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祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

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祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)の商品レビュー

1.0 理数系に見えて実は文科系
一見するとものすごいハードなSFに思えるのだが、読み進めていくと実は「私小説」であることに気づく。
そのため理数的な展開を期待しているとはぐらかされることになる。こっちは科学的なものを期待
しているのに、作者は倫理的なものにばかりこだわっており、読んでいてストレスがたまってしまった。

”SFではアイデアのみで小説を書くという方法論がある。これはSF読者には支持されるが一般読者には
評判が悪い。イーガンもアイデア派の作家だから嫌われる場合が多い” こういう論評が多いが、わたしは
違うと思う。イーガンがダメな本当の理由は表層と深層との食い違いにある。表層はガチガチのハードSF
なのに深層では論理ではなく倫理に寄りかかっている。このため論理的に読んでも倫理的に読んでも
違和感を感じてしまうのだ。

それにしても、物語が無さすぎる。作者は文章をたくさん書きたくて小説家をやっているのだろうが、
それに対してこのストーリー性の無さのギャップは何なのだろう。おそらく作者は自分の無能さに
気づいていないのだろう。ハードSFなのに論理を軽視し、しかもストーリー性が無いので読みにくくて
しょうがない。
5.0 人として人類としてのidentityを問う短編集
イーガンの共通した命題である、人として人類としてのidentityを問う短編傑作集です。科学的手法を用いた人類のあくなき挑戦に対する絶賛の賛同と同時に、人類としての限界を認知することに対しての人類への慈愛の念が、最近の長編の難解さ無しで、ストレートに伝わってくる名作集です。初めてイーガンを読まれる方にはお勧めです。
5.0 「わたし」の意味
ある日、普段どうりスタスタ歩いているとイーガンさんに出合った。
イーガンさんがいうことにゃ「ちょっと、自分の足元を見てごらん」。
で、下を見ると…あると思ってた地面はなく、真っ黒な虚空が広がるのみ。
それじゃ、どうして歩けていたかというと、
踏み出そうとする先に、ちょうど足がのるだけの大きさの円板がパッと現れ、
そこに足がのってもびくともしないけれど、足が離れると、すっと消える。
ただ、これの繰り返しだったのだ。
気づいてしまったこのときから、恐怖と不安に捕われる。
その円板は何なのか、どうやって現れるのか、これからも現れてくれるか…?
いままでずっと大地を踏みしめてると思ってたのに!

もちろん、”自分って?”について考えたり読んだりしたことはあるけれど、
この本の物語の中で様々な角度から直面させられると、やはり感じる重みが違います。
(特に「ぼくになることを」、ズンときます)
それに、イーガンさん、やっぱり物の語りがうまい!
「ぼくになることを」のどんでん返しは見事だし、
「無限の暗殺者」はおもしろいパズルを解いた気分にさせてくれるし、
「繭」は上質のミステリーだし、「貸金庫」のラストの、主人公の健気さは泣かせるし…。
それに、素人考えで、EPRは瞬間的な情報伝達に利用できるんじゃないかと思ってたんだけど、
「ミトコンドリア・イヴ」の主人公のセリフ数行であっさり霧消。うぅ、確かにそうです…。
これは、私にとってうれしいおまけでした。

ところで、私が読んだのは三刷なんだけど、425ページのこの文…
「…兄は、微笑みを絶やさずにはいられないのだった。」
あれ?

2.0 私にはついて行けませんでした
~量子論の理論や思想を拡張した作品が多いので分かりにくい、
という面はもちろんありますが、解説を読んで気付いた、
アイデンティティの問題が大きいようです。

ただでさえ不確定性という、ややこしい量子論がベースにあるのに、
一人称“視点”(必ずしも一人称“記述”ではないですが)なので、
読みにくさが増しているので、
合わないとなった人~~にはどの作品も徹底して合わないでしょう。~

2.0 確かに悪くはないが小説よりネタ帖に近い…
SFとしてのアイディアは凄い。各短編において、特異な世界像、それを当たり前と過ごしている社会を次々と描いていく力量は確かに感じられ、ツカミは最高である。

が、確かにネタは良いのだけど、どの話もいくら短編にしたって「物語」がなさ過ぎる。どの話も、起承が過ぎて、さあ山の転結!と思うと残り1ページで話が終わってしまい、読み手は中途半端な状態で放り出されてしまう。なまじSFとしてのネタが面白いだけに、これは大変苦しい。

この物語のなさは「主人公」の不在、という点にも表れている。個々の世界の「語り手」としての一人称存在はいるのだけど、物語の主軸(問題解決)には最後の最後で関われずに終わる場合がほとんど。文学的な締めと呼べば聞こえはいいのだろうが、また神や魂を扱っているにしては正直、話の底は浅い。

同じネタを古典作家(クラークとかアシモフとか)に書かせたら、一つのネタで短編の4-5つは書いたろうな、と思わざるを得なかった。繰り返すが、ネタは良いだけに大変悩ましい。だがネタでは小説にならないという良い証左でもある。

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