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冷たい方程式 (ハヤカワ文庫 SF 380 SFマガジン・ベスト 1)

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冷たい方程式 (ハヤカワ文庫 SF 380 SFマガジン・ベスト 1)の商品レビュー

5.0 結構、見落としている方がいるかも
 表題作がとても有名だが、一人の作家の作品集ではないので、まだ読んでいないという方が結構いるのではないか。それはとても惜しいので、ぜひご一読を。古典もいいところなので、最近のSFに慣れている若い方には古く感じられるかもしれないが、こういうところから始まったのだというのを知るのも悪くないと思う。
 「冷たい方程式」を読んだ後、飛行機に乗って着陸の順番待ちの旋回飛行とかされると、ちょっと怖い。特に燃料高騰の折なんかは。
4.0 冷たい方程式 だけでも十分な価値ありです。
収録作品は7つです。名作、力作揃いですので、買って読む価値は有ります。

(1)接触汚染(CONTAGION):キャサリン・マクレイン
   新惑星に移民船(宇宙船)が到着した。その惑星には、先住民が・・
   自分の肉体を失っても自分? 自分とは何? という問いかけが悩ましい名作です。
(2)大いなる祖先(CONTAGION):F.L.ウォーレス
   人類が銀河に各地に広がった遠い未来で、人類発祥の惑星を探す話
(3)過去へ来た男(THE MAN WHO CAME EARLY):ポール・アンダースン
   第2次大戦中の兵士がバイキング時代へたった一人でタイムスリップ
   タイムスリップした人間が直面する現実をリアルに描いた力作です。
(4)祈り(STAR LIGHT,STAR BRIGHT):アルフレッド・ベスター
   超能力を持つ子供の話。ミステリーのような推理小説のような展開で・・
   読み終わると、作者は何が言いたかったの?という疑問に直面!難解な作品です。 
(5)操作規則(OPERATING INSTRUCTIONS):ロバート・シェクリイ
   超能力を持つ人間に、超能力を発現させるための「操作規則」に則って超能力者を
   扱った結果・・・  人間を歯車として扱う現代社会に警鐘を鳴らす名作
(6)冷たい方程式(THE COLD EQUATIONS):トム・ゴドウィン
   人の命は地球より重いという幻想が通じない厳しい世界で、
   1人の命と、七人の命のでは、どちらが重いかを、計ってみると・・
   1954年の作品ですが、伝説の名作だけあって、今読んでも心がしびれます。
(7)信念(BELIEF):アイザック・アシモフ
   人が空中に浮遊しているのを目撃したら、空飛ぶ能力を身につけた
   人間が現れたと思いますか? 何かのトリックだと思いますか?
   アシモフ的な科学や未来、宇宙は登場しない地味な作品ですが、人間の
   本質を見事にあばいていて、面白い作品です。
4.0 SF的SFと・・・
 「冷たい方程式」という作品が一世を風靡した時代を私は知らない。しかし、そのタイトルはSFを読んでいれば(たぶん)どんな世代の人間でもいずれはたどり着くほど有名なわけで・・・。
 筒井康隆がこの作品をパロディ化して「たぬきの方程式」というものをかいている。私はそれを読むことで「冷たい方程式」の存在を知った。「たぬき…」のイメージが抜け切らないまま読んだから、いっそう方程式の冷たさが身にしみた。まさかこんなに悲しい話とは。
 しかし、「冷たい方程式」はSFらしさを追求した短編とは言いづらいかもしれない。この作品の訴えるところは徹底した理論とかストーリー構成の巧みさとかではなく、やはり人の感傷であると私は思う。無垢な少女が一つの方程式の前で冷たく裁かれる、その痛々しさがこの作品を際立たせているのではないだろうか。
 SFのおもしろみ、理屈と皮肉による余韻を楽しみたいのなら、他の収録作品のほうが適しているように思う。アシモフの「信念」、ウォーレスの「大いなる祖先」、シェクリイ「操作規則」がおもしろい。やっぱりアンソロジーはいろいろ楽しめてお得な感じがするのである。
5.0 これは買わねばならなかった
 他の人はどうか知らないが、私はアンソロジーが苦手である。色んな作家や作風が混じり、何だかゴチャゴチャに整理されていない本棚のような気がするのだ。だから、一人の作家の短編集とは違って、手が出にくい。
 だが、これは買わねばならなかった。なんと言っても、トム・ゴドウィンの「冷たい方程式」を読むには、これを買うしかないからだ。まさに名作。裏表紙のあらすじで、ほぼどんな物語かはわかる。結末にツイストはない。でもわかっているけど、とてもいい。しんみりする。誰も叫んだりわめいたりしない。ネビル・シュートの「渚にて」の静寂にも似て、エリスンの「世界の中心で愛を叫んだけもの」の優先順位にも似て、でもいずれとも違う静かな真実の美しさがある。
 ベスターの「祈り」は、最近国書刊行会から出た短編集に収録されているが、その他の作品はここでしか読めない。ロバート・シェクリイの「操作規則」は、最近の公立学校教育で子どもを甘やかしていることにスッポリあてはまって、ユーモアSFなのに皮肉な読後感だった。
4.0 人間を描くSFの好短編集

 7人のSF作家による短編アンソロジー。
 表題作「冷たい方程式」は、ある惑星で疫病に苦しむ6人に血清を届けるため発射された緊急宇宙艇内が舞台。艇は一人の乗員とわずかな積荷を届けるのがギリギリの燃料しか積まれていない。そこに密航者が紛れ込み、このままでは重量オーバーで宇宙航行が続けられない。パイロットの選択肢は一つ。密航者の船外遺棄だ。しかし密航者は兄に会いたいがために貨物室に隠れていた十代の少女だった。パイロットはこの娘を船外遺棄することなく、惑星に辿りつくことはできるのだろうか…。

 少女を遺棄しなければ、6人の仲間とパイロットと、そして少女も含めた8人全員が犠牲になります。少女1人を犠牲にすれば6人+パイロットの7人を救うことが出来る。つまり少女を遺棄しないという行為によって得られるものは何もありません。命の方程式の答は火を見るよりも明らか。最近耳なじみになった言葉でいえば、この少女は「コラテラル・ダメージ」(大きな利益の前のやむをえない多少の犠牲)といったところでしょう。

 しかし、このように人間を数値に置き換えることで答を出すことが理屈の上ではいくら可能であっても、そこにやりきれないほどの理不尽さや不条理を感じるのが人間です。そしてそうした心の葛藤を抱く力があるからこそ、人間というのは愛すべき存在であり続けるのです。

 この短編は、人間が足したり引いたりできるような「割り切れる」存在ではないことを、SFという特異な設定を借りて私たちに明確に差し出してみせます。

 また「過去へ来た男」では、20世紀から10世紀のアイスランドへスリップした米軍兵士の姿を通して、決して人間が1000年の間により優れた存在へと変わったわけではないことを描いてみせます。「タイムパトロール」シリーズのポール・アンダーソンならではの好編といえます。

 私は堪能しました。

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