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血と油―アメリカの石油獲得戦争

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血と油―アメリカの石油獲得戦争の商品レビュー

4.0 米国内版「血と油:原油の為に血を流せ」作戦
Nカロライナ州Greenboroの赤十字が2008年夏に「Blood For Oil」という献血キャンペーンを導入した。日本と同じように夏場は献血者が少なくなり、輸血用の血液が不足する。この年は原油高でガソリンが高騰していたので、献血者2人に一人$750相当のガソリン券が当たるくじ引きを用意し、血液不足を解消しようとした。これがアメリカ国内で展開される「血と油:原油の為に血を流せ」作戦である。石油の一滴は血の一滴。
4.0 ひるがえって日本は?
昨今の原油価格高騰の原因は、色々と見解はあるようですが、中国そして(意外と知られてませんが)米国を中心とする需要増に供給が追いつかないのでは、という見通しの悪さが大いに一因になっているような気がします。単純に考えれば、(少なくとも中長期的には)価格が上がれば供給能力も上がるのでは? と思ってしまいますが、ここが石油のややこしいところ。主な産油国はナショナリズムを背景に外資に油田を開放しておらず、資金も技術も不足している状況ではなかなか油田開発は進みません。少し前までは価格高騰の要因として「地政学リスク」がもてはやされました。石油は政治抜きでは語れない「戦略商品」であることの構図は価格高騰の折、またクローズアップされてきています。

本書はブッシュ(共和党)のエネルギー安全保障政策を批判したもの。米国のエネルギーに関して①輸入石油需要の増大②世界の危険地域にある不安定で非友好的な供給国へのシフト③産油国での反米暴力や内乱の危険の増大④供給をめぐる他国との競争の激化、について考察を加えています。著者の批判の論点は、石油を確保するために米国は積極的に軍事力を展開、その軍事力によって自国のエネルギー安全保障を確保しようとするが、その方法論がよけいに産油国の混乱を生みかえって石油供給を不安定なものにしている、というもの。

この論点はある程度の妥当性はあると思います(論拠となる数字も状況認識も正確)。ただ現政権はイラク戦争を見てもわかるように短期的に生じる混乱は経済的にも政治的にもいたし方のないコスト、と覚悟を決めているかのようにも見えます。何れにしろ、「血」を流してまで「油」を追い求める姿勢に、ほぼ100%を海外に頼る日本のエネルギー保全の見えにくい戦略ばかりが気になった一冊でした。

3.0 果たして日本は
読んでいて多少退屈に感じるのは同じ理屈を手を替え品を替え繰り返しているせいであろう。「イラク戦争に大義はない」と言われているが、「9.11」事件が米国民に与えた屈辱を考えれば、「テロのhotbed」であるイラクを叩くのは当然であるとも言えるし、その証拠の公開も、情報ソースを明かすことにつながることを考えればあり得ないと言える。「大量破壊兵器はなかった」とする論調も、かつてフセインがクルド人数千人に対して化学兵器を使用し、死に至らしめたのは事実である。石油も確かに大きな要因のひとつではあろうが、思うに「戦略を立て実行へ移す」ことを的確にやっているのはブッシュだけである。
5.0 石油危機は続く-流血は解決にあらず
そう遠くない将来、原油は掘り尽くされる。その生産量はもちろんそれ以前にピークを打ち、その後は減少の一途をたどる。それがいつになるかは世界経済にとっての大問題である。専門家の意見は分かれており、早いものは2010年といい、20年代、あるいは30年代とする見方もある。その後、生産が減少することに関しては異論はない。他方で、需要が上昇し需給が逼迫することについても意見は一致している。これまで需要の大半を占めていた先進工業国に加えて中国のような発展途上の大国が戦列に加わってくる。このままでは、周期的に起こる価格変動は増幅され世界経済はいっそう不安定化する。本書の主題は、安くて豊富な石油の供給を前提にしてこれまで成功を収めてきたアメリカ経済が直面している難題とその解決の方途の検討である。
かつてアメリカは世界最大の石油生産国であり石油の輸出国であった。それが一転して輸入大国となり、輸入依存率は1998年には50%を超えその後55%に達した。このようにして石油はアメリカの安全保障を左右する問題となった。チェイニー副大統領の監修にかかるNEPDG報告に依拠するブッシュ政権のエネルギー政策は需要面をなおざりにしたまま自国への供給量を確保しようという近視眼的なものである。最大の埋蔵量を誇る中東を始めとして、新たに注視を集めているカスピ海沿岸地域などの産油国は例外なく民主主義とはほど遠く政治的に不安定な国々である。アメリカがこれらの国々に軍事基地を建設して旧態依然たる政策を追い求めるのは軍事的リスクを増すだけにすぎない。本書を読みながら、輸入依存率100%の日本の政策は何かを絶えず考えさせられた。

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