美を追い求めてたどり着いたのは…
タイトルで「形の美とは何か」と問いかけている。この本にはかなり明確にその答えが書かれている。
かんたんに言えば、自然が作る形こそが、美しさの元であるということ。例えば生き物は自然淘汰の中で、もっとも効率よい形をつくってきた。また無生物の岩も、上流から下流へと流されていくうちに角が削られていき、丸みを帯びた形になっていく。こうした形はオーガニック形体といい、人工的にオーガニック形体を作ることも可能らしい(作り方が2つ書かれている)。 この本でとくに力を入れているのがフラクタル(自己相似性)について。雲や稲妻や海岸線などは、どれだけ拡大・縮小しても形が変わらない。秩序がないと思われていた形にも、じつは数理的に表すことができたという話だ(つまり非定形とは、ほんとは非定形ではないということ)。
人間は、フラクタルについてだんだんとわかってくると、人工的にフラクタル図形を作り出していった(コッホ曲線とか、シェルピンスキーのガスケットとか…)。フラクタルは今後ますます研究が進んで、デザインなどに取り入れられていくだろうから、基本を知っておくにはよい。
フラクタル次元の話で1箇所だけ、数式(対数log)が出てくる。それ以外はすべてふつうの日本語で書かれているので、難しいところはほとんどなし。具体例も豊富。キュビズムの代表作とされるピカソの「アビニヨンの娘たち」から、日本の家紋12種まで、特徴的な形がつぎつぎと出てきて飽きない。眺めているだけでも楽しい。
多角的な視点から「かたち」を捉え直す
様々な「かたち」を紹介、分類し、またそれらの歴史や、文化、経済、芸術、産業、テクノロジー、人間の感性などと「かたち」の関係について総括的に述べる。
「かたち」について書かれている本だけに、文字だけでなく実際に様々な図や写真が掲載されているのも分かりやすくて良かった。全て「かたち」に関わることしか書かれていないとは言え、博学な筆者によって非常に広い視野で「かたち」について考察されているので、これから「かたち」に関わることを学ぼうとしている方にも、これまで「かたち」に関わることをある程度専門的に学んでこられた方にも一読の価値はある本である。