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自壊する帝国

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自壊する帝国の商品レビュー

5.0 外交官の仕事
「鈴木宗雄事件」の真相を語った『国家の罠』がベストセラーになるなど、何かと話題の論者なので気になって手にとって見た一冊。著者は現在起訴休職外務事務官の肩書にある外交官。「鈴木宗雄事件」の渦中で背任・偽計業務妨害容疑で逮捕、現在裁判闘争中にある。

本書はそんな著者によるモスクワ駐在時代の回想録である。新人外交官としての在英研修、そしてモスクワへの着任。著者の回想を通して、外交官の仕事と外務省という組織の一面が見えてくる。著者のアクティブさと現地で多様な人脈を築き上げていく様は圧巻。著者はその人脈を生かし、末期ソ連政治の激動の中で様々な機密情報を獲得することに成功を収めていく。

著者が交流を深めるソ連のインテリ層たちとの対話も興味深い。ソ連という絶対的権力社会の中でいかに宗教や反体制的な学問がしたたかに生き残ってきたのかが垣間見れる。

まさに「事実は小説よりも奇なり」。本書は著者の人脈を通してみたソ連崩壊過程の貴重な歴史の証言であり、著者の文章の巧みさも相まって、読んでいてドキドキワクワクさせられるようなエキサイティングな一冊となっている。とても面白かった。
4.0 サムライの生き様
本書はソビエト連邦崩壊に絡む裏話を、外務官僚としての実体験から書き記したノンフィクションです。

ノンフィクションであるが故に、状況描写が生々しく当時のソビエトで起こっていたことが文面からストレートに伝わってきます。
著者の一本筋が通った生き様と、文体が綺麗に融合しており、読後感がさわやかです。

国が自壊する時には、組織の内部から腐って行くものですが、当時のソビエトでも同じ状況が起こっていたことが分かりました。
この事実と、現在の日本が置かれている事実とを照らし合わせると、日本という国のカウントダウンが始まっているのではないかと感じます。
最後に国策捜査で事情聴取を受けるくだりに於ける、外務省の体たらくさは、著者の日本国の将来についての暗示なのかも知れません。
4.0 努力が人生の面白みを深める
並々ならぬ努力を重ね教養を高めて語学を磨きさえすれば、一般人でも外交の最前線でスパイ小説のような活躍をすることも夢ではないことを示した点で非常に価値が高い書に思われた。
体面を偽る必要がある高い政治レベルの旧ソ連人に深く入り込んで相互信頼を築き人間性に触れる様子は、現実の旧ソ連の崩壊過程と合わせて彼らも結局は同じ人間であり、主義主張や思想の多くも生活の糧に過ぎないという捉え方ができることを示している。
構成上、何人かの人物に絞って最後まできちんと追って書ききったほうが読後感が良いと思われる。

しかしずいぶん派手に飲み食いしているが、一体どこからそういう資金は湧いてくるのだろうか、と疑問を呈するのは野暮というものであろうか(笑)。人間関係を築くには私のように貧しく下戸では難しいようである。
4.0 日本国家が生き残るには
 外交官の見たソビエトの崩壊を、佐藤優という「人間というフィルター」から見たのが本書「自壊する帝国」であり、研究的、理論的に描かれたのが「国家の崩壊」で、「国家の罠」はその後の日本でのストーリであり、読む順番としては、書かれた順番に読む(国家の罠→国家の崩壊→自壊する帝国)のが判りやすいし、私にとっての面白さもこの順番である。
 この本で言いたいことは序章にある。”おそらく日本人の大部分は、日本が崩壊するはずは無いと思っているだろうが、国家というのはある日突然に崩壊することもあるのだ。 国家の崩壊はその領域に生きる人々に多くの痛みと禍をもたらす現実を私はこの目で見た。「真の改革のためには大川周明が言うように「国民的生命のうちに潜む偉大なる者・高貴なもの。堅実なる者を認識しこれを復興せしむること」”とあるが、国策逮捕された経緯も考えるとここに尽きるのだろう。
 外務省や大使館のシステムの中で、こんなに仕事をする専門調査員や三等書記官を見たことが無い。真に異能の人で尊敬に値する。
 次々に現れる人々が皆魅力的で生き生きしている。サーシャ、イリイン、フルシチョフ、ポローシン、マストニーク、、こういうときに人間の本当の価値が良くわかるものだと思う。
 エストニアについてかなり割かれるのだがは、たまたま大戦末期のエストニアで戦ったドイツタイガー戦車隊のオットーカリウスについて宮崎駿が描いた「泥まみれの虎」をたまたま並行して読んでいたので、エストニアのロシア問題は大変面白かった。
4.0 外交官「佐藤優」誕生の記
大学を卒業した同氏が外務省に入省し、英国陸軍語学学校やモスクワ大学の学生たちと共同生活を送り、キリスト教神学という学問的出自をテコにして彼らと切り結びながら外交官の卵として成長していく前半部分は、一種の青春記又はビルドゥングスロマーンとしても一気に読ませお勧め。一方、ソ連の崩壊を描いた後半は(意外なことに)ややダレ気味で詠むのに骨が折れた。(ロシアの小説を読む際にありがちだが、カタカナばかりの人名に若干辟易したせいもある。)それにしても、「危機になると男の本性が見えてくる」(356頁)とは云ったもので、人間としての生き様という点では尊敬すべき者から唾棄すべき者までロシア人も日本人と変わらないなとの感が大。また、クリュチナ・ソ連共産党中央委員会総務部長の暗殺シーン(389頁)には、何だか背筋の寒くなる思いがした。

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