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ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

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ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)の解説

   1953年に出版されたサリンジャーの自選短篇集。「グラース家の物語」の発端となるシーモアが登場する「A Perfect Day for Bananafish」、WASP中心のアメリカ社会で助けあいながら生きていくユダヤ人親子を描いた「Down at the Dinghy」、男女の不倫を描いた「Pretty Mouth and Green my Eyes」など、9つの作品が収められている。中には、ドイツ製のルガー拳銃の性能を証明するために、ヒヨコの頭を撃ち抜いたヘミングウェイの残忍性を風刺して書かれたといわれている、次のような作品もある。
ノルマンディー上陸作戦に向けて3週間続いた特殊訓練を終えたX軍曹は、喫茶店で1人の少女に声をかけられる。先ほど教会の児童合唱隊で、ひときわ美しい声で歌っていた少女だ。さびしそうにしていたから声をかけてみたと言う少女と、彼はつかの間の平穏なときを過ごす…。やがて戦争は終わるが、X軍曹は心身ともに深い傷を負う。ある日、彼は手元にあった小包を開く。中にはあのときの少女からの手紙と、彼女の父親の形見である腕時計が入っていた。2人が共に過ごした時間は、長い人生においてはほんの一瞬のできごとに過ぎない。それでも、少女の手紙には、彼に安堵の眠りと魂の救済をもたらす不思議な力があった。(「For Esme-with Love and Squalor」)

   発表以来、精神分析や東洋思想などの立場から、さまざまな文学的解釈がなされている短篇集であるが、読み物としても十分おもしろい。何年かたってから読み直せば、以前は見えなかったものが見えてくるような、味わい深い作品である。(小川朋子)

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)の商品レビュー

5.0 まさにアメリカ文学の良心を凝縮したような珠玉の短編集
「ライ麦畑でつかまえて」で日本でも有名なJ.D.サリンジャーの自選短編集。「ライ麦...」は私が高校生の頃、若者のバイブルとして読まれたものだが、本作も同じ香りが漂って来る。ベトナム戦争のドロ沼化による厭戦(世)気分、それに伴い夢・希望を見失った若者の苦悩と喪失感、ベトナム帰りの青年の精神的瓦解。これらの背景を知らないと、各編の意図が分かり難いと思う。冒頭の「バナナフィッシュにうってつけの日」における青年の行動がまさに典型である。

各編を貫くのは、戦争・暴力の否定であり、当時の社会の中で生きる若者や世の中に馴染めない人達への応援歌である。ただし、素直なストーリーは少なく、読者を突き放した書き方をしているので、チョット取っ付きにくいかもしれない。(武闘派の)ヘミングウェイを揶揄した箇所が多いのは、個人的な悪感情か ? その中で「笑う男」は荒唐無稽な創話が現実に影を落とすストーリー・テリングの巧みさが光る。次編「小舟のほとりで」と共に、作者が子供に暖かい眼差しを注いでいる事が窺える。「エズミに捧ぐ」は冒頭の結婚式への招待状から、それに繋がる過去のある一日の甘酸っぱい回想、そして主題に移る構成が作者の意匠を明言しているかのよう。「愛らしき口もと目は緑」は電話での会話だけで構成した皮肉な内容の作品だが、電話相手が元軍人である事を明示している点に注意したい。「ド・ド−ミエ=スミスの青の時代」は「ライ麦...」を想起させる伸びやかな筆致の作品。「テディ」は天才少年を通じて東洋的輪廻思想を語った不思議な作品。

まさにアメリカ文学の良心を凝縮したような珠玉の短編集。
4.0 まるでガラス細工
著者の作品は、微妙なバランスの上で、かろうじて平衡が保たれている、ガラス細工の様なものだと感じる。
会話部分は、繰り返しが多く、くどい印象もあるが、これが、文章にリズムを吹き込んでいる。

また、精神に問題のある人物が、しばしば登場する。
そのため、解釈困難な内容が、かなり盛り込まれている。

それでも、作品としての平衡を保っている、という、不思議な魅力がある。
しかも、ある意味、刺激的でもある。

この翻訳も巧みであるが、おそらく、原文で読むと、もっと魅力を実感出来るのでは?と思う。
幸い、講談社英語文庫から、安価な原書版も出版されているので、こちらの方にも、興味がわいてきた。

本書は、暇潰しのために読むには、少々不向きだ。
じっくりと、味わうべき作品群だ。
5.0 野崎孝という訳者
perfect day for bananafishを『バナナフィッシュにうってつけの日』と訳
してしまう野崎さんの能力に感嘆しきりですが、過去には『バナナ魚日和』なんてい
う、まるで小津安二郎の映画のタイトルかと思わせる名訳もあったのには、ますます
驚きです。
5.0 切り取られた「永遠の思春期」
サリンジャーは「ライ麦」の方を先に読んでいて
後にこちらを読んだのですが。面白かったです。

結局サリンジャーの描きたいことは、
「登場人物達はみんな混乱していて、暴言を吐いて、乱暴になっているけれどそれは
この登場人物たちが、心がきれいで繊細で壊れやすいゆえの事なのだ」
ということだと思う。
10代で読んでいたらここに自分をいくつも見つけてかけがえのない本になっていた可能性もある。あいにく僕が読んだのは20代になってから。。。そうはならなかった。
ただいろんな事に「クソッ!!」って思う気持ちは今もあるけどネ。

ロック的だと思います。ニルヴァーナなんか好きな子達にもすすめたい。
5.0 9つの物語
あとがきで訳者の野崎氏が言及されているように、この短編集では多くの子供たちが登場する。
そして、僕は、サリンジャーは子供という存在を描くのが抜群に上手いと思う。
サリンジャーの描く子供、それは、ただ幼く無垢なだけの存在ではない。
幼いながらも、そこに大人顔負けの哲学性を持った存在として描かれている。でも、それを幻想的だとは思うけど、虚構だとは思わない。
というより、思わせないリアリティがサリンジャーの小説にはある。
また、サリンジャーはあたかも絵を描くかのように、小説を書く人だと思う。
そう感じてしまうのは、場面転換の描写があまりないせいだと思うけど、それでよけいに幻想的に思えてしまう。
今はもう隠遁してしまっているようですが(シド・バレットみたいにいきなり訃報が届くのはやめてくれ!)、どうかもう一度筆をとってほしいものです。

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