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インドの時代 豊かさと苦悩の幕開け

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インドの時代 豊かさと苦悩の幕開けの商品レビュー

5.0 渾身のルポ
経済発展によって急激に先進国の生活を手に入れた中産階級を実例で描き、精神的な空虚からもてはやされる癒しとしてのヒンドゥー教、その背景となる現代インド史とヒンドゥー・ナショナリズムの問題を考察する。

あとがきで筆者は相変わらず日本では「悠久のインド」か「貧しくとも目の輝きをもったインド人」というイメージで捉えられていることにうんざりし、インドをもっと多角的に捉える必要があると書いているが、ミクシィのインド関連コミュニティを見ながら同じことを思っていた私はこの本の切り口に全く共感した。

郊外にある豪華なクーラー付きマンションに住み、夫婦で共働きで子どもは受験勉強。週末は家族でショッピングモールにお買い物。日本人口を超える中産階級が、商業主義が作り出した高級な生活の「イメージを消費」しながらこうした生活に追いかけられている。

そこでヒンドゥー寺院や新興宗教に向かうインド中産階級が多いというのは、「無宗教」の日本とずいぶん様相を異にするものだと思った。信仰が息づいているしるしである。

しかしその信仰心がヒンドゥー・ナショナリズムを助長し、インド社会が掲げる他宗教の共存が危うくなっているのは良し悪しである。筆者は単一論的宗教(自分の信仰する宗教が絶対正しいという立場)から多一論的宗教(真理はひとつでありながら、そこに向かう道の多様性を認め合う立場)への転換を主張しているが、事態はそれほど容易ではない。

私もインドで多一論的な考え方を口にする中産階級によく出会ったが、そういう人は高等教育を受けて宗教を知性的に捉える人、あるいは社会のコードによる「イメージ」でものを語る人に見えた。ベジタリアンが増えているというのも、伝統的な信仰に支えられてではなく、健康面と社会的イメージアップの側面が強い。

一方、ヒンドゥー教を崇拝し身も心も捧げているような人には、その分他宗教を認めるのが難しい。そこにヒンドゥー至上主義が入り込む隙がある。イスラム教でも同じことが言える。

今後のインドは、宗教のモード化と信仰心の薄れによって変わっていくのではないだろうか。ちょうど教育基本法が論議され「宗教心の涵養」などが叫ばれる日本と規を一にしている。

このように問題解決の見通しなど楽観的に感じたものの、現代インドのルポルタージュとして非常に面白い。
1.0 航空会社の機内誌記事にふさわしい。
つい先日はじめてインドに出張に行き、表紙写真(カバーではなく)の
情景(高級マンションの前に広がる掘っ立て小屋群)に
ショックを受けた人間としては、広告と少しの家庭訪問を元に書かれた
「中間層」に関する分析にさしたる重要性を感じられない。
全体にテーマの統一性に欠けており、どこかの航空会社の機内誌にでも
書いた記事を集めたのかなと思ったが、そうでも無い様子。
旅行者のステレオタイプな感想を激しく非難するが、それとさして違わないのではないかと感じた。テーマの絞込み不足というか、企画の
失敗というか、インドブームに便乗した本というか、読んで残念でありました。
1.0 オヤジ週刊誌のインド特集
ヒンドゥー・ナショナリズムを非常に興味深く読んで著者には注目しているのですが
著作を重ねるたびに内容が薄まって行く感じがして残念です。

巻末でわざわざ「神秘の国インド」をステロタイプと切って捨てているのに
本作は「グローバル化の光と影」とこれ以上ない陳腐な内容に思わず苦笑しました。

「中国の次はインドだ」風のキャッチコピーに踊らされる層を相手に
生活の為に商売するのも大いに結構ですが初心を思い出してもらいたいと思うのです。
5.0 ひと味違うインドもの
98年10月から2年間バンガロールに駐在したのがきっかけでインドに興味をもつようになり、帰国後もインドものを多数読んでいますが、著者の前作「中村屋のボース」に感銘を受け、本書を購入しました。
期待に違わぬ内容で、前半でヒンドゥー教を中心に現状のインドを分析し、次にそこにいたる著者なりの歴史解釈を説明、最後に多一論的共生社会の実現を求めるストーリーの組立は見事である。
前半部で引用している広告を中心とした多数の写真は著者の主張を説得力あるものにしている。
最近インドブームに便乗した表層的な新聞記事や本が多いが、本書はひと味違う内容である。
5.0 現代のインドをまっすぐに捉えた好著
 日本人の抱くインドのイメージというのは、どこか片寄っている。片方で、ガンジス川の夕日、悠久の時、ガンジーや仏陀に象徴される精神性の高さ、その片方で、旅行に行けば必ずお腹を壊す国、貧しさと衛生状態の悪さといったマイナスイメージがつきまとう。最近では、それに加えてIT大国というイメージが加わって、果たしてインドは先進国並の近代国家なのかあるいはまだ発展途上の国なのか、もう1つとらえどころがない。

 私自身、インドのイメージを捉えきれていない。いつも行くムンバイのスラムの子どもたちのギリギリの生活と、毎回いくたびに劇的に携帯の数が増えているIT社会、昔ながらの食堂の食べ物のおいしさと、マクドナルドの画一的だが非常にインド的なモダンな店、いったい今のインドってどんな国なんだろう…

 中島岳志さんは、文化人類学のセオリーで研究を進めて来た方で、フィールドリサーチに優れている。今回は、デリーの郊外に住む中間層に焦点を当てて、最近成長著しいインドの「中間層」が何を考え、何を悩んでいるかをリサーチした。

 とても読みやすくて、とても面白い。。デリーは都会だ。都会と農村との格差が著しいインドでは、これがそのままインド全体に当てはまるわけではないだろうが、実際にインドの国を動かしている「中間層」の人たちのことがよくわかる。

 そして、ある種の「爆弾」となりうる「ヒンドゥー・ナショナリズム」のこともきっちりと捉え、なぜ、ヒンドゥー・ナショナリズムが人々に受け入れられるのか、その素地はどこにあるのかについても分析している。この当たりは、中島さんの得意とする分野である。

 本の最後、私は非常に感動して涙が出た。宗教を全面に出すとどうしても排他的になりがちだが、他者を認めない世界に未来はない。
 「ばらばらでいっしょ、いっしょでばらばら」 
 多一論的な宗教観、非常に感銘を受けた。
 ぜひ読んでいただきたい一書である。

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