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変身 (新潮文庫)

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変身 (新潮文庫)の商品レビュー

5.0 悪夢の始まりと、終わり
 本書を初めて読んだ頃から、今日に至るまで私はひたすら想像した、毒虫とは何だろうか、と。強大なゴキブリを想像することは出来ても、ムカデは怖くて想像出来ない。そう考える、その時に悪夢は始まっている。
 短い作品なので何度か読み返した。
 中学生だった私は、毒虫をカメムシのような無のものと想像した。しかし違うとも思った。むしろゴキブリをイメージした。ただゴキブリが大嫌いだったからだ。
 私の想像は、私自身の中にある悪夢をひたすら探す。
 そして悪夢の中に浸って行く。読み始めたら読者は主人公を人として認識しているはずなのだが、次第に人では無く悪夢そのものに醜悪に変わって行く。
 読み返す度に新しい悪夢が始まり、読了する度に、悪夢から覚めたときの嫌な感じが残る。
 しかもまた読み直して見たいと思わせる中毒性のある性(たち)の悪い夢だ。
 
4.0 非常に読みやすかった
有名というだけで何気なく読み始めた本書。内容的には暗いグロテスクなものですが、何もかもがさらりと書かれているせいか非常に読みやすかったです。

私は根っからの理系人間なので、何をどう解釈してよいやら…という感じで、この本が有名な訳もよくわかりませんが、自分の身の回りにあてはめてみたときに色々と考えさせられました。

特に感じたのは「思いやり」の大切さ。登場人物皆の身勝手さに目が行ったのは、最近立て続けに育児関連の本を読んでいたせいかも知れませんが…。
5.0 理解に教養が必要な本
この作品を私は、学校内で強制的に書かされる読書感想文のため、推薦図書として頻繁に目にした。
今となっては無数に存在する解釈も納得できるし、自分なりに理解もできる。 ただ、はっきり言ってまだ「殺那的」に生きている学生の時期に、この作品を理解できる者がどの程度いるのだとも思う。
作品をそのまま解釈するだけではSF的駄小説。深い理解を得ようとして、はじめて一級品の作品となる。 素晴らしい作品だと思うけれど、これが何らかの形で理解できてしまう学生は若さがなくて嫌だなぁ、なんて思ったりもする。

5.0 メタモルフォーゼされた、イエス・キリスト。
 以下書くことは、人から聞いた話である。
 グレゴール・ザムザはなぜ、毒虫にならなければならなかったのか。
 彼は一家を養っていた。グレゴールからしたら、養っている家族のほうが、お邪魔虫であり、寄生虫のようなものであったはずだ。彼には罪はなかった。罪があるとすれば、家族を邪魔者と、――たとえそれが潜在意識の中でしかなかったとしても、――考えてしまっていたこと、かもしれない。グレゴールは、自分の意志とは無関係に、結果的に、家族を救った、と言える。ひたすら養われていた一方だった彼らは、いわば、生ける屍のようなものだった。グレゴールの死により、彼らは、息を吹き返した。本当に、生きはじめることが出来た。聖書の言葉を借りれば、一粒の麦が地に落ちて、多くの実を結んだのである。そう、グレゴールは、メタモルフォーゼされた、イエス・キリストなのだ。
 以下は、私が考えたことである。
 誰かに養われる、というのは、後ろめたい気持ちが伴う。グレゴールには、家族が抱いていた、そんな後ろめたさを察する優しさが必要だったのではないか。彼にその優しさがあったならば、彼は毒虫にもならず、死なずにすんだかも知れない。家族全員、助け合って生きていく道も開けたかもしれない。当たり前のことだけれど、私たちは、一人では生きていけない。迷惑を掛け合いながら、お互い助け合っていかなければ、生きる道は開けない。カフカ自身は、こんな、お説教くさいことを言いたかったわけではあるまい。ただ、生まれてこの方、迷惑をかけっぱなしの私は、そんな風に考えさせられたまでの話である。
 以下は、私の戯言である。
 九頭見和夫氏は、本作「変身」と太宰治の短篇小説「花火」とを比較し、太宰が「変身」を翻案し、「花火」を創作した可能性がある、と指摘している。「変身」を「花火」に〈変身〉させてしまった太宰。〈変身〉。太宰は、〈変身〉願望を根強く持っていた、と私は思う。町田康さんは、人の肉体を〈宿〉にたとえ、不滅の〈魂〉が、〈宿〉から〈宿〉へ泊り歩く寓話を、「宿屋めぐり」に書いた。太宰の人生そのものが、〈宿屋めぐり〉だったのではないか、と私は考えている。
 太宰の創作した作品が〈宿〉であり、太宰の〈魂〉は作品という名の〈宿〉から〈宿〉へと旅を続けていったのではないか。芭蕉が、〈旅人〉と呼ばれんとして、つまりは、名もない〈旅人〉と呼ばれんとして、漂泊の旅を続けたように。それは、〈自分〉を〈他人〉へと、一歩、また一歩、と近づける努力である。それは、彼が究極のモットーとした、〈己を愛するがごとく、汝の隣人を愛せ〉に通ずる努力だった、と私は思いたい。私の文章は、まったく、論理的でないかもしれない。しかし、人は、論理だけで生きているわけではない。盗人にも三分の理、という。私にあるのは、どうやら、これだけらしい。
4.0 内容重たすぎ…
朝起きるとザムザ君が虫になってるという、言わずと知れたカフカの代表作。さまざまな解釈があると思いますが、僕は他の作品同様テーマは『孤独』や『疎外』だと思います。ある心境に達するともはや人間は虫になってしまうといったかんじでしょうか。短いですがとても深い内容で、何度読んでも飽きません。しかし、いくらなんでもザムザは可哀想です。虫になったことではありません。一家を支えていたザムザが邪魔者となり慕っていた妹にも見捨てられ、孤独の内に死に、一家は再出発の希望を抱く。ある種の効力を発揮していた者も、不要になると捨てられてしまう、なんだかホッカイロみたいな扱いです。しかも僕の大好きなカフカ特有の無駄な長台詞や比喩、シュールな展開(出だしは死ぬほどシュールですが)がほとんど無いので、☆4つにしました。

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