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幕末バトル・ロワイヤル (新潮新書 206)

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幕末バトル・ロワイヤル (新潮新書 206)の商品レビュー

5.0 歴史は人によって作られることを実感させられる本
 ペリー来航当時の老中・阿部正弘。
 オランダからペリー来航の情報を得るや,不安になり,島津斉彬(薩摩藩)・黒田長専(「専」はさんずい。福岡藩)・鍋島直正(佐賀藩)に情報を漏らしてしまう。阿部は不安に思うが,海防掛役人は容易に撃退できると強気だし,といって軍艦を建造しようと思っても,勘定奉行には予算がないと反対される。水戸斉昭(水戸藩)は,攘夷の強硬派を気取ってはいるが,いざペリーが来航してみると,「今と相成り候ては打ち払いをよきとばかりは申しかね候」と頼りにならない。そんな中,阿部は,朝廷にも,ご意見がありましたらお申し付けくださいと低姿勢に対応し,朝廷による国政への干渉を自ら招いてしまった。
 阿部の対応は見ていて歯がゆいほどだが,1843年に25歳という最年少記録で老中になった阿部は,1853年には未だ35歳。将軍も水戸斉昭も頼りにならないという状況の中で幕府の方針を決めなければならないという重責は相当なものだっただろう。その年齢を見ると,阿部の腰の座らなさも何となく納得できるような気がする。

 本書は,水野忠邦(天保の改革)が老中の地位をいかに手に入れたかという辺りから,ペリー来航までの時代を,どういう人がどういう動きをしたのかという風な視点から描写した本。最初のところは似たような人名が次々と出てくるので頭に入りにくかったが,そこを我慢してクリアすれば,グイグイと一日で読まされてしまう,いい本だった。
5.0 いいっすね〜
水野忠邦の天保の改革からペリー来航までの顛末を描いています。
裏金、スキャンダルてんこもりで、筆者もご指摘の通り、
どっかの国の政治屋と同じじゃんと思わせます。
少なくとも、この頃から、日本にはきちんとした政治家は育っていないようです。
阿部内閣の方にはしっかり読んで頂きたい。もちろん反面教師として使うことが前提ですが。
(今の状態じゃあ俺は票入れないよ。)

政治の流れに、忠邦が株仲間解散したことがどう影響したのかなど、
一見関係なさそうなことがつながっていくとかなりのカタルシスが得られます。
「おーーー、ここでそうつながるんだ!!」と読んでて面白いです。

ただし、裏話がふんだんに使われ、人間の負の部分もかなり見せ付けられるので、
読む方によっては江戸時代の政治家たちに失望するかもしれません。

個人的には許容範囲、人間なんてこんなものだろうと
いいのか悪いのかあきらめていますのでショックはありませんでした。
当時の江戸の風俗も知ることもでき、かなりおもしろかったです。
4.0 幕末前の物語。
天保の改革で知られる水野忠邦の老中成り上がりから黒船来航・日米和親条約締結までのお話です。

途中、当時のゴシップなどを織り交ぜながら、「ほんとのところどうなんでしょうね?」的な流れで話が進んでいきます。

後半、黒船来航前あたり当時の政府中枢の苦悩(知っていたにもかかわらず手が打てない様)や、黒船来航時の現場の話など、通常の維新物語ではあっさりすまされるところが丁寧に描かれているところが面白く感じられました。

庶民の視点や、人間的な視点から見た為政者の心情のあぶり出しなど、見ていて大変興味深いものがありました。

問題点を挙げるなら、下記の二点。

1.途中途中でゴシップ的な話題を混ぜたせいか、前半時系列が交差して少し読みにくい気がしました。

2.最後があっけなく、というか突然の連載中止のような終わり方をしているのが残念。只今連載中ということをあとがきに書いていましたが、最後のしまりは大切だとおもうので、2・3ページくらい書き下ろせなかったのか?と感じました。

良書だとは思いますが、その点で残念だったのでマイナス1評価です。
5.0 歴史はドラマの連続だ
 水野忠邦の天保の改革から黒船来航まで、1825年から1854年までをカバーしている。
本書を読むと、歴史は理論で進むのではなく、人間のドラマの積み重ねであるということがよくわかる。興味深くおもしろいトピックがいっぱいある。

 特に強烈なのは、幕末ナショナリズムの原点となった攘夷感情に乗じて台頭した水戸の徳川家斉、実は、攘夷は無理だと思っていたというところだ。攘夷というタテマエにこだわりつづけ、そのため幕府の外交政策が金縛りになっていくのである。

 またこっけいだったのは、黒船観光ツアーというエピソードである。黒船の停泊で、船運のハブにあたる海域を占拠されて漁業、運輸は大打撃をこうむった。ここで登場したのが黒船観光ツアーだったというのだ。どんなことでもビジネスにできるものである。

 歴史はドラマである。本書を読むと幕末の大きな流れを作っていった小さなドラマ、通常の歴史では知ることのできないおもしろいトピックを知ることができる。その意味でお勧めである。
5.0 小文字の「歴史」の集成
作中「幕末の構造改革」と例えられる天保の改革から、ペリーの黒船来航によって日米和親条約が調印されるまでが綴られている。近年の著者はとくに、たとえば幕末といった大文字の「歴史」のまわりで、ともすれば見落とされ無視されがちなディテールを丁寧に拾いあげて、洒脱に語りつづけている。

本書でも、やがて改革に失敗することになる水野忠邦が、若くして立身出世を決意して「書付」を家中に貼りつけていたというエピソードに始まって、それから老中職を手にするまでの経緯、そして改革の失策と失脚するまで。さらにその後に老中職を登りつめた阿部正弘が、ペリー来航をあらかじめオランダから知らされていたにもかかわらず無為無策のまま黒船来航を迎えてしまったことなどを、大奥のスキャンダルや、ペリーの献納品のなかの模型蒸気機関車を走らせたとき役人が屋根にまたがって乗車してはしゃいだといったエピソードをまじえて書かれている。

週刊新潮に連載されているときは話がちょっと地味で、あまり印象に残っていなかったけれど、こうして一冊の本にまとまってみると、その地味っぷりも、また一つ一つの話があっちを向いたりこっちを向いたりしている様も、作者がささやかな出来事をじつに面白がっている様も、むしろすべてが総体として豊かさにつながっていると感じられる。ここで引用するのは気恥ずかしいけれど、ナントカは細部に宿る、といったところか。
連載はいまだ進行中。これから大文字の「歴史」が大詰めになっても、なお小文字の「歴史」を丁寧に拾いつづけてほしい。

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