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経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書)

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経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書)の商品レビュー

4.0 センスだけなら身につけられる・・・かも
副題にある「お金がない人を助けるには」に惹かれて購入しました。
ただ、本書を読んでいると、本題の「経済学的思考」について、色々な例を挙げて説明しています。それはそうですよね。(とはいえ、論じられていないわけではありません)

筆者の云う経済学的思考というのは、世の中の出来事を「リスクとインセンティブ」で捉えなおしてみてみること。また、色々な事象の相関関係について、その中にある因果関係を捉えるための思考であるとしています。
また、昨今注目されている行動経済学の事例も紹介してあり、それらも今後の経済学的思考には必要なことと感じました。

語る上での実例として「女性はなぜ背の高い男性を好むのか」「美男美女は本当に得か」「いい男は結婚しているのか」など世間話としても面白いものから、日本的雇用の損得、所得格差と所得の再分配など一般的に経済学のイメージに近い話題までを扱っていおり、それらを改めてインセンティブとリスクからの視点で語っているので、読むのが苦ではなく面白く読み進めることができました。
また、事象の相関関係からあたかもそれらが因果関係であるかのように捉えて議論を進める例は、仕事上私の周りでもよく見られることなので、改めて因果関係を探りだすセンスは必要である!ということを感じました。

おそらくちゃんと経済学的視点で物事を見るためには、たくさんの事例の検証を必要とするのでしょうが、「センス」と言う意味では、見方を変えるだけで物事の捉え方が変わるのだということを理解させてくれる一冊でした。
面白かったです。
5.0 インセンティブですね
本書は、ひとびとのさまざまな行動をインセンティブ(意欲)の視点から解き明かす本である。
年金未納やプロ野球から、美人と結婚の問題まで、身近な話題で読んでいて楽しい本。
また、章が細かく分かれているので、短い時間でもちょこちょこ読める。

どちらかというと、経済学よりも心理学の気がした。
4.0 経済学はお金をめぐる人間の“心理学”だ。
 本書は「経済学」などと堅苦しく考えることはなく、人間の行動をインセンティブ(意欲)の面から切り取ってみると、通説とは異なる物事の見方、考え方が浮き彫りになるという本である。

 「自然災害に備える」では、ハザードマップの公開と災害保険税の創設を提案している。確かに、危険地域に住む人たちが税金が高いとなれば安全な地域への移転のインセンティブは働くだろう。
 また、「プロ野球における戦力均衡」では、なぜ日本のプロ野球人気が低迷しているのかを分析し、ファンを無視した球団の既得権がそもそもの原因であり、プロ野球機構そのものを株式会社化し、球団の参入の自由化やJリーグのような上位リーグと下位リーグの入れ替え制などを提言している。
 その他、年金未納は事実上の「ねずみ講方式」である今の年金制度に対する若者の逆襲であり、団塊の世代以上の既得権を崩さない限り年金改革は不可能であると断じている。

 さらに、最近よく言われる「格差社会」については、「誰が所得の不平等を不幸と感じるのか」という視点で、ヨーロッパとアメリカの対比を行い、日本は所得階層間の移動が難しい社会になりつつあるとしている。

 本書を通じて、経済学はお金をめぐる人間の“心理学”だと感じた。
5.0 インセンティブと因果関係
第1章「イイ男は結婚しているのか?」では「イイ男は結婚している」のか「結婚してイイ男になる」のか、どうでもいいような興味のあるような、かつ経済学とは一見無縁であるような話題を経済学的な思考を用いて追求している。外見が本当に生産性に関与するのか?所得プレミアになるのか?結婚は生産性を上げるのか?調査や仮説を駆使して因果関係を求めることが経済学の重要な思考法であることを伝える章である。

第2章「償金とプロゴルファーのやる気」ではプロスポーツの世界が経済学では絶好の調査対象であることを初め知った。個人競技であるゴルフと集団競技である野球それぞれの成果のはかり方の違い、リーグとして繁栄するための考察も興味深い。また大学教授やエンジニアを例に金銭によるインセンティブは本当に有効か、有効であるならばその条件について・・・といった成果報酬主義の限界に鋭く切り込んでいる。非金銭的インセンティブの強調は経済学というと金銭的価値と短絡しがちな風潮に警鐘を鳴らしている。なんでもかんでも成果主義の人々に是非読んでもらいたいところである。

第3章「年金未納は若者の逆襲である」第4章「所得格差と再分配」は昨今話題の格差社会論に挑戦している。様々な調査や学説を駆使して世代間格差や社会保障の問題とも絡めながらそれぞれの世代が自分の利益の最大化を図ろうとする姿が浮かび上がる。ここでも各種の統計・仮説を駆使しての因果関係の追求とそれぞれの立場からのインセンティブの追求が織りなす世界である。

章が進む事に次第に身近な問題へと論点が進んでいく。興味を抱きそうな話題から経済学的思考への導入を行い、身近な問題へと発展することにより、自分のまわりの世界を経済学的思考により読み解くように誘導する。なかなか巧みな展開であるように感じた。
4.0 おもしろい視点
 経済学が役に立つ学問か、という問いに対して、本書の第2章においてはプロスポーツを実例にとって、経済学がプロスポーツにおける問題を客観視するうえで意義深いツールとなるものとして紹介している。
 特に始めに言及されている、FA制度の導入とドラフト制度の弱体化が今のプロ野球の歪みを生んだという多くの人が抱く論に対する経済学的アプローチからの反論は、非常に興味深い。
 「球団は利潤を最大にするように経営されているとしよう」という経済学的に考えれば極めてスタンダードな指摘は、そもそも球団経営とは何か、という根源的な問いにたち返らせるものであり、基礎的な事項から論理立て、経営のあるべき姿を説明することに成功している。
 
 これまで特に日本のプロ野球・アマチュアスポーツを中心に、その運営・経営手法に経済学の視点が導入されることは少なかった。
 本書では経済学からのプロスポーツへの分析アプローチが多くなされてきたと書かれているが、それらの多くがあくまで学者間の机上レベルに留まっており、その結果、経営者の耳に届きそれらが実行されたことや、多くの一般大衆(ファン)の目にとまり、それに反した経営が行われていることに対しての批判がなされた、という例は残念ながら見聞したことがない。
 日本プロ野球においても北矢行男が『プロ野球の経営学』(東洋経済新報社、1992年4月刊)を発表し、実際にストライキが起こる10年以上も前から経済学的な視点を持ってプロ野球危機を訴えてきたが、視聴率という名のいわば「架空の」人気に安住して重要視してこなかったことが、現在の歪みにつながっているのだと考えられる。
 しかし、プロ野球における球団格差をはじめとして、長く隆盛を誇ってきた企業スポーツの限界が露呈した現在、スポーツビジネスの発展にとって経済学を実学としてとらえ、それを取り入れていくことが、非常に有益であると改めて考えさせられた。

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