これは警告か、予言か?
ドン・デリーロの新作は、舞台は2000年のニューヨーク。20世紀のアメリカそのものを描いたといわれるデリーロが、世紀末の一日を今回は描いている。2001年の9・11のテロをかなり意識してかかれたものではないか、と思われるが、一人の主人公の青年を通じて、今のアメリカそのものを描こうとしているのではないか、と思われた。前半はかなり緩慢で何が言いたい小説なのか、ぜんぜんわからないが、だんだんとその主旨も見えてくる。巨万の富を持つ主人公が破滅に向かって、進んでいくのだが、そこには、再生とか改心とかいったものが見られない。というよりは、主人公にその気がまったくない。
しかも本書は、ポール・オースターへ捧ぐ、と書かれている。日本人の私が読んでいても、不気味な小説ではあるが、アメリカ人は、この本をどう評価するのか、聞いてみたい気もする。時代に追いつかれたアメリカ、という気もするが、アメリカの中には、変革しようとする再生の力もあるのでは?とかの疑問も出る。
読み方をかえるならば、これは、アメリカの凋落や失墜を予言する本でもある気がするのだ。その答えは、イエスなのか、ノーなのか、まだ誰も知らない。