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スティル・ライフ (中公文庫)

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スティル・ライフ (中公文庫)の商品レビュー

5.0 深くて静謐な物語
「スティル・ライフ」は、転居を繰り返す男に投資事業への補助を持ちかけられた主人公の、男との奇妙な同居生活を描く。冒頭の形而上的なメッセージが示すとおり、これは自己とそれを包括する世界との繋がりを、浮遊的な感覚を用いて問うた、深淵な作品だ。
男の唆すままに事業に参画し、実直に職務を遂行する主人公。やがて、意外な男の正体と事業目的が明かされるが、主人公は特に窮する事もなく、男と歩調を合わせ、そして、淡々と別れてゆく。
スライドショーや境内の鳩によって示される「意識の歪み」には、まるで主人公同様に自分の自我もが揺らぐかのような感覚に襲われる。これは、読者の内奥に迫る精神文学であると共に、ある意味においては怖い作品ともいえるのかもしれない。
だが、私は、同時収録の「ヤー・チャイカ」の方を推しておきたい。父子家庭の親子とユニークなロシア人との交流を通しての、父親の葛藤と娘の成長の物語。
娘を無人探査衛星に比喩して見守る父親と、母国の政情に絡んで情報スパイにならないかと誘うロシア人との、ロジカルな駆け引きはかなり面白い。また、自らの大人への脱皮を「恐竜を飼う自分からの訣別」というメタファーで綴る娘の語りも詩的で美しい。「マシアス・ギリの失脚」にも通じる現実と虚構の美学を、若干、この分量にて認めたのは、まさに、天賦の才の成せる技に他ならぬだろう。
5.0 マイベストストーリー
淡々とした静かな展開。
かなり大それた犯罪者なのにすっとした佐々井の姿。
何にも捕らわれないその生き方が理想です。

多分20年ほど前に購入したから当時は新刊だったのですね。
手元に本を残しておくことの少ない私が今まで持ち続け、
これからも手放さないと思う一冊です。

自分の生き方の根本になっていると思います。
5.0 必読
とっても、刺激的な本。

出だしも。価値観も。
いつも手元に置いておきたい本の一つ。
3.0 佐々井とは誰か
池澤氏は、本書の『スティル・ライフ』を、日野啓三氏の『Living Zero』というエッセー集に触発されて書いたと公言されていますが、主人公の話し相手となり、科学について語り、最終的に宇宙人として比喩される、佐々井という人物は、何やら日野啓三氏がモデルとされているような気がしました。因みに、「向う側」という単語もさり気無く作中に用いられていますが、これは日野氏のデビュー作のタイトルです。

何はともあれ、『スティル・ライフ』にせよ、『ヤー・チャイカ』にせよ、簡素な文章を用いた、何処となく懐かしく、ひっそりと静まりかえった世界観は、確かに居心地は良いですが、何か今ひとつ、筆者独自の核となるようなものが希薄であるという印象を持ちました。それでもまあ、難しい思想やら哲学やらを省いて、美しい短編映画のような世界に浸りたいという気持ちの時に、本書は文学としてその役割を果たしてくれるということは、凡そ間違いありません。
5.0 うーん
 昔、夏樹静子とごっちゃになっていたことがある。最近まで女性だと思っていた。
 しかし、素晴らしい。現在の芥川賞で前衛の文学を評価してくれるのは山田詠美と池澤夏樹さんだけで、そんな人の書いた作品は、やっぱりすばらしかった。
 科学、と結び付けられて語られるているようだが、果たしてそうなのだろうか。この人の文章は何気に壮大だ。たった数十センチ四方の紙に描かれた文章だけで、宇宙の果てまでぶっ飛ばされ、雄大な気分に触れる。科学に関する会話があろうとなかろうと、それは変わりないのではないか。宇宙まで飛べるのは文章の力。
 人間が宇宙に行ったのは科学の力だが、宇宙へ行こうという発想は、たぶん、科学ではないから。
 さて、表題作の芥川賞受賞作、「スティル・ライフ」もいいですが、個人的には「ヤー・チャイカ」のほうが上ではないのだろうか。人間が自分以外の存在にしずかになろうとしている瞬間を繊細に描いている。老婆になっても恐龍に餌をあげつづけようとするカンナの描写がうますぎ。

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