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英文法の論理 (NHKブックス (1088))

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英文法の論理 (NHKブックス (1088))の商品レビュー

3.0 情熱は伝わるが・・・
本書を評価するには、まずはどういうレベルの読者を対象として書かれた本であるのか、ということに注目する必要がある。本書の前書きに、高校生程度の英語力(もちろんこれも十人十色だろうが)が前提とされているということが述べられている。ここから判断して、これが上級レベルの人を主に対象としたものではないことは明らかである。事実、巻末に卒業試験的な問題としてPinkerの文章が提示されているが、難関大学の入試問題+αといった難度であり、単語的にも構文的にも平易で、行方昭夫氏の『英文の読み方』で扱われているような文章には遠く及ばない。著者がこのPinkerの文章について、「かなり骨がある」と警告していることからも、想定されている読者層は英語のビギナーであると考えてよいだろう。

そこで、ここでは初級者・中級者向けの本として本書を評価することとする。このような観点で見た場合、確かに1章の文法編で扱われているような文法的論理が、初・中級者が把握しておくべき事項であるということについては何の異論もないが、ここでの記述が一般に受験英語の名著といわれている文法書・参考書などの内容をはるかに上回るものとなっているかというと、これはかなり疑わしい。著者も認めるとおり、この種の新書・選書において英文法を体系的に記述することは紙幅が許さぬことであるし、かといって、特定の表現や構文だけに的を絞って解説したのでは、基本の徹底反復こそが大切なのだという筆者の意図は伝わらず、トリビア的なものに堕してしまう。学校文法こそが大切なのだ、という情熱は伝わってくるものの、それを新たに一冊の本にまとめる価値があったかと問われると、難しい。

2章の読解編の趣旨は、1章で培った基礎を応用する練習、ということなのであろうが、1章でガチガチの学校文法(伝統文法)を扱ったわりには、2章の文章がどれも文法構造的に平易過ぎる感じがする。これでは1章をしっかり読み込んで2章にいった人が、「何だ結局単語がわかるかどうかじゃないか」と思ってしまいそうである。John LockeやSamuel Johnsonの文章まで引っ張ってこい、とは言わないが、単語は一見簡単そうなのにいざ解釈するとなると本当に文法が理解できていないと分からない英文など、Bertrand Russellの文章などを探せばいくらでも出てきそうである(あるいは現代作家で言うならKazuo Ishiguroなどの小説を読めば簡単に見つかりそうだ)。勿論、あんまりそういう文章ばかりを扱うと「文学偏重だ」という批判を向けられるということはわかるが、一つくらい、文法を極限まで駆使した文を扱ってもよかったのではないか。

以上、全体的に見て、英語教育に対する情熱は十分に伝わってくるのだが、いまいち有意義なものを提示できているかどうか疑わしいという感じが払拭できなかった。上級者は行方氏の著作などを読んだほうがいいし、初・中級者なら受験英語の骨太の参考書などをコツコツ勉強したほうがいい。
5.0 正々堂々と真っ向から英語に挑み、征服する
 近年盛んに叫ばれる「コミュニケーション重視」の英語教育法なるものの多くは、確固たる信念や原理に欠けるもので、英語という言語の本質的ルールを省みない点で、多くの点で不十分である。
 これに危機感をもった著者は、一連の著作で様々な提言を行っているが、本書では具体的な英文素材をあげて、英語のという言語の論理について明らかにしている。質実剛健、骨太というべきもので、語彙の構造や文法用語、英語の構造を丹念に踏まえ、英文を読み解いていく。
 その素材も実に教養的なものばかりで、読み応えがある。この一冊を読み終えれば、真に応用力のある英語の原理を身につけ、真のコミュニケーション力への確実な一歩を歩みだしたことになる。
 多くの英語教育者にも読まれることを勧めたい。
 
4.0 高校2・3年生は当然、中学・高校教師に、是非、読んでいただきたい
高2レベルの文法事項(桐原『フォレスト』レベル)を、筆者オリジナルの設問(たとえば、Mary was angry with John,so…に続く重文構造の英作など)を用いて「論理的に」こう読むべし!といった熱さを秘めながらも、筆者独特のやわらかい語り口調で説明される第1編。続く第2編では、『菊と刀』やピンカーの論文を用いて、精読講義がはじまる。「だからこう読める!」「こういう読み方を実戦すべきだ!」と言わんばかりに、徹底して精読を教え込まれる。行方氏の『英文の読み方』(岩波)の上を行く。読み応えがあるし、高校生には、受験参考書の解説が実に皮相浅薄であり、間に合わせ的であるかが実感されるはずだ。
しかし、難点が無くはない。
切り口が、これまで筆者が発表した書物と同一次元であり、視野が広げられた内容ではない点。つまり、『英語達人塾』に究極されて以来、これといってメッセージ色がない。

とはいえ、小生は筆者のファンである。昨今の軽薄な英語教育を目にするにつけ、本書のような正論を(英文の正確な読解の実践)、これほど熱く語り、そしてその主張の軸がぶれない確かさは、新鮮でかつ謙虚な人格が伝わる。コミュニケーション重視の先生方よ、本書を一読されて、是非、生徒たちに「正しい」英語の勉強方法を教えてやってほしい。
本書はそういう意味で、これまで発表された図書の凝縮実戦版(いわば実況中継)といえる。

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