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東京から考える―格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

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東京から考える―格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)の商品レビュー

5.0 現実社会へのコミットというスキームの可能性
 本書の感想は二点である。 

 第一点。
 僕自身が東京育ちであったことで本書を楽しく読めたが 東京育ちで無かったとしたらこの本をどのように読むことが可能だったのかという疑問がある。
 もちろん この本は基本的には「東京論」ではないので 東京に関する知識がなくても読めるべきだという考え方もあると思うが 一方「空中戦」を避けたいとする著者達の姿勢から考えると やはり東京に関する基本的な知識がないと ちょっと読みづらくなるのではないかと思う。


 第二点。
 本書では東と北田との相違点が ある種の「味噌」になっていると思うが 本当は「相似点」を読んでいく作業も必要なのではないかと直感的に感じる。
 これは批判でも非難でもないのだが 現在の日本の「若手社会学者」達のいくつかの著作を読むにつれて 「難解ながらも面白いな」と感じる点と「普遍性としての力強さを 今後どのように発揮出来るのだろうか」という疑問点と二つ感じることが多い。後者に関しては 他のレビュアーの方も仰っていたが 「どこまで現実の社会にコミットしていけるのか」という点に繋がっていくのだと思う。この点に関しては 僕の知る限り お二人の立ち位置は比較的似ているような気がする。
 僕自身読んでいて これらの言説が持つ力を感じるだけに その力を現実で発揮するスキームがあってほしいと思う。もちろん そのスキームが一番難しいことも確かだが。
4.0 人間工学をめぐる世代論
内容から読めば、核になっているのは、「動物化」の現実をそのまま認める東とそれを反省しなおす北田、ということになると思います。それは本書では「人間工学」といわれる現代社会が目指しているかのごとくである生活環境(快適、環境、安全の重視)への態度でもあります。郊外の「ジャスコ化」、「セキュリティ化」、「ディズニー化」を東は認め、北田は逡巡する。とはいえ、具体的な東京郊外の街並や出来事が俎上に上がっていて、二人のどの著作よりも読みやすい。そして、明らかに東の方が綿密で深く、ポストモダンをさらに進める議論をしていて、北田はかませ犬かと思うほどです(最後の章のすれ違い具合は圧巻です)。

状況から読めば、東がいうように「世代しか対立軸がない日本社会」を明確に意識した世代論です。同年生まれ、東京近郊育ち、東大と気持ち悪いぐらい近い二人。注などで取り上げられるのがほとんど上の世代であることからも、とても意識的なことがわかります。しかし、東のオタクぶりと北田の優等生ぶりは明らかで、優等生北田はいろんなところに目配りしすぎです。

基本的に同年代の私は東の議論に共感しますが、「人間的な多様性のある都市」は「ジャスコ化」「ディズニー化」「セキュリティ化」とは別のところで、たとえば趣味集団や職能集団のようなもので担保するという東の議論はあまりに偏っているような気もします。職能を持たない人はみんなジャスコへ行って満足なのでしょうか?だれもが一様に画一的に「動物化」する(している)のでしょうか?どうもこの「多様性」のオルタナティヴにはオタク空間が想定されているニオイがするのは私だけでしょうか?
4.0 日和見ではなく問題意識を
筆者が提示している概念に、少しでも思い当たるところがあるかどうかで印象がかなり異なる本だと思います。
「16号線的郊外(ジャスコ的)」と「広告郊外(青葉台的)」という景観分類や、
「ジャスコ的空間への均質化が経済格差を覆い隠している」という指摘は、
ちゃんと定義やデータ的裏づけをとって論じれば面白い視点でしょう。
ただ、それらの局所的な一例を挙げただけで「東京」を語ったことにするのは説得力に欠けます。

一番問題なのは、都市、景観への問題意識が曖昧であるという点。
傍観者で居続けるのではなく、東京の目指すべき未来像を提示して、
それに対するギャップとして過去と現在を分析する、という形で書けばもっと興味を惹いたのでは。
その辺りがいかにも社会学系発の都市論だなあ…と感じてしまいます。

最後のナショナリズムの章を除けばとっつきやすい面白い話がたくさん出てくる飽きない本なのですが、
ここで「提示するに留めた」話題を筆者のお二人は今後どう考えていくつもりなのか、
どの程度深く分析するつもりなのか、そもそも分析できるのか、非常に気になるところです。
3.0 そこそこの情報量があって面白いですが、、、
企画としては、成功しているとは思えません。・・・・・まず、そもそも郊外論は、欧米で蓄積されてきた郊外論を前提としつつ、経済、文化に射程を広げると、大きな広がりを見せ、魅力的な議論ができるはずですが、本書はそこまでに至っていません。・・・・・例えば、16号ロードサイドの話にしても、経済的な視座はなく、また青少年の文化への言及もありません。松原氏の本についてもしっかり読まずに言及されているように思えます。・・・・・・或いは、格差については殆ど語られていないし、ナショナリズムの項では、東京との関係は全く配慮されていません。・・・・・・・全体として、書斎の窓から見た東京についてのお話という印象でした。東京のそれぞれの町に暮らしている人の生活感が漂ってこないというか、、、、経済的なものへの視座が見えないというか、、、ジャスコ的といいつ、地方でのジャスコの意味と都会でのジャスコの意味との違いが配慮されていないというか、、、、、、支配する側にあるものとしての東京への批判意識が見られないというか、、。・・・・・・結局、お二人とも、何かコミットする人ではなく、上手に傍観する人ではないだろうか、と思いました。
5.0 GLOCOM ised議事録と併読すると面白いです
 16号線的=ジャスコ化=郊外化というキー概念に何度も言及されるが、定義を欠いており途中までとても気になって読みにくかった。通常「郊外」という言葉はそれ以上の定義は必要とされないと思うが、16号線的=ジャスコ化=郊外化という耳慣れない概念として語られているのと、執拗に抽象的な議論に触れるため、厳密には何であって何でないのかどうもつかみにくい。
 しかし、ちょうどこの対談と同時期に開催され2人も参加したGLOCOM ised(情報社会の倫理と設計についての学際的研究)http://www.glocom.jp/ised/ をたまたま併読したら、なんだかとても納得してしまった。腑に落ちる、という感じ。
 現在、実際どんな事態が進行しているかという、工学的な、アーキテクチャーに関する認識を示し、伴って考慮すべきでありそうな諸問題に触れつつも、では社会設計としてどういうものを考えていくのかという結論にはisedと同じくたどり着いていない。しかし、これはこれで私には読み応えのあるものだった。

 東氏の明快でプラグマティックな話に強い説得力を感じつつも、心情的・思考のクセ的には自分自身は北田氏に似たタイプであるように思った。一文が長くなりがち、括弧を多用するところも、なんか他人事と思えません。もちろん、学究的には私など彼の足元にも及ばないし、そもそもただの印象論だが。もしこの勝手な共感が案外外れでないなら、彼も一人では越えられない壁を自分の中に抱え込んではウンウンと考え続ける人かもなと思った。その意味では、「真面目によく考える人であるけれど孤独な人」かも(失礼なこと言ってますね)。
 あとがきでしきりに、対談を終えて自分はアレも考えなきゃいけない、コレも検討しなきゃいけないと列挙しているのを見て、「ああ、あんまり思いつめないで」となんだか母性的な感情を抱いてしまいました(笑)。なお私は男です。
 北田氏へのファンレターのようになってしまいました。失礼。

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