しっとりとしたアンソロジー
作品紹介にもあるように、人生のハレの日である誕生日をテーマにしているにもかかわらず、あまりハッピーなストーリーだけではないです。というより、どちらかというとしっとりとした短編ばかりが集まっています。タイトルから想像できる明るいストーリーを求められている方には不向きかも知れませんが、コンテンポラリーの英米作家の作品を拾い読みができるので、個人的にはお勧めです。
どの作品も個性的ですが、きっと人それぞれに心に残る作品があるだと思います。
20歳の誕生日
20歳になる誕生日、あなたはどう過ごされていましたか?
私はつい昨年ことなのですがほとんど記憶にありません。
それほど平凡で印象の薄い1日だったのです。
誕生日をすぎてこの短編に出会い、なんだかとても損した気持ちになり、同時に平凡と言うのもなんだか幸せなことのように思う気持ちになりました。誕生日とは自分にとって節目の時になるわけだけど、思うようには行かないし、いいことばかりじゃない。
幸せな気持ちになれたり、自分だけじゃないと勇気づけられたり、、、
誕生日のプレゼントにもらっても嬉しいと思います。
いくつもの誕生日
誕生日。皆さんはどんな光景を思い浮かべますか?
家族全員でバースデーケーキを囲んで、プレゼントを渡して、明るい表情
で「ハッピーバースデートゥーユー」を歌う。。。
この短編集には、そんな幸せな(平凡な?)話は一つもありません。
仲間を殺してしまう話、確執によって息子が帰ってこない
老夫婦の話など、幸せじゃない(というか不幸な)話や、
思春期の男の子がプールに飛びこむまでのスーパーミク
ロな描写など、風変わりな話ばかり。
でも、全ての話の底流に深い愛が流れていて、僕はそこに救われました。
それぞれの作家のみずみずしい感性を味わえる、珠玉の短編集です。^^
アンソロジーの楽しさ
あとがきで編者として村上春樹が書いているように、バースデイをテーマにしているからといって必ずしも幸せな物語になる訳ではなく、というよりは不幸せか、後味の苦い物語がほとんどを占めていると全編読み終えて感じる。けれど、もう一度目次を見てみると、イーサン・ケイニンの『慈悲の天使、怒りの天使』を初めに、いくつかの救済のある物語があったことがわかる。 ひとつのテーマに沿って、テイストの違う様々な味わいの作品を集めながら、なおかつ『慈悲の天使、怒りの天使』とダニエル・ライオンズの『バースデイ・ケーキ』のように、よく似たプロットで感触の異なる二作品を揃えていて読み比べる楽しみがあったり、それら集められた作品を適切な並びで配置されていて、アンソロジーの面白さ㡊楽しさに触れることができる。編者による各著者・作品の紹介も楽しさのひとつ。