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言葉一語一語にどれだけの深い意味、背景が宿っているのか、言葉が持っている「力」の所以を垣間見させてくれる。 言葉というこの底知れない怪物を一人の人間が改革しようと七転八倒する様は最高の「喜劇」であり、裏を返せばこの上ない「悲劇」である。 これは、巷に氾濫する娯楽本が到底真似できない、悲喜劇の本質を貫く傑作だと思う。
さすが井上ひさし。人が話すことばの由来を丁寧に教えてくれる。 最初から最後まで面白いやら、悲しいやら。 標準語なるモノをあえて作らなければならなかった明治のはじめの物語。 なぜ、こうなったのか。 各地は過去は権力者が国境をかまえて通せんぼしていたからだ。 みんなその地に生活し自分たちの生活に必要なことばをつくってきた。 当然、その地に根ざした生活言葉は独自なものとなる。 それに気づいた南郷清之輔。 「日本帝国の標準言語」をつくれと命令された主人公・南郷清之輔の不幸に共感する。 ハチャメチャおもしろい。 ハチャメチャおもしろい世界をまとめようとした真人間。 彼は、「二十年後の明治二十七年秋、東京本郷の東京瘋狂院で死亡」。 この物語は悲劇である。