宇宙と誰かのコラボレーションを感じた
最先端技術を駆使した望遠鏡や探査衛星でNASAが60年代から昨2004年にかけて撮影してきた太陽系内の星々の写真集です。その美しさに息を呑みます。 この写真集で目にする惑星や衛星を眺めながら私はポロックの絵を想い出していました。
アメリカの画家ジャクソン・ポロッックはアクション・ペインティングという手法を使って偶然が織りなす計算されない美を表現しました。太陽系の星々の表面は多くがクレーターや氷によって覆われ、無秩序と混沌が支配しています。しかしその無秩序の中に、ポロックの絵同様、確かに美が存在しているのです。
ボイジャー1号が捉えた木星の赤道地帯(197~211頁)。渦巻く大赤斑は巨大な水溜りに誰かが―― 人間を超越した誰かが ――絵の具を一滴たらしたかのようです。何者かの手と宇宙とのコラボレーションを感じないではいられません。
一方で土星の環はこれとは対照的に、およそ偶然では成立しないほどの整然とした美しさをたたえています。コンパスを使って思い切り良く一気に描きあげたような円(260~261頁)。自然が設計した幾何学模様を眺めながら私はここにも、こうした美を太陽系の端に置く力をもつ超越した存在を強く感じたのです。
また火星に降り立った探査車スピリットが昨年地球へ送って寄越した火星の地平線写真(172~173頁)を眺めながら、人間の技術力のとどまることのない躍進を思いました。アメリカ中西部にありそうな渇いた褐色の明るい地表は、いつまで眺めていても倦むことがありません。
自然が見せる超越的な美しさ。それを天空にまで手を伸ばして撮ってしまう人間の果てしない可能性。
官能的とすらいえる、美しい写真集です。
ワオ!
地動説を唱えたガリレオを300年ぶりに異端から解除した故ヨハネ・パウロ2世は、1997年1月に「ガリレオ計画」の科学者達に謁見し
た。そのときに科学者たちが持参した木星の写真について御覧になったとき、法王はしばし眺めいり、黙考したあと、一言こう発せられた。「ワオ!」P196これ以外にこの本に載っている写真について述べることができる言葉は他にあるまい。