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散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道

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散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道の商品レビュー

4.0 己に厳しく、家族に優しい指揮官の合理的作戦と家族への手紙
 2年ぐらい積ん読だった本書をようやく手にした。太平洋戦争で米軍を最も苦しめたのが硫黄島である。それは大本営の指示を現場で無視し、最も合理的な作戦で戦い抜いた指揮官の力量によるものである。

 本書はその筆まめな指揮官が家族に送った手紙を中心に話が展開する。指揮官の手紙であるため、あまり検閲も入らず、心の内がそのまま表現されているのが特徴である。
 9歳の娘を夢に見たことを始め、空襲を受けたら母を守るよう長男に言いつけ、台所の隙間を塞がなかったことを後悔する、人情味溢れる手紙である。

 絶望的な状態で部下を掌握できたのは、部下と同じ食事を取り、部下と同じように生活し(ハンニバルのようだ)、毎日現場を訪ね歩き、2万人の部下ほとんどに最高指揮官の顔を見せたことが影響しているのだろう。ゲリラ戦法を指示し、それを命令ではなく誓いの形で将兵に毎朝読ませていたことも兵士の自発的な行動を生んだと推測する。
 
5.0 希代の軍将の悲運と、家族の尊さについて想う
 戦史に残るその血みどろの戦いの裏に、栗林という卓越した総指揮官がいたという事実は以前から知っていた。しかし、その人となりについては本書を読むまでほとんど知らなかった。持久戦を狙う地下潜行の秘策、伝統的な水際攻撃の中止、バンザイ突撃の禁止、最高指揮官自らの先陣切り、また時に大本営への反抗をも匂わす異例の電文。軍部の悪弊を断ち切り、当時としては非常識とさえ言われた栗林中将の合理的采配の数々に、まずは驚きと感動を覚える。

 しかしそれ以上に読者を深い感動に導くのは、戦場でみせた崇高な指揮官ぶりとは対照的に、時を同じくして彼が手紙で綴った家族への純粋でひたむきな愛情だ。屈強な米海兵隊員でさえ発狂しかねない地獄の戦場で、どうして日本に残した妻の手のあかぎれや台所の隙間風を思いやれようか。明日にも我が身が肉片と化す状況下で、どうして子供の手紙の誤字を直してやれようか。人間にとって家族の尊さがいかに絶対無比なものであるか、つくづく想わざるを得ない。

 栗林中将は、幹部候補生訓練の一環として、2年間の米国留学を体験している。硫黄島で非業の死をとげる、15年ほど前のことだ。そこで、日本とは比べようも無い米国の豊かな国力に瞠目し、彼の飾らない人柄は多くの市井の人々に愛された。元々の性格ということも、もちろんあったと思う。しかし当時の軍部にあって際立って異色な、その徹底した合理精神、部下に対する細やかな配慮、そして家族に示すストレートな情愛の念といったものは、米国留学によって一層明確に形成されたと想像するに、難くない。
 そして自らの体験をもとに、彼は米国との開戦に執拗に反対したという。硫黄島配属はその反対に怒った軍上層部による追放処分だった、というおぞましい説がもし事実ならば、なんと悲運な巡り合わせだろうか。

 家族を危険にさらす本土空襲を何としても回避させることが硫黄島死守をめざす栗林中将の最大の動機だったという事だが、硫黄島玉砕前に米軍による本土空襲が開始された事実を知った彼の絶望感は、想像するに余りある。

 硫黄島のみならず、全ての戦争の不条理さと悲劇、家族・人間の愛が、この本に凝縮されているように思う。後世に遺すべき貴重な一冊だ。息子達にもいずれ必ず読ませたい。
5.0 軍人として、指導者として、そして家庭人として、まさに鏡と言える人物
クリント・イーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」の観たことから、硫黄島の戦闘およびその指揮官であった陸軍中将栗林忠道に興味を持ち本書を購入しました。

勝つことを想定されない硫黄島の戦闘にかり出された2万人余の将兵の命を預かった陸軍中将栗林忠道の、人となりと彼の取った硫黄島防衛戦を、彼の書いた手紙、生存者の証言、および日米の資料から紐解き、現代によみがえらせた秀逸なる一書です。

栗林忠道は自ら自動車を運転してアメリカ大陸横断までやってのけた人物です。アメリカの絶大な国力を骨の髄まで理解していました。そしてその合理性も体得してきました。そして、硫黄島にアメリカ軍が侵攻してくる事になる前から日本軍に勝ち目はないことは重々承知していました。

そのようないかんともしがたい彼我の軍備・兵站の差を前に、いかに戦うかに考えを巡らした結果、彼が取った戦法は地下要塞を築き、あくまでもゲリラ的徹底抗戦を挑むというものでした。それによって
1.一日でも長くアメリカ軍を硫黄島に釘付けにし、東京をはじめとする日本の都市への本格的空襲を一日でも遅らせ、その間の和平交渉に期待をかける
2.硫黄島に於いてアメリカ軍に手痛い一撃を与える事により、アメリカ国民の厭戦気分を喚起し、アメリカ国内での早期終戦機運を高める
事を目指したのです。しかしながら、アメリカ軍の力は知米派であった彼の思惑をも遙かに凌ぐものでした。硫黄島の戦闘と平行して、アメリカ軍は東京への大規模空襲を敢行したのです。その事実を知ったときの彼の落胆は如何ばかりであったでしょう。

もし当時の日本軍中枢部が、冷静にアメリカの絶大な国力と日本の限定的な国力とを比較すれば、到底アメリカと戦端を開くなどと言う暴挙にでるわけはありません。まさに現実を全く認識していないとしか思えない無知蒙昧な日本軍にあって、これほど冷徹に現実を認識し合理的な行動を取った軍人がいたと言うことがまさに希有な存在です。彼はアメリカ軍と戦うと同時に、無知蒙昧な日本軍中枢部とも戦わなければならなかったのです。

栗林忠道の「予は常に諸氏の先頭にあり」の言葉は、どの時代であっても指導者全てが心するべき言葉でしょう。指導者はかくあるべしです。そして同時に、家庭人として妻や幼い子供を思うその心優しさにも心打たれます。軍人として、指導者として、そして家庭人として、まさに鏡と言える人物です。
5.0 知れて良かった
今まで生きてきて祖父母より戦争の話を聞いたり、個人的に戦争を調べたことはありましたが「硫黄島」について詳しくは知らずにいました。
本作品はとても読みやすく、忘れてはならない戦争の記憶であって、もっと沢山の人が知るべき内容がギュッと詰まっていると思います。
内容が軽い等、厳しい評価もありますが、まず、「硫黄島の戦い」を知るのであれば読みごたえのある充分な作品だと思います。
5.0 すごい指揮官
クリント・イーストウッド監督で硫黄島の作品を二部作でやると聞いて、かつ、アメリカ史に残る激戦を行った栗林中将を僕の尊敬する渡辺謙が演じると聞いて、栗林中将について勉強をしてみようと思い、本書を読んでみました。

この人は歴史に名を残すすごい指揮官だなあと思いました。現在でも十分に通じる指揮官としての条件を満たしています。

勉強になりました。

しかし、戦争は本当に悲惨だなあと思ったのと、当時の日本軍の絶望的な状況には心が詰まるものがあります。

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