優等生の悲劇
これまで決定打に欠けたホラーサスペンス大賞が自信をもって
世に送り出した作品が「九月が永遠に続けば」だと聞いた。「これが売れなきゃ何が売れる!」
とばかりに気合の入った小説で、ページを捲る手にも気合がこもった。
こういうのをリーダビリティーというのだろうな、
などと思いながら読了。
「いやぁ、いいもん読ましてもらいましたで」
と本を閉じたはいいものの、椅子から立ち上がって三歩歩いた直後には
「・・・あれ?どんな小説だったっけ?」
と、ふと本を振り返る。
『ゴミを捨てにいった息子が、そのまま行方不明になる』
そんな魅力的な大きな謎も、いざ解決してしまうと
「ああ、そうですか」と妙に納得してしまいそれ以外の感情が
すべて飛んでしまうのだ。
文章力、プロット、キャラクター。すべてがそつなく巧い
ので、逆に印象に残る部分が少ないように思えた。
そういう意味ではとってもホラーサスペンス大賞的な小説であり
優等生な作品だ。
だけど優等生というものは所詮は近くて遠い存在。
一般大衆というものは、劣等生でもユニークな人物に惹かれるもの。
優等生であるこの小説が賞関係者の期待を裏切って世間の評判を
集められなかったのは仕方ないことかもしれない。
優等生を輩出し続けたホラーサスペンス大賞が優等生らしい潔さで
賞自体を終了させてしまったのもまた、仕方のないことなのだろう・・・