スタッフの顔が分かるよ。
写真が多いから、読まなくても見るだけで楽しい。
ファミリーの写真が多いので、吉本隆明のファンにもオススメ。旅の記録が写真とともについているので
スタッフの人たちの顔まで、分かってしまう。
吉本ばなな自身が、作品の思い出を書いている。
年譜は本当に見やすいから、便利だよ。
原マスミさんの描き下ろし絵画は、このムックの見所です。
彼女の今、を開いて見せた本
この一冊で吉本ばななのすべてが解る! という便利な本、では決してない。だから、手っ取り早く吉本ばななを知ろうとして読み始めると、ちょっと肩すかしを食ってしまうかもしれない。 『キッチン』の衝撃的なデビューから14年、現在までに発表された小説は21冊に上る。そして、今もなお、吉本ばななは意欲的に作品を発表し続けている。そんな彼女の今、を開いて見せた本、とでもいえばいいだろうか。著作や執筆に関するロングインタビュー、年譜や自作解説、評論、旅行記に書き下ろし小説。盛りだくさんの内容である。なのに、吉本ばななのすべて、になることをあえて避けてあるような編集。タイトルが示すとおり、『本日の、吉本ばなな。』なのである。
彼女のほぼすべての作品を読んでいるわたしだが、年譜に整理された作品群や時代背景を見ていると、吉本ばななという作家の才を、改めて感じる。
ある種の作家は、書くことで事件を呼び寄せる、という。猟奇殺人事件を書いていると実際に同様の事件が起こり、カルト集団を書いているとそれが社会問題として浮上してくる。もちろん、その作家に、事件を引き起こさせる能力があるというのではなく、まだ表面には出てこない時代の空気を敏感に察知し、それを言葉で表せる能力があるという意味である。吉本ばななもその一人なのだと思う。社会や時代の空気を吸って、作品として吐く。彼女は言う。「小説の方が『書いて!』って言ってくるのを私はただ写しているだけだから」。
書き下ろし小説「ちんぬくじゅうしい」は、波照間島を舞台とした短編。要約してしまうとなんてことのないストーリーかもしれないが、みっちりと書かれた描写が、心や五感にしみる。波照間の旅行記と併せて読むと、その色や温度、食べ物の味が読み手の体に濃密に再現されて、自分も波照間にいるかのような錯覚を起こし、日差しに肌が火照ってくるようだ。