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戦う動物園―旭山動物園と到津の森公園の物語 (中公新書)

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戦う動物園―旭山動物園と到津の森公園の物語 (中公新書)の商品レビュー

5.0 ただただ脱帽
P122「多くの人は幸運というものを誤解している。誰の生涯にも一回は巡ってくる幸運は、天からの栄光のラッパのようなもので、一回その音を聞けば、あとは何もしなくて言い極楽である、と。・・・そうではない。幸運は自ら作り上げるもので、そのチャンスが幸運になるかどうかは、一回一回の機会について、一回ずつの勝負である。」

テレビでも頻繁に報じられ、いまや人気絶頂の旭山動物園。一度は閉園に追い込まれ、市民のボランティアに支えられ再開園し、黒字経営にまで立ち直った到津の森公園。本書は、二つの動物園の園長の対談を基に、「幸運」を自ら戦って勝ち取った二つの動物園の経験した苦難と成功を描いた物語である。

テレビでは旭山動物園の「ハード」面に焦点が当てられがちであるが、本書から見えてくるものはむしろ「ソフト」面の重要性である。実際、旭山動物園園長の小菅氏をはじめ、様々な関係者たちの熱意、気配り及び創意工夫の数々にはただただ圧倒される。また、極力動物達を自由にしようという方針も素晴らしい。「動物たちが辛そうに見えたらその動物園は負けだ」という氏の言葉を聞かせてやりたくなるような動物園が世の中どれほどあることか・・・

到津の園長岩野氏のエピソードも興味深い。エンターテインメントが多様化する現代、採算の取れない動物園の経営には困難が付きまとうが、そのような中、氏の動物園の使命についての深い哲学には恐れ入るばかりである。

二つの動物園の物語を通して、大切なのは設備ではなく人なのだということが実感できる。設備や動物を見るのもいい。しかし何よりも成功を勝ち取った関係者達の努力の跡を見るために両動物園にいつか行ってみたい、そう思わせてくれるとても面白い読み物であった。


4.0 戦う事でチャンスを掴んだ、二人の園長の懸談本
 “懸談”としたが、「」ばかりが綴られた本ではない。 到津の園長の兄でもある編者が、両動物園の歴史や背景、現状を書いた上に要所要所懸談をかぶせた本となっている。
 旭山については、既に何冊もの本が出版され、それ以上の部分が引き出されている面は少ないが、到津の森については、北九州に近い人でなければそれほど知られていなかっただけに、経営母体が西鉄から北九州市に至るまでの多くの市民の「到津遊園存続運動」の経緯は、どれだけ動物園が「社会的使命は終わった」と切り捨てられずに生き残っていくか、また残していかなければならないかの大きなヒントになるのではないか?
 いわゆる“箱モノ”ではなく、ボランティアや寄付での運営も含めての方法や、それを支える市民の情熱をどう顕在化するか?を動物園関係者のみならず、行政のトップもこの本から学ぶ事は多かろう。
4.0 動物園の使命とはなにか
旭川の旭山動物園と、北九州の到津の森公園。入園者数の伸び悩みをリカバーした二つの動物園。
同年齢の動物園の園長のお二人の対談を、サルの学者で片方の園長のお兄様がまとめた本です。
動物園の使命とはなにか。お二人に共通する動物園に対する考え方が伝わってくる本で、「戦う動物園」というタイトルはまさに的を得たものでした。
参考:動物を自然に近い形で展示するという考え方は、米国ではさらに進んでいて、川端裕人の「動物園にできること」もお薦めです。1999年に発行された時は、動物園関係者のバイブルとまでいわれたものです。
3.0 「旭山」と「風太」の違い
 「マスコミで旭山動物園が取り上げられるようになったのは、2004年に上野動物園の七、八月の入園者数を上回ったときから」とある。ご多分に洩れず僕もこの時のマスコミ報道で興味を持った者だ。そして、旭山動物園の2005年度入園者数2,067,684人の中には僕も含まれている。とにかく一度見てみたいという衝動に突き動かされて、格安ツアーで最果ての動物園を目指したのだ。そして旭山動物園は想像以上に細かいところまで知恵が絞られている動物園だった。
 マスコミの取り上げ方は、“日本最北の弱小動物園が上野を越えた!”といった成功ドラマ、経営術的な視点と、“ユニークなニュータイプの動物園が出現!”といったレジャー情報、動物ネタ的な視点の二軸だった。本書も“動物園の変遷”、“理想の動物園像”という縦軸、横軸でこれに対応している。僕自身の興味は、後者の動物園の理念、スタイルにあった。だから本書で一番面白かったのは、旭山動物園関係者のレッサーパンダ風太に対する批判的な視点だった。マスコミでは、動物園モノという同じ文脈の中で「旭山動物園」と「風太」を捉えていたはず。でも視聴者として見た時、僕も大きな違和感を持ったのだ。旭山のすごさは、玉乗り、曲芸、ジャンプ...といった水族館のショー的な要素を切り捨てるところにある。“彼らは家畜ではないから、人間が管理するのに都合のよい特性をもち合わせていない”“動物たちの側に選ぶ自由を与えるという考え方は旭山動物園の基本”“自然を支配するのではなく、人が自然を畏れ敬う自然観に基づく動物園”と言った本書で紹介される理想の動物園像が、旭山の根幹になっているのだ。
 本書では旭山動物園の変遷の部分にページが結構割かれているのだけれど、出来れば旧来の上野や、最近のズーラシアとのコンセプト、スタイルの違いといった部分をもっと掘り下げてほしかった。

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