そして、光の物語は終わる。
ついに、病魔に勝てず息絶える「紫の上」。彼女を失った光は、もはや光ではない。自分で育てた大事な片翼を失って、光も全てを捨てて、世を捨てる。御法(みのり)と幻(まぼろし)。
この巻はこの二帖につきるが、他の帖にも少しだけ。横笛(よこぶえ)。柏木の不遇の未亡人、落ち葉の宮が日参する夕霧に柏木の遺品の横笛を送る。本当の相続人は、柏木と女三宮との不義の子(薫)であることを、夕霧は知っている。
鈴虫(鈴虫)。帝が八月の十五夜、物忌みとなった。源氏の処に集まった殿上人と、冷泉の上皇に「堅苦しくなく」十五夜の祝いをしに行く。鈴虫は、女三宮に急ごしらえの秋の庭をつくり、鈴虫を放す処から由来する。
そして「夕霧(ゆうぎり)」。私たちが「夕霧」と呼ぶ男は実はこの帖!まで存在しない。落ち葉の宮に不器用な恋をし、雲井の雁と藤の典待のあいだにたくさんの子どもをもうけた左大将こそ、この帖になぞられて「夕霧」と呼ぶ。
次巻からは宇治十帖である。主人公となるべき薫も三の宮もこの巻では小さな子どもである。若い人々の物語として、源氏物語はまた新たに語られることになる。
紫の上は、本当にすばらしい女性だったと思う。