なのかもしれません。
「罪と罰」も下巻で一気にキタので、期待しつつ・・。
5.0 ドストエフスキー的人間たち
1869年にモスクワで起きた過激派グループ内の殺害事件を素材とした、革命家たちの悲劇の物語である。
グループのメンバーであるスタブローギン(地方都市の富裕な地主の息子)とシャートフ(かつてスタブローギン家の農奴だった男の息子)は元大学教授ステパンから小さい時家庭教師として教育を受けた。メンバーの頭格のピョートル 
はステパンの息子である。この三人の対照的な青年を中心に事件は起きる。ドストエフスキーの人物描写は徹底して戯画的で滑稽である。すべてが喜劇的でさえある。あまりの皮肉っぽい書き方にうんざりするほどである。しかし、滑稽であればあるだけより悲劇的になるのである。ただマリヤ(足が悪く,半ば気が狂っているスタブローギンの妻)だけには真摯な眼差しが感じられる。スタブローギンは「偽者」であり、残された道は自己否定(自殺)だった。
5.0 解釈の多様性
意外にあまり指摘されていないのだが、この小説、特にスタヴローギンに関する解釈は余りに多様で、定まっていない。

スタヴローギンはサタンの象徴だと言う人もいれば、真逆にキリストの象徴だと言う人もいるのである。
ここでただ共通しているのは、かつてのスタヴローギンは善悪美醜を『超越した』超人であるが、のちに彼は善悪美醜を『喪失した』偽者になるということくらいである。

とにかく、多くの内部矛盾を抱いた彼は世界で最も深刻な人間像にふさわしく、この小説が、読む人によってはカラマーゾフを越える傑作に思われることは間違いないと思う。

読むならぜひさまざまな解釈本もあわせて読んで欲しい。きっと本書がドストで最も難解と言われる理由がわかると思う。
5.0 珍しくも思想性が前面に
ドストエフスキーの代表作の一つ。彼の作品は深遠な思想を秘めながらも、雄大な構想・ストーリー展開、そして独特の語り口で読者を物語に引き込む点が特徴であるが、本作は思想性を前面に押し出した珍しい作品。ドストエフスキー自身が語っているように、当時の共産主義運動の中に危うさを感じ、それが将来のロシアの混乱を招く事を危惧して(この予見は当ってしまう)、警鐘を鳴らす意味で敢えて意見をストレートに出したもの。

主人公は、ドストエフスキーの作品の中ではスヴィドロガイロフと並ぶ悪漢役スタヴローギン。「悪霊」は彼自身とも言えるし、共産主義を指しているとも言える。もう一人の主人公ピョートルは一般大衆の代表で、一般人が容易に回りの意見・思想に染まってしまう危険性を体現している。スタヴローギンはドストエフスキーが作品中で良く用いるアンチ・キリスト的な超人思想の持ち主。超人なので人を人とも思っていない。「罪と罰」ではラスコーリニコフは殺人を犯す事によって、超人から唯の人へと引き戻され、最終的には魂の救済を受けるのだが、スタヴローギンは魂の救済など無縁である。こうした人物が共産主義の主導者になった時の恐怖をこれでもかと描くのだが、上述の通り、歴史はその通りになってしまうのである。

本作はドストエフスキーが作品の物語性を捨てて、共産主義運動の危険、その行方に待っているものの恐怖を予見した文学史上の傑作。

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