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ベトナム観光公社 (中公文庫)

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ベトナム観光公社 (中公文庫)の商品レビュー

2.0 この人の発想には一般人を超越しているところがあり、はっきりと好みが分かれる作品だ
私は、これまでに、筒井康隆の主な作品8冊を読んでみたのだが、この人の発想には、一般人を超越してしまっているところがあり、作品によっては、その傾向が、強烈に前面に出過ぎてしまっているのだ。そうした作品は、読者によって、はっきりと好みが分かれると思う。この初期の短編集「ベトナム観光公社」も、間違いなく、そうした類いの作品だ。 

この「ベトナム観光公社」には、9作の短編が納められているのだが、いずれも、ナンセンスSF風刺小説といっていいのだろう。ただ、読んでみると、たしかに、全作品に、それなりの風刺を効かせていることはわかるのだが、その風刺の対象は、現代社会のどこにでもある些細なものがほとんどであり、しかも、各作品に、それほど強い風刺が効いているわけでもない。その割には、ストーリーに、「何も、この程度の風刺に、これほど話を大きくしなくても」と思わせるような、突飛過ぎるというか、大袈裟過ぎるところがあり、突飛さや大袈裟さだけが浮き上がってしまい、風刺小説として、こなれていないのだ。 

特に、「トラブル」、「最高級有機質肥料」、「血と肉の愛情」の3作品は、作者の見識を疑わざるを得ないような無意味にグロテスクな物語であり、小説の描写としては、完全に、越えてはならない一線を越えていると思う。読んでいて、気持ちが悪くなってくるほどなのだ。私には、この程度の風刺をするために、ここまでグロテスクに書かねばならない必然性が全く理解できない。この3作品については、もはや、風刺小説の体もなしていないと思う。
5.0 本物の反戦主義者ツツイ
SFは価値の相対化をはかる文学。
自己矛盾さえ無ければどんな突飛な表現でも許される文学という建前があった。
が、日本SF界にはやはりタブーがあったのだ。
本書は
「いくらSFでも書いてはいけないことがあるのではないか?」
と唾棄された問題作である。
ベトナム戦争を観光として見に行った日本人団体が
戦争に巻き込まれて殺される話である。
殺されるシーンがギャグ調で大笑い出来ます。
筒井先生のギャグはへたなギャグ漫画より大爆笑出来るが、
ギャグとは先鋭化するものである。
戦争を笑いものにするとは何事かという論調があるが、
戦争の悲惨さのみをしかめっ面して語っても、
悲惨はかっちょええ悲壮美に繋がる可能性がある。
戦争さえおちょくってギャグにしてしまう筒井先生は、
本物の反戦主義者だと思う。
5.0 初期の最高傑作短編集
収録作は「火星のツァトゥストラ」、「トラブル」、「最高級有機質肥料」、「マグロマル」、「時越半四郎」、「カメロイド文部省」、「血と肉の愛情」、「お玉熱演」、「ベトナム観光公社」。

タイトル作は当時の海外への新婚旅行熱を皮肉ったもので、作者はこうした時代の流行物・既成概念をパロディ化したものを得意とする。だが、一見パロディと見せかけて実は別の翔んだ意図を含んだものの方に傑作が多いと個人的には思っている。「マグロマル」は国際会議を皮肉ったもの。「カメロイド文部省」は既成の道徳概念を嘲笑したもの。「火星のツァトゥストラ」は意図的に伝記を戯画化したもので当時評判となった。「最高級有機質肥料」は言葉では説明できないもので読んで頂くしかない。そして何といっても「トラブル」である。一応、人間社会の中での階級闘争というテーマはあるものの、それは発端に過ぎず、後はナンセンス・ドタバタがエスカレートし続け、最後までノン・ストップの面白さである。私は読みながら笑い転げてしまった。作者の短編の中でも一、二を争う傑作だと思う。これから、本短編集を読む方、幸せですねぇ。
5.0 筒井康隆の最高傑作の1つ
 中高時代に筒井康隆に熱中し、電車の中であろうが家の中であろうが、「ケケケケ」と笑って楽しんでいた。
 当時は、筒井康隆はなぜ直木賞が取れないのかと本気で考えていた。しかしながら、年を取ってから本書を読み返すと、それは無理だったと思う。大人から見ると、筒井康隆の革新的な面が評価されず、逆に文章の青硬さや人物描写・背景設定の稚拙さが目立っていたのだと思う。

 10代の時には、テンポの良い場面展開と、グロテスクな描写に心を奪われたものだが、今読み直すと、感動する箇所が異なっている。
 例えば「血と肉の愛情」に見られる愛情と食人を巡る心理描写や、あえてこの時代にベトナム戦争を思い切り風刺する胆の太さに大きなインパクトを感じた。

 当時も感じていたことだが、筒井康隆についてはSFのカテゴリーに縛られた評価をしてはいけない。現代への提言や文明批評、人間心理の洞察に関するさまざまな描写は、あの頃の未来であった現在においても光り輝いている。SFを身にまとった文明評論家だったというのは買いかぶりすぎだろうか。

 新潮文庫にも筒井康隆の傑作は多いが、七瀬シリーズに代表されるように洗練された作品が多い。一方、本書はそれとは趣を異にしている。ハチャメチャ、グロテスクさにおいては群を抜いており、それだけに力強さや著者自身の若々しさが作品があふれ出ている。
4.0 中学生に読ませてはいけない
物心着くまえ(実年齢に関係なく)にこういう本を読むと、ブラックな子供が出来上がります。そして一生、そういう物の見方をするくせが抜けません。恐らく油が乗り切った時期の筒井氏の「日常恐怖もの」の秀作だと思います。個人的には本書に収録されている「トラブル」に一票入れときます。

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