早期英語教育への警鐘
著者は、10年以上にわたりアメリカで塾講師として1000人以上の日本人の子どもと接した経験から、「海外に住んで小さいときから英語に接すれば簡単にバイリンガルになれる」という主張が幻想であることを検証し、「なぜ子どもに英語を教える必要があるか?」という問題を探求する。著者は、重要なことは「英語の能力」ではなく、論理的思考力、説明能力、伝えたい内容を持つこと、人間的魅力、専門知識などであり、英語の学習にとわられる余り、これらの重要な能力を訓練する機会を逃してしまう可能性があり、さらには後に英語の学習にも支障をきたすと警告している。海外に来たが英語も日本語も中途半端になり、まとまった会話ができなかったり作文が苦手になったりする子どもたちの例が著者の主張をよく裏付けている。
本書のタイトルは「子どもに英語を教えるな」となっているが、著者は完全に子どもに英語を教えることを否定しているわけではない。バイリンガルにするために子どもに英語を教えるのは並大抵の努力ではなく、また、リスクも大きいということである。
英語の早期教育を考えている親や海外で子育てをしている親は、安易に英語教育に走ったり、「バイリンガル幻想」に踊らされたりすることなく、本書のような実体験に基づいた主張を注意して研究する必要があると感じる。著者の「子どものためという理由を隠れ蓑にして、実は親は自分のわがままな願望を子どもに託しているに過ぎない。」というコメントがあてはまる親は少ないないのではないだろうか。
一つ気になったことは、日本の学校では、まとまりのある議論をしていないだの、論理的思考の訓練が足りないだの批判的なコメントが目立つが、一般化する根拠がやや乏しいように見える。
本書では、バイリンガル教育に関する多くの文献を参照していて、巻末にブックガイドも付いているので、ここから他のバイリンガル教育の文献を調べるのにも役に立つ。
教育全般にわたって大きな示唆を与えてくれる
正直、はじめは、そんなに期待しないで、買って読んでいたのですが、これは、ひさびさにヒットしました。英語教育についての本ですが、私には、むしろ、早期教育、教育(特に国語)について、大きな示唆を与えてくれると思います。
最近は、大脳の話で、とにかく脳が、発達する段階にどんどん教育を、ということで、早期教育が盛んになるわけですが、そうではないし、また、言語とはどういうものなのか、ということを考えないで、やたら英語を詰め込んだら、どんなことになるのか、ということで、今まであまり明らかにされていなかった帰国子女の苦悩がよくわかりました。
また、英語の前に、国語教育についても、考えさせられました。とかく、日本では、国語というと、作文や感想文ばかりで、論理的な文章を書くことは、少ないと思います。反対に、英語では、論理的な文章を書く訓練をする、ということを読み、お互いの欠点を補えば、本当の言語教育になるのでは、と思いました。
難しい文章でもありませんし、いろいろな示唆を与えてくれるので、買って読んで損はないと思います。