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言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)

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言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)の商品レビュー

3.0 門外漢には難解
言語学というとほとんどの大学や研究機関では文系の範疇に入る。
そして研究者の大半も文系の訓練を受けてきた人々である。
それは文字や音声で表現される言語というものは再現性や反証性を重視する自然科学の手法になじみくかったこともあろう。

しかし、認知科学や脳科学の発達により、言語活動を脳の活動と関連させて研究する手法が広くとられるようになってきた。脳の活動から言語をとらえることによって従来の言語学の知見が再確認されたものもあれば、否定されたものもあり、まったく新しい局面を迎えたものがある。脳科学により言語学はさらなる発展を遂げたとも言えよう。
だが、著者も言うように脳科学者には基本的な言語学の知識を欠いたまま言語活動について論究する者もいるようである。言語学者が脳科学の知見を踏まえるのも当然であるが、脳科学者が言語学の成果を知ることも同様に必要である。近年進む学際的研究の典型であろうが、双方の専門への敬意を持って研究を進めていただきたい。

脳科学を専門とする著者が最前線の知見をできるだけわかりやすく紹介しようとする意気込みは買うが、それでも難しい。
脳科学の話となるとわかりやすくするにも限界があるのは致し方ないというところだろうか。
とりあえず脳科学の奥深さ、それでも脳が言語をどのように処理しているかにはまだまだわからないことの方が多いということはわかった。
3.0 著者の思い込みが邪魔
全体的には良書だと思うし、理論そのものには賛成なのだが、
一部に著者の思い込みが混じっており、そこだけが残念。

その代表的なものが「行動主義では、幼児があれほど容易に
母語を獲得し、中高生があれほど第二言語習得に苦労する
現象は説明できない」という主張。

行動主義批判は良い。ただし、幼児の母語獲得や中高生の
第二言語(英語)学習を「容易「だの「苦労している」だのと表現
するのは著者の解釈の問題であり、脳科学とは何の関係もない。

著者は4歳児が相当なレベルで母語を使いこなしていると
書いているが、4歳児の言葉がまだまだ不完全であることは、
成人と比較するまでもなく明らかである。
カタコトでは「完成している」とは言えないだろう。
そのカタコトでさえ、生後の数千、数万時間を経た結果であり、
これを「容易」などと表現することが適切とは思えない。
「獲得=容易」というものでもないはずだ。

また、中高生や成人が英語習得に多大な期間を要するのは、
学習時間が決定的に不足しているからであるというのが、
(英語)教育に携わる者の常識である。脳科学だ何だと
言う以前に、学習そのものが不足しているわけだ。
加えて、ある程度まで英語を使いこなすだけなら、
数千時間の学習で事足りる。集中して取り組めば、
わずか1、2年でも相当な成果を上げることが可能だ。
母語獲得に要する時間を考えれば、これは驚異的な速さである。

もちろん第二言語と母語を置き換えるのは不可能だし、
母語なみに上達するのもほとんど不可能ではあるが、
「だから幼児の母語獲得より第二言語学習は困難」
と決めつけられるものでもないだろう。

科学的な知見と個人的な印象は、きっちり区別すべきだ。
この点で、この著者の文章は説得力に欠ける。
理論ではなく、著者の「書き手」としての問題である。
2.0 サイエンスなのはいいが。
今までなされてきた言語学にはサイエンスという意識が欠如しており、それこそまさに言語の本質であるという著者の明確な主張はよんでいて気持ちがよくもある。しかし、そのサイエンスによって証明されうる統語論のみを言語の本質であると捉え、その他を捨象するといったことは誤っていると考えざるを得ない。言語とは語彙に対応する記憶野やほかの部分も総合的に使用される一種の総合的機能である。ならば、むやみにサイエンスと彼が主張するものだけではなく、著者が切り捨ててきた語用論や意味論といったものも言語の本質なのである。統語論とその他意味論を統合することこそ、まさに文系と理系が手を取り合うことであると思うのである。後半の脳科学に関しては著者が長年にわたって研究してきた分野だけあった、用例も豊富であり、そこにこそこの本の意味があるのではないだろうか。
4.0 このような本が日本に少ないことこそ問題
一つ気になったのは、「洋書にはもっといいものがある」というのは、
裏を返せば、最新の研究をコンパクトにまとめた日本語書籍がいかに少ないかということ。
その責任は個々の学問の「世界的な」流れに疎い出版社の編集部員にもあるでしょう。
この本のレベルに達している科学についての普及本が、若手研究者の手によって今後数多く出版されることを願うばかりです。
4.0 20世紀の言語の脳科学
物理,生理,言語と専門を変えてきた著者による,(最新ではなく)最近の言語学系脳科学の全体像をまとめたもの。
特に前半5章までに,生成文法に立脚した脳研究について,その思想と方法論が,相当な意気込みで述べられている。この分野になじみのある人には散々聞き飽きた話ではあるが,著者自身の想いが爆発しているので読んでいておもしろい。
対して6章以降は,有名な研究の羅列に終始している。またその選択も解釈も単純というか線形というか常識的に過ぎる感がある。
と言っても,20世紀の言語の脳科学のメインストリームを感じ取るには十二分に内容が詰まった一冊。対象読者を問わない。

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