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隠蔽捜査

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隠蔽捜査の商品レビュー

5.0 エリートだが、スーパースターではない警察官僚
警察官僚の竜崎に、公私に起こった事件について、どう対応するのか?

ミステリーではない。
だから、犯人探しが目的ではない。

また、主人公の竜崎は、警察庁の警視長というエリートだが、スーパースターではない。
組織防衛を優先して、自分の出世を優先する。
そのため、家庭をまったく顧みない。

竜崎の”正義”と思うことが、結果として、周りを幸せにするとは限らない。
それでも、彼はそれを突き通すのか?
それとも、周りの幸せを考え、自分の信念を曲げるのか?

アクション性はまったくないが、わくわくする作品だ。




3.0 エリートキャリアを主人公に据えた、異色警察官僚小説
’05年、「このミステリーがすごい!」国内編第20位にランクインした吉川英治文学新人賞受賞作。

竜崎伸也警視長は、46才。警察庁長官官房の総務課長をつとめる、いわゆるエリートキャリアだ。物語の前半では、かなり毛色の変わったコチコチの人物のように描かれる。

都内と近郊で起きた3件の殺人事件。被害者はいずれも少年時代に凶悪な事件を起こしながら、法律に守られ短い刑期で社会復帰してきた者ばかりだった。
彼はマスコミ対策に遺漏の無い様に事件の推移を見守っていたが、犯行の間隔から現職警察官の犯行ではないかと考える。捜査はその通りに進み、容疑者が特定され、ある警察官が自白するが、この警察組織を揺るがす大事件に、予測される警察批判を怖れた警察庁上層部の一部が、真相を隠蔽しようと動きはじめる。竜崎は断固これに反対する。

一方竜崎家でも問題が発生する。彼の息子がヘロインを使用していたのだ。もみ消すか、自首させるか、表ざたになれば自分の築き上げてきた地位も仕事も崩れ、娘の縁談もご破算になってしまう。迷った末に彼が選んだ道は・・・。

私たち庶民から見れば、鼻持ちならない超エリートだが、特権ある者は重い責務を負うということをモットーに、竜崎はすべてに原理原則で向きあい、正義を全うしようとする。

本書は、今までになかったキャリア官僚を主人公に据えた、警察という特殊な組織の中でのエリート官僚の動きを追った、異色警察官僚小説である。
5.0 組織の危機管理の事例として
主人公警察庁官僚、竜崎伸也の人物像が前半から丹念に描写され、
それが後半の山場に生きてくるのですが、もって行き方のうまさに好感が持てました。
作中の短い期間で主人公の結果の成否にかかわらず、何かを掴み成長する姿を描く
ストーリーは私の好きなテーマです。

本作のもうひとつのテーマは、巨大組織における危機管理にあると思います。
組織の危機に対しとかく、「大人の選択」や「清濁併せもつ対応」が官庁のみならず
民間にあっても取られがちな選択となっています。はたして正論が通じない
危機に際して私たちは世の中のほうが間違っていると言えるか?
どんな対応が正しいのか。どんな策を講じるにしても組織のコンセンサスと戦略が
ものを言います。本作ではそのひとつの答えが提示されていると思います。

単なる警察小説としてだけでなく、企業で何らかの責任を負っている方であれば、
自分の部署がどんな選択を取るべきかのひとつの事例として読んでおいて
損はない作品であると思います。
5.0 正しい官僚とは…?
 自らの意志で警察官僚を選び、できるだけ速やかな出世を望む主人公・竜崎。

 こう書くと保身に汲々とする軟弱な官僚っぽいが、彼にとっての出世とは、偉くなることでもなく給料が増えることでもなく、「権限が増えること」。権限が増えれば、自分の信じる正義を実践できる程度が増える。
 彼にとっての「エリート」とは、中世の貴族のようなもの。大きな権限を持つ故に大きな義務を負う。それ故、警察庁全体を揺るがす大きな「警察の不祥事」が発生すると、無かったことにしようとする上層部と彼は対立し、自らの正義を貫こうとする。

 上層部との対立、というのは警察小説によくある話だが、戦い方が違う。彼は「エリート」だ。やみくもに理想を振りかざすのではなく、入念な根回しやギリギリの取引きを駆使しながら、現実的に戦う。
 そんな竜崎を姑息で鼻持ちならないヤツと見るか、理想に忠実な戦略家と見るかは、読者によって違うと思う。ただ、キャリア組が事件とどう向きあい、何に葛藤を覚えるのか、それを知るだけでも面白い小説なのではないか。
5.0 エリートキャリアの警察小説。
吉川英治新人賞を受賞しているのも道理。よくできた長編警察小説だ。
警察小説といえば、古くは松本清張からずいぶん最近までノンキャリアの刑事(それも所轄)を主人公にしたものが多かった。
そこに警視庁の捜査課と所轄の対立うんぬんが導入され。
さらには、警察庁に属するキャリア警察官僚も登場するようになり。
キャリアの落ちこぼれを主人公にした「新宿鮫」の影響もあるだろう。
「踊る大捜査線」もそうだったし。
そこに事務方や監察官や女性警察官までを登場させてニュー警察小説と呼ばれたのが横山秀夫。
で、この「隠蔽捜査」は、エリート警察官僚小説なのだ。
主人公もそのライバルも上司も部下も、ぜーんぶキャリアのエリートばかり。
国家公務員上級甲試験とかT種とかの合格者。そういう特殊社会での推理小説なんですよね。そこが面白い。
国松警察庁長官狙撃事件で小杉巡査部長の自白を闇に葬られた事例を下敷きにしながら、驚嘆すべきストーリーが生まれていく。
結末も洗練されていて、カタルシス十分。
堅物で変人のエリートが変容していくあたりも読みどころ。

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