波乱万丈の人生前半
生まれてすぐ里子に出された赤ん坊時代からペルー銀山の失敗までの半生を語る。書かれたのは昭和11年だが、現代仮名づかいで平易に書かれているので読みやすい。仙台藩のアメリカ行き一行の中に入れてもらったはいいが、途中から奴隷にされて売られる身となってしまったことに気づいて帰国。明治維新の荒波を身につけた語学を武器に越えていくが、若気の至りの放蕩生活、上司との衝突などを経て、商標登録、専売特許制度の整備に尽力する。
しかし好事魔多し。ペルー銀山の話が持ち上がり、最初は一出資者のつもりが現地に赴いて指揮するはめに。これが全くの詐欺話で、ほとんど全財産を失う。
本人が語るので臨場感あふれ、明治20年代までの時代の雰囲気を味わえる格好の書。
現代日本人が知るべき歴史
日本がやっと開国したばかりの明治時代に,このような偉人が生まれたことは全く驚くしかない. 明治,大正とは,まさにロマンと言う言葉がぴったりと合う.時代の激流に流されながらも,日本の発展に大きく貢献する是清の生き方は,痛快そのものである,そしてまた是清というまったく破天荒な男を日銀総裁や,総理大臣,大蔵大臣として受け入れる懐の深さが明治,大正,戦前の日本にはあった.だからこそ日本は凄まじいスピードで列強の仲間入りを果たした.
現代日本に足りないのは,何かと聞かれれば,明治日本にあった「なんとかしなきゃ列強に食い物にされちまう」と言う焦り.時代が変わっても,構図は何も変わっていない.我々は今まさに,諸外国に食い物にされつつある,しかしこの不況日本で未だ是清のようにドラスティックな政策を打ち出す政治家は現れない.”構造改革””規制緩和”なんて綺麗事でしかないことに,誰も気づいていない.
是清のような男は,現代において政治家になれることは,まずないだろう.現代日本の本当の不幸は,不況かどうかなどではなく,明治にあった,懐の深さをなくしたことかもしれない.我々はまず,ほんの100年前の歴史を振り返ってみるべきではないだろうか?そこには綺羅星のごとく輝いた偉人たちがたくさんいるのだ.