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季節の記憶 (中公文庫)の商品レビュー 長編大河散歩小説
この小説を長編大河散歩小説と呼んだのは保坂氏本人です。 だべりの空気感を書いた不思議な本
この本の最大の魅力は、どうでもいいことを延々と書いているところであろう。 圧倒的な表現力
淡々と日常を描く作品から、えも言われぬ魅力が溢れ出ている。作品の魅力に足をとられるように読む速度が遅くなり、文章を丁寧に味わおうとする自分に気づいた。何気ない日常を書いているようで、冒頭には唐突だった「ナッちゃんのネットワーク」と「蛯乃木の宗教」が、終盤には思わぬ形で結びつき、しっかりとした骨組みのある小説であることが示される。松井兄妹や友人や近所の人も綿密に計算されたように配置され、小説の厚みが増している。作者の時空に関するいわば宇宙観や死生観も披露されていてそれを読むのも楽しい。クイちゃんの可愛らしい仕草や話し方の描写は、まるで表現技術の品評会のようだ。主人公中野の描写も、普段我々が抱く感情や思考をなぞるようで、小説の主人公というより、リアリティを感じさせる人物として描かれている。ここまで書き込まれた小説には、めったに出会えない。 買いです。
登場人物のひとりひとりにとって、かけがえのない「時間」が流れていく様子を、その楽しさもやるせなさも、それと指摘することなくそのまま描いた作品です。読むこちらの「時間」の流れまで見つめ直させてくれます。 こういう小説があってもいいと思う。
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